マドフ氏の巨額詐欺事件で、会計事務所の責任が問われているという記事。
まずマドフ氏のファンド自体を監査していたのはFriehling & Horowitzというごく零細な会計事務所です。
The district attorney for Rockland County, N.Y., Thomas P. Zugibe, has also begun inquiries into Friehling & Horowitz, the three-person accounting firm that provided services to Mr. Madoff’s firm. Many have asked how a company as small as Friehling — a three-employee firm based in New City, N.Y., that occupies a 13-foot-by-18-foot storefront space in an office plaza — could have handled an operation as large as Bernard L. Madoff Investment Securities. Friehling & Horowitz is also the subject of a preliminary ethics investigation by the American Institute of Certified Public Accountants started after the scandal broke.
この事務所に対しては、Rockland郡の地方検事が捜査を開始しています。米国の会計士協会も職業倫理に関する調査の対象としているそうです。そもそも所長と職員で3人しかおらず、20平米強のワンルーム並みのスペースでやっている事務所が、どうしてマドフ氏の会社のような巨大な組織を扱うことができたのか疑問視されています。
この事務所が処分を受けても大問題にはなりませんが、より大きな問題は、マドフ氏のファンドに投資していた別のファンドや機関投資家を監査していた監査人の責任です。
One investor in a feeder fund, New York Law School, has already sued BDO Seidman, the auditor of one of its money managers, arguing that the firm failed to notice warning signs related to the $50 billion scandal.
すでにBDO Seidmanという事務所が、マドフ氏のファンドに投資していた別のファンドの投資家であるNew York Law Schoolから訴えられています。
過去の会計不正では、会計事務所が数億ドル単位の賠償金を支払っている例があります(この記事では、Ernst & YoungがCendantと同社の株主に合計6億3500万ドルの賠償金を支払ったケースと、Pricewaterhouse がTycoの会計不正に関連して2億2500万ドルの和解金を支払ったケースを挙げています)。
今回の巨額詐欺事件では、詐欺の舞台となったファンド自体には大手会計事務所は関与していません。しかしそのファンドに再投資していた別のファンドの監査は、大手の会計事務所が行っており責任を問われる可能性があります。
In its lawsuit, New York Law School said that BDO Seidman had “utterly failed” in its auditing of Ascot Partners. The lawsuit says that BDO Seidman failed to flag Ascot’s reliance on a single money manager, Mr. Madoff, as well as Mr. Madoff’s reliance on Friehling & Horowitz.
BDO Seidmanが訴えられている裁判で原告側は、BDO Seidmanは、マドフ氏のファンドに再投資していたAscot Partnersの監査に失敗したと主張しています。Ascot Partnersが資金運用者であるマドフ氏に依拠し、マドフ氏はFriehling & Horowitzに依拠していたことについて、警告すべきであったといっています。
BDO Seidman has said that it never audited Mr. Madoff’s firm, just Mr. Merkin’s, and that its audits of Ascot Partners “conformed to all professional standards.”
一方、BDO Seidman側は、あらゆる職業専門家としての基準に準拠して監査を行ったと主張しています。
PricewaterhouseCoopers was the main auditor for Sentry, the largest fund run by Fairfield Greenwich Group, the $14.1 billion investment manager that has lost the most money so far in the Madoff scandal. The accounting firm was tasked with minding Sentry, which had about $7.5 billion invested in Mr. Madoff’s firm.
今回の詐欺事件で損失を被ったFairfield Greenwich Groupの最大のファンドSentryを監査しているのはPricewaterhouseCoopersです。Sentryは、75億ドルをマドフ氏のファンドに投資していました。
いまのところ訴訟は起きていないようですが、もしPricewaterhouseCoopersが訴えられるとしたら、相当大きな額の賠償金が請求されることになりそうです。ファンドの監査において、再投資先の報告書や証明書をどこまで信用してよいのか、追加的な手続が必要なのかといった監査実務上の問題点も浮かび上がってくることでしょう。
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