会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

名ばかり監査役に一石 横領見落とし責任、審理差し戻し(日経より)

名ばかり監査役に一石 横領見落とし責任、審理差し戻し(記事冒頭のみ)

従業員の横領を発見できなかった監査役に対する会社からの損害賠償請求の裁判を取り上げた記事。会計士協会機関誌に長く連載していた弥永教授もコメントしています。

どのような横領事件だったのか...

「訴訟の舞台は千葉県にある非上場の印刷会社。高裁判決などによると、経理担当の元従業員が2007年から16年まで、会社の当座預金口座から自身の口座へ送金を繰り返し、計2億3500万円超を横領した。

会社側は、横領した元経理担当の従業員と、監査で不正を見落とした元会計限定監査役の両方に損害賠償を求めて提訴。その後、元経理担当は死亡し、元監査役に対する裁判だけが継続する形になった。

この元監査役は1967年から約45年間務めた大ベテランだった。」

監査役は、横領が始まった期は、カラーコピーで偽造された残高証明書を原本と信じ、その後は、白黒コピーでチェックしていたそうです。

裁判の経緯。

「一審の地裁判決は、元監査役の任務懈怠(けたい)を認めて約5700万円の賠償を命じたが、控訴審判決は判断を一転。「特段の事情がないときには、会社作成の会計帳簿に不適正な記載があることを(中略)積極的に調査発見すべき義務を負うものではない」などとし、責任はないとした。

最高裁は7月、この高裁判決を破棄した。「計算書類等に示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認すれば、常にその任務を尽くしたといえるものではない」などと指摘し、審理を差し戻した。」

弥永教授と弁護士のコメント。

「弥永教授は最高裁の判決を「妥当だ」とした上で「射程が非常に広く、実務的にも重要な判断」とする。日本の株式会社には監査役を置く形式が多く、その大半で今回の司法判断が当てはまりそうだとみる。

石畑智哉弁護士は判決について「監査役に会計帳簿の基礎資料や裏付け資料の調査を常に求めるものではない」と指摘。「どんな場合にどの程度の監査が求められるのかまでは明示されなかった。差し戻し審の判断が注目される」とする。」

当サイトの関連記事(この裁判について。判決文もちらっと見ています。)

会社法上、会計士資格が要求されていない以上、会計士監査と同レベルの監査までは求められていないという補足意見もあったようです。それでは、どこまでやればよいのかという話になりますが、会計士監査の場合でも、保証の水準は、正式の監査とレビューの2種類しかなく、しかも、それは常に動いているわけで、監査役監査の場合の保証水準はどうやって決めるのかというのは、理屈が難しいように思われます。

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