会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

週刊ダイヤモンド 特集「ゼネコン落城」より

週刊ダイヤモンドの6月5日号でゼネコンの特集をやっており、その目次で「損失先送りのカラクリ」が書いてあるというので、読んでみましたが、カラクリというほどのものではありませんでした。

「海外で損失の懸念が高まっても、そのすべてが一気には、表面化しないことも珍しくない。海外プロジェクトでは、しばしば”特殊”な会計処理が行われるからだ。大手ゼネコンの海外経理担当者への取材を基にカラクリを説明する。」

「当初100億円の受注額だった工事が、工期延長などで原価150億円に跳ね上がったケースで見てみよう。ゼネコンの損失は、本来50億円になる。ところが、ここでゼネコンは、発注者に対し追加代金30億円の支払いを要求するレターを出せば、決算の際この30億円は将来もらえる未収金として認識され、赤字は20億円で済む。」

「じつは、こうしたレターには、発注者が支払いを了解していないものもあるという。だが、外国の顧客が相手では、日本の監査法人は真実を確認しようがない。「ひどいときには、20年以上かかって、利益が出たときに損失計上して消す」(大手ゼネコン関係者)という処理が行われているという。「資金回収の可能性がゼロではないという理由で、この処理自体は粉飾決算には該当しない」(同)とのことだが、焦げ付く可能性が大きい「空手形」を抱え込んでいることは確かだ。」(同誌30~31ページより)

これはたぶん最終的な請負金の見積りの問題なのでしょう。見積りである以上、発注者がまだ承認していない交渉中の金額が入っていてもおかしくはありません。ただし、「資金回収の可能性がゼロではない」から認められるということはありません。あくまで、この金額になるだろうという最善の見積りを行う必要があります。何も考えないで「クレーム請求金額=追加請負金の見積額」としていれば、それは粉飾決算です。

海外工事の確認については、週刊誌にここまで書かれたら、監査人はやらないわけにはいかないでしょう。

IHIのケースをみても、見積りなのだから間違っていてもかまわないという考え方はすでに通用しなくなっています。(ダイヤモンドの記事によれば、日本のゼネコンの海外工事は「大型案件を求め場当たり的な受注を繰り返し」「ノウハウも蓄積されなければ、組織も人材も育たない」という状況だそうですから、請負金や原価の正確な見積りは期待できないのかもしれませんが)
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