会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会(第1回)(金融庁)

会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会(第1回)

11月2日に開催された「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」の第1回の議事録が公開されています。

この回は、ほぼフリーディスカッション状態で、各委員が自由に自分の意見を述べているようです。

いつもこういう場所でおもしろい(受けを狙った?)コメントを言う八田教授は、座長として司会者をつとめており、委員としての発言はありません。

以下、気になった箇所の抜粋です。

まず、金融庁側の責任者のあいさつの部分から。

「会計監査の内容に関する情報提供、あるいは、その説明の充実につきまして、2016年の3月に会計監査のあり方に関する懇談会の提言をいただいております。これを踏まえまして、監査法人のガバナンス・コードの制定、監査報告書の透明化などの取り組みを進めてまいったところでございます。残された課題といたしまして、通常と異なる監査意見が表明された場合などに、監査人に対してより詳細な資本市場への情報提供が求められるケースがあるのではないか、こうした場合における対応のあり方について問題提起がされているところでございます。」

やはり守秘義務の問題で、意見が多かったようです。

町田メンバー

「例えば意見不表明であったり、あるいは限定付適正意見であったりしたときに、監査人が監査のことを語るのに躊躇することがないような、つまり守秘義務に抵触することがないとする枠組み、それが法的な枠組みなのか、それとも自主規制の枠組みなのか、あるいは何か別途の手立てなのかわかりませんけれども、そういうものを用意してあげれば、恐らくそういう枠組みがあれば、監査人の大きな武器になるではないかと思います。先ほど申し上げたような株主総会の質問を受けたときにも堂々と、自ら壇上に立って自分たちの立場を表明できるようになるのではないか、と。そういう観点から、本懇談会では、是非、守秘義務の問題について検討していただきたいと強くお願いしたいと思います。」

岡田メンバー

「先ほどの守秘義務の話ですが、KAMの規定で、公共の利益と、企業または社会にもたらされる不利益をてんびんにかけるという非常に抽象的な規定になっているので、何か実例(ルール)をつくってくれという議論になりそうですが、これからは原則主義の考え方で、監査人・監査役・会社が各自、自分の頭で考えた上で議論していくという対応が必要なのではないでしょうか。そういう意味では、監査人も守秘義務に逃げることなく、積極的に開示の姿勢を主張していくべきではないかと考えました。」

田中メンバー

「監査人は会社との間で委任契約を結んでいますが、監査人の情報提供の受益者は株主、さらに債権者その他の会社と利害関係のある人々が受益者になっているという関係があります。このような関係があるからこそ、会社法その他の法令は、監査人の権利義務を基本的に強行法規として規定しているわけでありまして、監査人が発行会社の間で契約をしても、会計監査人の情報収集及び利害関係人に対する情報提供に関する様々な権限を制約することはできないわけであります。その点で、一般の委任者と受任者との間の守秘義務の内容については、委任者と受任者の間の契約によっていかようにもへんこうできるという、通常の委任契約とは根本的に異なるという点は重要かと思います。」

清原メンバー

「守秘義務の規定のところで言うと、資料にあった協会の倫理規定と監査契約のところは実は若干ずれがあるのではないかとちょっと思っております。監査契約、約款のほうは、正当な理由に次の場合を含むこと、としていて、必ずしも以下のものだけが正当な理由というように限定した趣旨では書かれていないんですよね。法律家として考えたときに、正当な理由がある場合を除き秘密を開示できないというときの、正当な理由というのは一般条項ですから、限定的とはならないというのは、法律家のイロハのイの字ではないかと思うので、今までなぜそう限定しなければいけなかったかというと、やはり監査人と会社との関係で、監査人の方が忖度し過ぎてきてしまったのではないかということを含めて、もう一度見直しをしていかなければいけない、そういう岐路に、今、立っているというところから、議論を進めていただければと感じる次第でございます。」

青メンバー

「守秘義務の関係につきましては、現状では特定の事項以外は全て守秘だという雰囲気でわりと受けとめられていると思いますけれども、本来、秘密にすべき範囲というのはそんなに大きくないのではないかと思います。特に、監査人が監査の判断に関する事項について説明するに当たって、本当に守らなければいけない秘密に該当するような事項がそもそもあるのかどうかという点もあると思います。ですから、正当な理由を考えるときにも、どこまでが監査人が投資者に対して情報提供するに当たって必要かということだけではなくて、わりと広い範囲で説明をしたとしても、監査人の判断に関する説明であれば、相応に正当な理由に該当する可能性が非常に高いというところを明確にしていくことが適切ではないかと考える次第です。」

会計士協会や企業の委員は、消極的なようです。

高濱メンバー(会計士協会)

