大証ヘラクレス上場のゼンテック・テクノロジー・ジャパンが、2008年3月期の決算を訂正すると発表したという記事。
6億4500万円の最終黒字が、訂正後は34億6800万円の赤字となるそうです。
「薄型テレビのベンチャー企業から事業を譲り受けた実態が失われたにもかかわらず12億2300万円ののれん代を計上。また、実態のない取引で6億600万円の売上高と売掛金を計上するなどした。」
不適切な会計処理に関する調査委員会の最終報告について(記事の中でふれている2月17日の調査報告書)(PDFファイル)
問題となっているのれんを計上した取引については次のように述べています。
「本件事業承継は、会社法上の事業譲受け又はA社株式の取得等ではなく、当社がA社の商標権、動産及び債権を取得すること、並びに当社の当該子会社とA社との間で平成20年2月1日締結した業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)に基づき当該子会社がA社から人員を受け入れること等によりノウハウを吸収することにより行われた。すなわち、当社は、平成20年1月31日、当社のA社に対する25億2000万円の売掛金債権、2億6800万円の求償債権及び2億1000万円の貸金債権の弁済の代わりに、A社の有する商標権、動産及び債権を当社が譲り受けた(以下「本件商標権等取得」という。)。」
会社の買収や合併ではなく、単に人員を引き継ぐというスキームだったようです。そもそもそういうスキームでのれんが計上できるものなのか、非常に疑問です(ただし、実質的に営業を引き継いでおり、かつ引き継いだ事業にのれんに見合う価値があれば認められるのかもしれません)。また、引継時に有していた債権の額に無理やりあわせてのれんを計上した疑いもあります。
決定的なのは、決算日後(決算確定前)に、のれん計上の根拠となっている業務委託契約自体が解消されていることです。
「当社は、本件商標権等取得により、A社の有する動産を譲り受けたが、A社の 製品は不良率が高く、A社の製品を当該子会社が販売継続しても経費の増加により当該子会社の利益を圧迫するおそれがあった。また、A社の顧客の当該子会社への承継が当初の想定通りに進まなかった。そこで、当該子会社の本件業務委託契約の解消を決定し、平成20年4月25日の当社取締役会に報告がなされた。」
これを知りながらのれんを計上したとしたら、さすがにどんな理屈でも粉飾と言わざるを得ません。
その他の不正経理についても、その背景が書かれています。
「A氏、C氏、D氏、E氏及びB氏は、平成20年4月16日ころに行われた打合せの中で、複数の議題のうちの一つとして、平成20年3月期決算の数値についてB氏が報告を行った。この打合せにおいて、出席者は、平成20年3月期連結決算の売上高及び利益等の業績見通し数値が思わしくなく、事業計画との乖離が連結売上高で約17億円あることを明確に認識し、出席者の一人からこの乖離をどうすべきかとの問題提起がなされた。また、他の出席者は、銀行との関係で赤字は困るという趣旨の発言をした。これらの発言を受けたこの打合せでの遣り取りの中で、実績見通しと当初事業計画のギャップをどうにかしなければならないと出席者は黙示に認識を共有した。そして、出席者は、赤字を回避するためには、平成20年3月期の売上高及び利益等の数値を改善する必要があると考え、その結果として不適切な会計処理が行われることとなった。」
ちなみに、この会社の監査人は、監査法人ウィングパートナーズです。
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