会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ゴーン前会長 報酬19年で314億円 所得税分・家族渡航費も加算(東京新聞より)

ゴーン前会長 報酬19年で314億円 所得税分・家族渡航費も加算

日産ゴーン事件関連記事。

役員報酬虚偽記載の「手口」みたいなものにふれているのですが...

「高額報酬が明らかになるのを避けたかったゴーン被告は、ともに金融商品取引法違反罪で起訴された前代表取締役グレゴリー・ケリー被告(62)らに金融庁への働きかけを指示し、(役員報酬個別開示)制度導入の阻止に動いたという。

阻止がかなわないとみるや、ゴーン被告はただちに、ケリー被告や当時の秘書室長に対し、一部の報酬を不記載とする検討を指示。一〇年三月期は、十四億三千九百万円だった報酬を八億九千万円と記載することでしのぎ、未払いとなった報酬をどう受け取るかの検討を毎年のように重ねた

日産の統括会社が支払う方法や、アラブ首長国連邦の孫会社を通じた支払い計画などが俎上(そじょう)に上ったものの、いずれも問題が生じる恐れがあるとして断念。近年は、退任後の顧問料名目での支払いや退職慰労金の増額などが検討されていた

東京地検特捜部は、これら不記載分の報酬が一一年~一八年三月期の八年間で、計約九十一億円分に上るとしてゴーン、ケリー両被告を起訴している。これに対し、両被告はこれまでの調べに「支払いは確定しておらず、記載義務はなかった」と否認。公判でも無罪を主張するとみられる。」

これを読むと、開示制度導入時に減額された報酬を、ゴーン氏があとで取締役会の承認なしにこっそり受け取るスキームは、まだできていなかったということになります(「断念」したり「検討」中だったりしているわけですから、そうでしょう)。また、退任後の顧問料や退職慰労金名目で支払う計画だったとして、会社を拘束するようなそういう取り決めを、取締役会の承認なしでできるとも思えません(総会で承認済みの通常報酬の支払い枠では支払えないのでは)。もしそういう取り決めをしていたとしても、会社は支払を拒否できるはずです。

そういった状態で、会社にゴーン氏に対する債務があると判断して、報酬の未払いを計上できるものなのでしょうか。虚偽記載問題に関しては、ゴーン氏らの言い分の方が正しいように思われます。

(補足)

「ゴーン被告 報酬隠す対策」検察側主張へ…総額19年で314億(読売)

「制度が導入されることになると、ゴーン被告は同月下旬、約14億3900万円だった10年3月期の報酬を報告書には8億9000万円と過少記載するよう元秘書室長(60)に指示。過少記載が発覚しないよう既に受け取っていた報酬の一部の7億円を日産にいったん返金するなどしたという。

ケリー被告や元秘書室長は、その後もゴーン被告の指示に基づき、実際の報酬額を隠しながら未払い分を支払う方策を検討。▽オランダにあるルノーとの統括会社やアラブ首長国連邦に設立された関連会社を通じて支払う▽役員退任後に就く相談役などの報酬名目で支払う▽退職慰労金を増額したり、新株予約権を利用したりする――といった案が検討されたとしている。

ゴーン、ケリー両被告は特捜部の調べに対し、報告書に記載のない報酬について「支払いが確定していたわけではなく、記載義務はなかった」などと主張し、起訴事実を否認している。」

実際に返金したのなら、返金後の金額が報酬額でよいのでは。ただし、いったん会社から資金が出ているのであれば、関連当事者取引(一時的な貸付)として開示すべきだったのかもしれません。

また、この記事でも、未払い分を支払う方法(ゴーン氏が受け取る方法)は、「検討された」にすぎないようですから、法律的に、日産に支払義務があったとは思えません。
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