会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

熊谷組、追加損失も 16年3月期 横浜のマンション建て替えで(日経より)

熊谷組、追加損失も 16年3月期 横浜のマンション建て替えで

熊谷組が施工不良の傾きマンションの建て替えにより、追加損失の可能性があると発表したという記事。

「熊谷組は29日、施工不良が見つかった横浜市のマンションを全棟建て替えるのに伴い、2016年3月期に追加で損失が発生する可能性があると発表した。損失規模は明らかにしていない。連結純利益で129億円(前期比2.4倍)の見通しを大幅に変更することはないと説明している。」

「マンションは全5棟。これまでは施工不良が見つかった4棟のうち1棟を建て替え、3棟は補修工事で対応する方針だった。熊谷組はマンションの施工不良問題が発覚した14年6月以降、建て替えや補修、住民の仮住まい費用として計100億円弱の損失を計上している。」

当社施工物件の施工不良に係る是正方針について(熊谷組)

「本案件に係る損失見込額は、特別損失処理により「偶発損失引当金」を計上しておりますが、今般の方針変更による追加損失額につきましては、現在精査中であります。また、通期業績見通しにつきましても、当該損失を織り込み、同様に精査してまいりますが、現在の収益改善状況を勘案しますと、今期の最終損益予想が大幅に変更することはないものと考えております。」

2016年 3 月期 第 3 四半期における偶発損失引当金残高が 8,125 百万円であることについてもふれています。日経記事では、100億円弱の損失を計上済みとしていますが、すでに支出済みの分もあるのでしょう。

同社の四半期報告書を見ると、たしかに偶発損失引当金が計上されていますが、偶発債務の注記は書かれていません。引当てしていれば注記は不要というのは、間違っているとはいえないのですが、大きく金額がぶれる可能性があれば、注記もしておくのが親切だと思います。(シャープの例では、長期購入契約の引き当てと偶発債務の注記の両方を行っています。)

もっとも、第3四半期の段階で、全棟建て替えを前提に損失を見積もっていたのなら、大きく損失が増えることはないでしょうから、引き当てだけでもよいのかもしれません。

横浜の傾きマンション、全棟建て替え提案へ 住友不動産(朝日)

「住友不動産が2003年に販売し、1棟が傾いた横浜市西区のマンションで、同社が全棟の建て替えを提案する意向を住民に伝えたことがわかった。基礎部の強度を保つ鉄筋の一部が誤って切断されていた可能性があり、1棟だけを建て替える従来の方針を転換した。」

2003年販売ということは、工事の契約は2000年前後なのでしょう。ちょうど、準大手ゼネコンの一部が経営危機に陥っていた頃です。熊谷組も当時の住友銀行から債務免除を受けています。銀行の支援は受けていたものの、基本的にはバブル崩壊の後始末を本業の利益でまかなうということですから、工事の品質にもしわ寄せが来ていたのかもしれません。

大手ゼネコンは絶好調のようです。

ゼネコンが空前の好決算ラッシュに沸く理由(東洋経済)

「絶好調の背景には、建設需要の拡大がある。東北の震災復興需要に始まり、アベノミクスによる公共事業の復活、さらに首都圏を中心に大規模再開発が動き出し、併せて大きなインフラ整備もあった。」

「2016年3月期についていえば、労務費、資材高を折り込んで受注したが、見込みより労務費が落ち着いていたことに加え、鋼材価格下落や原油安がコストを押し下げた。さらに、省力化など施工効率化努力も加わり、利益上乗せにつながった。」

(補足)

横浜の傾きマンション、ほかに30カ所超で施工不良か(朝日)

「市やマンション住民によると、基礎部のコンクリートに配管を通す穴を開けることを想定し、穴の周囲に鉄筋を組む設計だったが、住宅棟5棟のうち4棟の三十数カ所で鉄筋がなかった疑いがある。販売元の住友不動産と施工した熊谷組が2月29日、横浜市に報告。」
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