会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

金融庁、みすずの処分見送り・日興不正会計で方針

NIKKEI NET(日経ネット):経済ニュース 〓金融庁、みすずの処分見送り・日興不正会計で方針

金融庁が、日興コーディアルグループの監査をめぐり、担当したみすず(旧中央青山)監査法人の行政処分を見送る方針を固めたという記事。

この事件は、監査以前に結局どういう会計処理(具体的には連結範囲)が正しかったのか、という肝心の点がはっきりしていません。不正があったとされた決算では、SPCを連結から外したことが問題とされ、金融庁の会社に対する処分では、SPCを連結した場合との利益の差異が粉飾だとされたわけですが、SPCが出資し支配していた事業会社(ベルシステム)を連結に含めなくてもいいという根拠はまったく示されませんでした。出資先まで連結していれば、出資先の利益とのれん償却のバランスにもよりますが、利益が変わっていたはずです。また、ベルシステムは日興が取得してからその後2年以上たつのに、まだ保有したままですから、一時的保有という理屈も成り立ちません。

このように、問題とされた期においては、SPCも連結しない、SPCだけ連結する、SPCが出資している事業会社まで連結する、という3つの会計処理が考えられ、私見ではこのケースでは事業会社まで連結すべき(したがって金融庁の見解も間違い)であったと思いますが、当時の会計基準の解釈がはっきりしておらず、それだけでは不正と決めつけるだけの材料がなかったというのが実情でしょう。そこで、デリバティブ取引の契約日のバックデートという不正(これはたしかに悪質です)にひっかけて、摘発にこぎつけたのだと思います。

監査人は、バックデート不正を知らずに、純粋に会計処理の解釈上、会社の処理を認めたわけですから、解釈の当否は別として、処分を受けなければならないような不正行為や正当な注意義務違反はなかったと考えるのが当然です。
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