「守秘義務のお話が先ほどから論点として出ているわけですけれども、現状の会計士協会の倫理規則の限定列挙という理解による監査実務というのは、実務としてはある程度共通の理解として、安定して運用されているという理解をしております。

我々、基本的に監査人の意見表明というのは、やはり監査報告書の記載が全てという理解をさせていただいております。今回の議論の出発点であります説明責任を果たすという点におきましても、事例に引いていただいていますように違う意見を出している場合については、少なくとも通常の意見とは違う根拠等が記載されておりますので、どのようなステークホルダーにとって、どのレベルでわかるべきなのかというゴールも、ぜひ明確に議論をしていただけたらありがたいと思っております。」

湯浅メンバー

「監査人として市場に対していろいろな意見を発する場があるかと思いますけれども、やはり主戦場としては監査報告書に記述する内容をどう充実するか。無限定適正意見以外の意見が出されたときには企業側も適時開示をするわけですから、それに対する、すり合わせと言ってはおかしいかもしれませんけれども、やはり意思疎通を踏まえた上での市場への情報発信が行われる。そういうところが枠組みとしてありますから、情報として足りないところについてどのように補っていくかということが議論の大きなウエートを占めるべきではないかと思います。

それ以外の場面については、もう極限状態ですので、守秘義務の話も基本的にないという議論もあるとは思いますが、説明責任、情報発信の責任については当然あるはずですので、こうした場面にまで制度的な枠組みを検討することは、ハードルが高いという気がしています。」

監査人交代時の開示も論点となっていますが、これに関しては、開示強化の意見が多かったようです。

町田メンバー

「現在、監査人の交代に関する臨時報告書での開示が機能していない以上、監査人の交代の情報提供が重要であると考えるのであれば、真の実態を表す情報がディスクローズされるように、何らかの強制的な開示の仕組みが必要だと思います。それを公認会計士協会の自主規制でやるのか、やらないのであれば公的規制でやるということになるのではないかと思いますので、この点をぜひご検討いただきたいということです。」

湯浅メンバー

「先ほどの発言で、監査人の交代について申し上げていなかったのですけれども、交代の理由を適切に書くべきところが書かれていない。最も多い理由が監査報酬ということなのに、書かれていない。もしかしたらお金のことを理由にするのはどうもはしたないといいますか、古きよき日本人的な発想で、定型的な任期満了ということで丸くおさめているような慣行があるのだとすれば、もうそういう時代ではありませんと周知徹底して、ちゃんと書きましょうと。そういうことを明確にすれば、ある程度の見直しの効果というのは出てくるのではないか。そういう、できることからやっていくことが必要なのではないかと思います。」

青メンバー

「それから、監査人の交代の関係でございますけれども、先ほどからご指摘がありますとおり任期満了という記載が多いというところは、私どもも実際に開示の現場に携わっておりながら、常々、感じているところでございまして、何らかの形での改善というのはやはり重要だと思っております。ただ、そこでは、理由そのものというよりも一番大事なのは、引き継ぎの際に何が隠れているのか、特に監査の信頼性にかかわるところにおいて何が隠れているのかというところが関心事項としてございます。例えば、見解の相違があるとか、そういったことが隠れていないかどうかというところが、むしろ信頼性という意味での中心的な関心事項と考えております。」

監査意見に問題があったときの開示について。

町田メンバー

「先ほどから、他の委員の皆さんからも監査報告書が主戦場だという話があります。そうであれば、四半期レビューの報告書であれ、年次監査の報告書であれ、何かこういった問題事項があったときに、監査証明府令では特記事項なんていうものがありますのでそれでもいいですし、あるいは、その監査報告書の添付書類や、付録でも構わないですけれども、そういったところを利用して監査人が会計監査についての情報を提供する、そういう枠組みがあってもいいのではないかと、私は思っています。

その一つの参考になるかと思いますのは、例えば今般、監査報告書の拡充の議論のときに、アメリカでも同様の議論があったわけですが、その際に、PCAOBが最初に提案した案です。それは、上場企業が、定性的な情報として、経営者の討議と分析(MD&A)を開示していますが、それを模して、監査人による討議と分析、AD&Aというものを記載させよう、というものです。最終的には、KAMに類似したCAMの記載ということに落ち着いたわけですが、本懇談会で議論しているような、特定の異常事態のときには、例えば、監査報告書の特記事項のところでも、監査報告書の付録においてでもいいのですが、そういう場を使って、監査人自身に、そうした事態に関する討議と分析を十分に書いていただくことを想定できないか、ということです。」

次回は12月4日です。

「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」(第2回)の開催について(金融庁)

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