日本公認会計士協会は、監査基準委員会報告書900「監査人の交代」を改正する公開草案を、2013年1月29日に公表しました。
今回の改正は昨年5月以降の企業会計審議会における議論を踏まえたものとされています。
プレスリリースによると、改正点は以下のとおりです。
・前任監査人と監査人予定者及び監査人との間で引き継ぐ「重要な事項」を新起草方針に基づく監査基準委員会報告書において監査役等にコミュニケーションを行うことが求められている項目に関連付けて整理
・前任監査人が調書の閲覧に供する範囲を明確化
・前任監査人と監査人予定者による引継の相互確認に関する要求事項を新設
・付録1を改正(監査人予定者の指定に関する通知書の文例、引継で行われる作業の概要や前任監査人に発生する報酬負担等を加筆)
・付録2を改正(監査人予定者が監査契約締結前に取り交わす守秘義務に関する文例、監査契約書の約款の表現に合わせて修正)に必要
・前任監査人の調書の閲覧に際して前任監査人が監査人予定者から入手する守秘義務に関する承諾書を付録3として新設
このうち、相互確認については、議事録の作成・確認まで求めています。
「議事録には、監査業務の引継の際に行われた監査人予定者及び監査人による質問、それに対する前任監査人の回答、並びに監査人予定者及び監査人への閲覧に供した監査調書の範囲等が記載される。」(A12)
後任監査人の監査に役立てるというより、両方の監査人のアリバイづくりのためのように思われます。オリンパス事件のときは、責任の押し付け合いがあったのでしょうか。両監査人のやり取りが形式的なものとなり、逆効果のような気もします。
付録1の改正では「□□監査法人との引継に関して〇〇監査法人に発生する報酬は、弊社が負担することについて了解しております」という文言を会社に書かせることにしています。いやがらせのため法外な報酬を請求するようなことがないよう、前任監査人の良識に期待したいところです。
オリンパス事件ではたまたま監査人の交代に焦点が当たりましたが、EUで監査人の強制的ローテーションが議論されているように、世界の潮流は、監査人の交代を促進する方向のようです。交代手続だけを厳格化すれば、こうした動きに反することにもなるでしょう。
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