金融庁の証券取引等監視委員会は、「開示検査事例集」の最新版を、2019年10月23日に公表しました。
「今般公表しました今年度版の「開示検査事例集」は、昨年度版に最近の開示検査事例を追加し、課徴金納付命令勧告を行った事例だけでなく、勧告は行わないものの、開示規制違反の背景・原因を追究した上でその再発防止策を会社と共有した事例、会社に対して訂正報告書等の自発的な提出を促した事例等、さまざまな事例を積極的にご紹介するとともに、市場関係者への皆様へのメッセージでも掲載しております。また、今年度版より監視委コラムを増設し、最近の検査事例を通じてクローズアップされた不正会計の実態等について解説しております。」
最新の検査事例として13件取り上げています(課徴金納付命令勧告10件、その他3件)。過去の事例36件、審判事例5件も掲載されています。
最新事例のうち3件は循環取引の事例でした。
「監視委コラム」より。
「架空取引(資金循環取引)の気付き
事例1~3は、検査対象上場会社又はその子会社(以下「各社」といいます。)が業績拡大を図るため、取引先等からの紹介により、仕入先からの商品を販売先に販売するという新しい商流に加わったものの、実態は取引先の会社代表者によって企てられた架空取引(資金循環取引)であったために、不正会計を行っていたというものです。
各社は、これらの取引が架空取引であることを認知していませんでした。しかしながら、これらの取引を開始するに当たり仕入先と販売先が決められていたこと、さらに、各社の一部経営陣等の中には、仕入先と販売先の会社代表者が同一人物である、又は取引先の会社代表者と緊密な関係にあることを把握していたことからすれば、これらの取引は、取引先の資金繰りに寄与するだけであり、取引に参加する合理性が不明瞭な取引であったと考えられます。
また、これらの取引は商品が仕入先から販売先に直送されるという帳合取引ということで、各社は、商品の実在性に関してサンプルの確認を行った程度で、個々の取引の商品の物流に関する証票類を入手していたものの、それらに含まれていた偽造を示唆する情報に気付くこと無く取引を続けていました。
会計監査人の監査手続も、取引先からの証票類や売掛金の入金に着目した対応に止まっていました。取引量の拡大等に伴って、会計監査人が売上計上をグロスからネットに変更するよう指摘した事例もありましたが、商品の実在性の確認は疎かになっていました。」
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