第一カッター興業のプレスリリース。
連結子会社(2009年に子会社化した会社)で発覚した不正資金流用疑惑について調べていた第三者委員会より、調査結果報告書を受領したとのことです。
不正の内容は...
「当社連結子会社の㈱光明工事において、一部の役職員が内部書類の偽造等による旅費の過剰計上により、「旅費交通費」の名目で資金を引き出し、この資金を接待等に費消しておりました。」
「第三者委員会の調査の結果、㈱光明工事における上記(1)の不正な資金流用に加え、㈱光明工事と㈱バランスコントロール(本社:愛媛県松山市)との間において、物品の発注や外注工事の発注が行われており、その一部に利益相反取引に該当する取引や不適切な取引が含まれていたことが発覚いたしました。」
(第一カッター興業のグループは「切断・穿孔工事事業、ビルメンテナンス事業及びリユース・リサイクル事業等を展開」しており、その中で光明工事は、「専門性の高い施工を行う水中工事の国内有数の専門業者」とのことです。)
財務上の影響は...
旅費過剰計上について
「この度の不正な資金流用は、会計処理としては「接待交際費」等の科目で処理するべきところを「旅費交通費」で処理しているものとなりますので、連結損益計算書上の販売費及び一般管理費の内訳の違いが生じていたこととなります。これに伴う税金の影響額につきましては現在算定しているところではありますが、今回の各年度の資金流出の推定額から(「調査結果報告書(開示版)」32 頁ご参照)、税金修正額が各事業年度の連結財務諸表に与える影響は軽微であるものと推測されます。」
後者のバランスコントロール社との取引についても、各年度の最終的な利益に大きな影響を及ぼすものではないとのことです。
したがって、「この度の調査結果報告書に基づく過年度の有価証券報告書及び決算短信等の訂正は必要ないものと認識しております」とのことです。
遅れている2021 年6月期有価証券報告書は、延長後の提出期限である 2021 年 10 月29 日までに提出するそうです。
過大計上された旅費等は、裏金(現金)として保管し、そこから、ちょっと表に出せないような経費に使っていたようです。
その金額の推計は...
(調査報告書より)
累計額で見るとけっこう大きな金額です。
幹部を経由して、この裏金が使われていましたが、その使途は、「得意先の接待、従業員との飲食代」、「甲社、乙社、丙社等への接待に、特に甲社には、甲社の求めに応じ、相撲のタニマチ費用、演歌歌手の出演料等にも使用していた。また、自らの出張費の清算や従業員との飲食代等として使用していた」とのことです。
本来であれば、裏金として流出した金額は、仮払いですから、そのうち、会社のために使われたものについては精算する(正しい費目で原価・費用計上)、残額は返済させる(返済されるべき額は未収入金に計上する)という処理を、各年度でしなければなりませんが...
「裏金を私的に費消・使用したとは認定できなかった」、「本調査の結果を受けて、会計上、未収債権等の貸借対照表上の資産として計上することは適当ではなく、資産計上されない以上は、損益計算書上の費用として計上することが妥当である」ということで、「本委員会としては、本件裏金に関して、第一カッターの連結財務諸表を修正すべきとの指摘は行わない」という結論になっています。
土建業界の悪弊についてもふれています。
「土木建設業界では、1つの工事現場に下請け、孫請けと複数の下請け業者が入り、多重請負の状況になることが珍しくなく、仕事の依頼を元請業者に依存せざるを得ない構造であることから、元請業者の担当者が下請業者から接待を受けたり、リベートを受領したりするなど、元請業者側に対して種々の便宜を図る風習がかねてより存在している。このような土木建設業界の旧弊は、今日でも根強く残っており、同種行為によって起訴された事例も見受けられる。また、自らの下請先を安定的に確保するために協力会社に対し便宜を図ることや、社内においても、飲食等の提供も求められやすい業界であり、一部では過度なものも見受けられる。」
今回の裏金問題も、こういう背景があるのだといっています。たしかに、日大背任事件などをみてもそういう傾向はあるのでしょう。しかし、他の会社は、仮に同様の支出があるとしても、裏金などにはせず、有税処理や役員報酬となることを最初から覚悟して、支出の都度、それなりに適切な処理をしているのでは...。
ところで、調査を行った第三者委員会は、元広島高等検察庁検事長である弁護士ら5名から構成され、TMI総合法律事務所 21 名、監査法人アヴァンティア 21 名、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 9 名の計 51 名(元検事を含む) が、補助者として参加しています。
裏金金額以上の調査費用がかかっている可能性もおおいにありそうです。
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