会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

知人に送金「業務報酬」 ゴーン元会長、公判前整理(日経より)

知人に送金「業務報酬」 ゴーン元会長、公判前整理
無罪を主張、検察側との対立鮮明


日産自動車元会長ゴーン氏の弁護団が、公判で主張する具体的な内容を明らかにしたという記事。記事の後ろの方では、いっしょに起訴されたケリー氏の主張にもふれています。

「弁護側は金商法違反事件について「(日産社内で)未払い報酬があると認識していた人はいなかった」と指摘。社内の帳簿や契約書にも記録がないことから「未払い報酬は存在しない」と反論した。検察側は未払い報酬が記録された文書があると主張しているが、弁護側は文書はゴーン元会長が日産を退任後に再び契約を結ぶ際の「参考資料」だったとした。

特別背任事件を巡っては、日産子会社から中東の知人へ送金された資金の趣旨が焦点の一つとなっている。検察側はサウジアラビアの実業家への送金(サウジルート)は私的な協力に対する元会長からの謝礼、オマーンの販売代理店に支出した資金(オマーンルート)は一部を元会長側に還流させたとしている。

これに対して弁護側はサウジルートについて、実業家が日産と現地の販売代理店との関係改善などに貢献した「業務の報酬」と主張。オマーンルートの支出は「適切な販売奨励金だった」と正当性を強調し「代理店からゴーン氏や家族に直接的にも間接的にも金銭が移転した事実はない」と還流も否定した。」

「ゴーン元会長と共謀したとして金融商品取引法違反罪で起訴された日産自動車元代表取締役グレッグ・ケリー被告(63)の弁護団も24日、公判で主張する内容を明らかにした。「(報酬は)ゴーン氏が退職後に日産に提供する業務への対価として予定され、役員報酬ではない」などと無罪を主張した。」

役員報酬虚偽記載問題については、記載がもれていたとされる報酬について、そもそも会社に支払い義務があるのかが疑問です。ゴーン氏が会社内の実力者だったとしても、退職後にこれだけほしいとひそかに紙に書いただけで、会社はそれを支払わなければならないのでしょうか。常識的に考えれば、役員報酬の支払い、あるいは役員との利益相反取引ですから、取締役会や場合によっては株主総会の承認がないと、法的な義務はないと思われるのですが、法律専門家の意見も聴きたいところです。

法的義務とは関係なしに、支払いの可能性(蓋然性)が高ければ、費用計上すべきという考え方もあるのかもしれませんが、そうだとすると、ゴーン氏が追放されて、役員報酬や退任後の顧問報酬の支払い可能性がほとんどなくなった後も、ゴーン氏への債務を計上し続けているのは理屈に合いません。ゴーン氏が取締役会を支配していた期は、報酬追加支払いの可能性が高いため、引き当てを行い、ゴーン氏が追放されて、支払い可能性がなくなった期は、引き当てを取り崩すことになるはずです。

また、仮に支払い義務があるのだとしても、あるいは、法的義務とは関係なく引当てすべきと考えたとしても、ケリー氏弁護団がいうように、退任後の業務の対価だとすれば、在任中に費用計上するのはおかしいでしょう。

中東ルートに関しては、あやしい支払いなのかもしれませんが、あやしいというだけでは有罪にできないでしょう。東京オリンピックわいろ疑惑と違って、支払い先は、ペーパーカンパニーではない、それなりの事業をやっている会社のようですから、日産から奨励金などを支払ってもおかしい話ではないでしょう。ゴーン氏のファミリーに還流したとの報道でも、投資や融資としてですから、ゴーン氏側が利益を得たとまでいえるのかどうかはよくわかりません。この点は、関西電力3億円裏金事件で、裏金を受け取った役員に課税された(つまり役員側に利益が生じたと税務当局が認定した)のとは、対照的です。もちろん、役員やその親族が会社の取引先とそのような密接なビジネス上の関係をもっていいのかという、ガバナンス上の問題はあるのでしょうが、刑事問題とは別のはずです。

弁護団は、容疑の中身だけでなく、捜査自体の違法性を主張しています。

ゴーン被告、公訴棄却求める 「検察と経産省、日産が違法に共謀」(AFP)

「提出された公判前整理手続きの書面2通には、検察当局が日産と共謀し、ゴーン被告の追い落としを画策する日産社員らに捜査を事実上「下請け」していたとの主張が記されている。」

「ゴーン被告の弁護団は、「提出した書面では検察側の捜査について、政治的な動機に基づいたもので当初から汚染されていたこと、根本的に欠陥があり、証拠能力のある記録と矛盾していることを論証している」と発表した。」

「提出された書面は、日産社内で「ゴーン氏を解任する口実として不正行為の疑惑を作り出す」ための「秘密の作業部会」が結成されていたと主張。「起訴は、検察と経済産業省の職員、日産幹部が違法に共謀した結果だ」「その目的は、日本の産業界を代表する企業の自主性を脅かす日産とルノー(Renault)の統合促進を阻止するため、ゴーン氏を追い落とすことだった」と弁護団は述べている。」

「日産社員が忍び込み…」ゴーン氏弁護団、無罪主張へ(朝日)(記事冒頭のみ)

「違法捜査の具体例として、「海外では検察が手を出せないため、日産の社員が色々なところに忍び込み、勝手に物を持ち出した」などと主張した。」

ゴーン被告の弁護団、公訴棄却を要求 司法取引は「違法」(BBC)

「弁護団の弘中惇一郎弁護士は24日、裁判所に提出した書面を公表。「事件は検察と日産に仕組まれたもので、日産をフランスに渡すまいとする国策捜査だ」と述べた。

さらに「司法取引」について、 「フランス・ルノーとの統合を阻止するために、日産役員らがゴーン氏を失脚させる目的でなされたものだ」、「本来の制度趣旨に反していて違法だ」と主張した。」

ゴーン前会長側、全面対決へ 「違法な司法取引」公訴棄却求める(東京)

「書面で「違法」だと強調したのは捜査の端緒だ。ルノーとの統合阻止をもくろんだ日産の日本人役員らが、東京地検特捜部に相談し、ゴーン被告の「不正」を探ったとした。

特捜部が外国人執行役員と日本人の元秘書室長と合意した司法取引は、二人の意思ではなく「日本人役員らの意向によるものだった」と批判。「ゴーン氏を失脚させる目的でなされた司法取引で、法の趣旨に反して違法」と指摘した。

書面は海外にあった関係者のパソコンや携帯電話が日産側に持ち出され、検察側に渡ったとされることも問題視。公訴棄却を求める根拠に「違法な捜索や差し押さえ」も挙げた。」
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