3億円裏金事件とは直接関係はありませんが、関西電力には人事抗争に明け暮れていた時期があったという記事。30年ほど前の話です。
「“関電の二・二六事件”と呼ばれるクーデターが、取締役会で起きた。突然の解任動議が出されてクビになったのは関電のドンの芦原義重・代表取締役名誉会長と、懐刀の内藤千百里(ちもり)副社長だった。芦原は相談役名誉会長に棚上げになり、内藤は関電産業(現・関電不動産)の社長に飛ばされた。関電は「芦原-内藤体制」と言われ、会長や社長をしのぐ権力を握っていた。
クーデターを仕組んだのはドンの秘蔵っ子の小林庄一郎会長だ。権力を奪取するために強権を発動した。経営方針の食い違いといった上等なものではない。ドンの寵愛をめぐる子飼いたちの“三角関係”のもつれ、痴話喧嘩の果ての下剋上だった。」
会社の私物化もあったようです。
「クーデターで芦原と内藤が追放されると、堰を切ったように社内から芦原の「私物化」批判が噴出した。寡黙だった関電の幹部たちがマスコミによくしゃべるようになった。前出の「週刊朝日」は、関電幹部がこう内幕を明かしたと報じた。
<関電の孫会社に「関西レコードマネジメント」という文書類の記録やマイクロフィルム化する専門会社があります。ここの社長は阪根新氏といって、芦原氏の娘婿ですが、この会社が関電の事務の効率化やシステム化を一手に独占しているんです。
このほか「関西テック」(現・かんでんエンジニアリング)といって、発電所のメンテナンスをする関電の子会社がありますが、ここの柏岡啓二社長は芦原氏の次男です。いずれも内藤氏が芦原氏のご機嫌取りのために裏で動いた(人事)といわれています。また三男の芦原義倫氏は本社営業部長だし、情報通信本部の幹部にも芦原氏の親戚がいます>
芦原の娘婿である森井が本丸の社長に座っただけではない。芦原ファミリーが関電の中枢部や関連企業をがっちり押さえていたことになる。関電は芦原がオーナーの同族企業ではない。電力を近畿全域に供給するれっきとした公益企業だ。同族企業のワンマン経営者の公私混同は珍しくないが、公益企業をこれほど私物化した例は寡聞にして、筆者は知らない。」
30年前とはいえ、公益事業をやっている大企業としては、当時の水準からしても、ガバナンスがひどかったのでしょう。
こちらは今回の事件に関する郷原弁護士のコラム記事。
↓
関電経営トップ「居座り」と「関西検察OB」との深い関係(Yahoo)
「岩根社長は、今回の問題について、「不適切だが違法ではない」ということを強調した。確かに、森山栄治氏や吉田開発との関係も、法令や社内規則のどの規定に、どのように違反するかと言えば、今のところ、明確ではない。
しかし、原発を運営する事業者にとっての「社会的要請」との関係からは、全く容認できるものではなかった。
かつて、原発の安全神話が多くの人に信じられていた時代であれば、地元の有力者に金をばらまいて原発の建設や稼働への了解を得るというやり方も、「エネルギーの確保」という社会の要請に応えるという大義名分のために、事実上、容認されてきた。しかし、福島原発事故で「原発安全神話」が崩壊し、原発を運営する電力会社の「信頼性」が重要となる中で、原発立地地域に不透明な金をばらまくことも、社会が認めるものではなくなった。ましてや、その資金の一部が電力会社幹部に還流していたなどという今回の問題ほど、電力会社に対する信頼を崩壊させるものはない。「社会的要請に応える」というコンプライアンスの観点からは、最低・最悪の行為である。」
「原発立地地域に不透明な金をばらまくこと」は、東電原発事故以前から、社会的に批判されていたはずですが。
関電の社内調査も信頼できないもののようです。調査員会の委員長は冤罪事件で有名な村木事件に関わっていました。
「今回報告書が公表された調査委員会の委員長が、元大阪地検検事正の小林敬弁護士であることが明らかになった。記者会見での岩根社長の説明によると、小林氏は、かねてから関電のコンプライアンス委員会の委員を務めているとのことだ。」
「小林氏は、大阪地検検事正として、村木事件の証拠品のFDデータの改ざん問題について、当時の大坪特捜部長らから、「過失によるデータ改変」と報告されたが、何の措置もとらなかったことの責任を問われ、減給の懲戒処分を受けて辞任した人物だ。」
また、社内調査報告書をスルーした監査役会には、元検事総長もいたそうです。
「関西では、検察の大物OBと、経済界の関係が深いと言われている。その中心に位置するのが、「関西検察のドン」と称される元検事総長土肥孝治氏だ。土肥氏は、長年にわたって関西電力の社外監査役を務め、今年6月の株主総会で退任した、その土肥氏の後任として新たに社外監査役に就任したのが、元大阪高検検事長の佐々木茂夫弁護士。今年で75歳、後期高齢者が新任社外監査役というのは、極めて異例である。
10月5日付け朝日新聞によれば、調査委員会報告書の内容は、昨年10月の時点で、監査役会に報告されていたとのことだが、その監査役には土肥元検事総長も含まれていた。また、今年の春頃から始まった「金品受領問題」の内部告発の動きは、5月頃には、表面化の危険性が高まっていた。その対応が関電経営陣にとって重大な問題であったことと、敢えて超高齢の関西検察大物OBを監査役に選任したことは無関係とは思えない。」
火のないところに煙を立てたり、火に油を注いだりするような監査役や調査委員では困りますが、大きな問題なのに矮小化するというのはもっとまずいでしょう。
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