近年の財政状況という項目を中心に、感想も含めて要点をまとめてみました。
・平成26年度末における国の「資産合計」は679.8兆円、「負債合計」は1,171.8兆円であり、492.0兆円の債務超過。
・資産の内訳は、有価証券(為替介入で取得した外貨証券、日本郵政株など)、貸付金、運用寄託金(GPIFに運用預託している年金積立金)、出資金など、金融資産の占める割合が多い。有形固定資産は179.6兆円。運用寄託金は103.7兆円だが時価ベースでは137.7兆円。
・負債の内訳は、公債が884.9兆円、公的年金預り金113.7兆円(運用寄託金に対応する負債だそうですが、これが負債に計上される理屈はよく分かりません)、政府短期証券99.2兆円(これも公債の一種でしょう)など。
・負債には年金給付債務は計上されていない(基本的に公的年金は賦課方式であるため)。(既に保険料を支払った過去期間分にかかる給付現価は1,200兆円弱だそうです。これを負債に上乗せすると、さらにたいへんなことになります。)
・企業の「損益計算書+包括利益計算書」に相当する資産・負債差額増減計算書(平成26年度)では、財源115.4兆円に対し、業務費用(減価償却費や支払利息も含まれます)138.3兆円で、赤字(超過費用)は22.9兆円。
・しかし、為替換算差額14.2兆円(円安の影響)や資産評価差額5.9兆円(どんなものなのでしょう)などがあるため、債務超過額は1.6兆円の増加ですんでいる。円高になれば為替換算差額はマイナスでしょうから、長い期間でみれば、あてにはできないのでしょう(超インフレ→超円安、となれば、外貨建て金融資産のメリットは大きいのでしょうが)。
・財源には租税等収入だけでなく社会保険料44.8兆円も含まれている(社会保険料も税金の一種ということでしょう)。
・費用の内訳では、社会保障給付費(補助金等に含まれる部分を含めて)が半分以上を占める。
・「連結財務書類」も作成されている(残念ながら今回の解説では連結版の全体像についてはふれていません)。
・連結対象は独立行政法人など。
・日本銀行は連結対象外。国からの独立性が高く、政府出資額が僅少であるためだそうです。しかし、常識的に考えれば、日本銀行も政府機関のひとつであり、連結すべきでしょう。独立性が高いから外すというのであれば、裁判所だって外さないといけないでしょう。
・日本銀行を連結した場合、日本銀行は今国債をどんどん買っているので、BSの姿はだいぶ変わってきます(解説によれば、日銀の国債残高は平成26年度末で269.8兆円、平成27年度末で349.2兆円)。日銀が国債を買うと、国の連結にとっては、購入時に債務償還損益(たぶん損が出るのでしょう)が計上されるとともに、国債が、日銀の当座預金、日銀券など、利子がかからない負債に置き換わることになるのでしょう。国にとっては、いくら負債が膨らんでも、利子もかからず、返済義務もない(当座預金もいざとなれば日銀券で返せばよい)わけですから、当面、非常に有利ですが、経済全体にとってはどうなのでしょうか。
・ただし、日銀の国債保有量は増えているものの、連結対象であるゆうちょ、かんぽなどの保有量は減ってきているのだそうです。
・地方財政は、特例国債(赤字国債)に該当する公債発行が認められておらず、また、地方債の償還年限も国より厳しい制限があるため、純資産はプラスになる構造にある(国ほどはひどくない?)。(ただし、解説によれば、純資産がプラスだからといって、健全性を示しているとはいえないそうです。)
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