金融庁は、三洋電機株式会社が作成した財務書類について、証券取引法に基づき、旧中央青山監査法人の業務執行社員として監査証明を行った公認会計士に対し、2008年7月11日付で、懲戒処分を行いました。処分内容は、業務停止2年が2名、9ヶ月と6ヶ月がそれぞれ1名です。
金融庁の説明によれば、業務停止2年の2名とそれ以外の2名とで、過失の態様には差はないが、平成15年に業務停止の期間の見直しを含む公認会計士法の改正が行われた関係で業務停止期間に差がついたとのことです。
金融庁のプレスリリースでは、三洋電機における関係会社株式の会計処理(引用は省略しますので興味のある方はプレスリリースをご覧下さい)が不適切であったと説明したうえで、会計士の判断が誤っていたといっています。
「・・・三洋電機の会計処理では、取得原価に比して実質価額が著しく下落し、かつ十分な証拠により取得原価にまで回復が見込まれない子会社等株式について、時価又は実質価額までの減額が行われていなかった。
当該公認会計士2名は、三洋電機の子会社等株式の減損の方法については承知していたが、当該会計処理が金融商品会計基準の範囲内の会計処理であると誤認し、平成17年3月期に至るまで三洋電機が上記のルールに基づき会計処理を行うことを認めていた。」
たしかに三洋電機が行った減損処理は(伝えられている限りでは)おかしい面はありますが、会計基準自体が、著しい下落があっても回復する見込みがあると認められる場合は処理しなくてもいいことになっていたり、処理するときの処理額も「相当の減額」(市場価格がない場合)でよかったりといったどうにでも解釈できそうな文言になっていることも問題の背景にあります。そうした解釈のブレがあるような基準を放置しているのが間違いの元です。時価が回復するかどうかを十分な証拠により確かめることなど不可能ですから、そういう要件は削除する、実質価額とは何か、相当な減額とは何かを、指針に逃げないできちんと基準に書き込むなどする必要があるでしょう。
「××公認会計士は平成13年3月期から平成15年3月期について、××公認会計士は平成16年3月期及び平成17年3月期について、主として三洋電機の連結決算の監査担当として関与していた。
三洋電機の子会社等株式に関する会計処理の方法は審査資料等に明瞭に記載されており、当該公認会計士2名もその内容は確認していたが、(1)の公認会計士等の判断に従い、三洋電機の会計処理を認めていた。」
連結上、関係会社株式評価損はまるまる戻し入れて取得原価に戻したうえで、投資・資本の相殺消去をするので、単体の評価減の処理は連結には無関係です。「主として」の意味がよくわかりませんが、連結しかサインしていないのであれば、責任は問えないのではないでしょうか。逆に「会計処理の方法は審査資料等に明瞭に記載されて」いたのであれば、審査資料等をチェックしていた審査担当者の責任はどうなのでしょうか。
2年という過失に関する業務停止期間の最長期間が適用されたということも考える必要があります。不正の影響額だけで機械的に停止期間を適用したのではないか(監査上の判断の難しさなどそれ以外の要素を考慮する能力が金融庁にはない?)という疑念をもたざるを得ません。
監査人は、判断が難しいところで仮に監査上の判断ミスがあっても、軽い処分ですむのではないかと甘い期待はしない方がよさそうです。
三洋電機の不正決算、会計士4人に業務停止処分 金融庁
「処分を受けた会計士側は金融庁の聴聞に「会計原則の判断は誤っていないと思っていた」などと反論していた。今回の処分に不満がある場合、裁判に訴えて取り消しを求めることができる。」
金融庁の説明では「金融商品会計基準の範囲内の会計処理であると誤認」したと決めつけていますが、会計士側がそれに納得していないのであれば、ぜひ裁判にでも訴えて、本当にそうなのかを明らかにしてほしいとおもいます。
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