関西国際空港会社の社長が、約1兆1000億円もの有利子負債の主な要因となっている空港の土地を、関空会社の会計から分離して有利子負債を圧縮する必要があると述べたという記事。
「海上を埋め立てた関空は、造成で発生した有利子負債の返済や利払いが、現在の関空会社の経営の自由度を奪っており、着陸料の大幅な値下げに踏み切れない原因となっている。村山社長は方法として、政府や民間の資金が入った第三セクター的な特定目的会社(SPC)を設立し、土地を移管する案が有力との考えを示した。」
関西国際空港会社は、会社の形態としては株式会社です。このようなスキームが、株式会社の会計処理として、どのようなものになるのか、少し考えてみます。
当然、空港会社からSPCに土地を売却するときには、時価で売却ということになります。この場合の時価はどのように決まるかというと、土地の保有者(SPC)は空港会社が支払ってくれる地代しかあてにできないわけですから、時価は、空港会社が将来支払う地代と割引率(利率)で決まることになります。
着陸料を下げるためにはSPCに支払う地代を低くしなければなりません。しかし、そうすると、自動的にSPCへの売却価額(時価)も下がることになり、売却損が増える(または売却益が減る)ことになります。逆に売却損を減らそう(売却益を増やそう)とすると、高い地代を支払わざるを得ず、着陸料を下げることはできません。
この会社のBSをみると、空港事業固定資産が1兆4691億円、純資産が6046億円です。仮に簿価の50%の売却損が発生すると、債務超過になってしまいます。空港会社に出資している企業は、株式の評価損を計上することになります。
簡単には解決できそうにない問題のように思えます。ただ、社長のコメントでは「土地を移管」といっており、通常の売却ではないのかもしれません。裏技的な会計処理を考えているのでしょうか。
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