ITproというサイトのIFRS適用延期をどう考えるかを関係者・識者に問うシリーズの第2回で、アビーム コンサルティングの人が書いています。企業の対応に関する結論部分を中心に紹介します。
「今後のIFRS対応の進め方は次の3通りに分かれてくると考える。
(1)すでにプロジェクトに本格着手している企業
プロジェクトを継続し、予定通りのスケジュールでIFRS早期適用を行う(ただし、後述する制度上の問題点があることに注意)。
(2)プロジェクトに着手したが、仕切り直しても要員などの問題はない企業
影響分析、対応方針の検討まで進めておき、システムの共通化や決算期が異なる子会社の決算早期化などの課題がなければ、ペースダウンもしくは休止する。解決に時間がかかる課題がある場合は、その解決に集中したプロジェクトを継続する。
(3)実質的にプロジェクトに未着手の企業
(2)の企業と同様、影響分析、対応方針の検討まで進めておき、時間のかかる解決課題がなければペースダウンもしくは休止する。課題がある場合はその解決に着手する。
以前よりも時間的な余裕が出てきたことは確かなので、外部依存を緩めてもプロジェクトを効率的に進められるのであれば、要員育成を兼ねて社内メンバーだけでの実施を検討すべきだろう。ただし、「延期されたのだから、もう何もしない。IFRS対応は次の世代に任せる」といった決定を下すと、自社グループの状態や決算処理や情報システムを把握しているキーパーソンがいなくなってしまうなど、新たな問題が発生する可能性がある。」
たぶんこのとおりなのでしょう。コンサルティング会社や監査法人にとっては、(1)を選択する会社が多ければ助かるということになりますが、クライアントとの長期的関係を考えれば、無理強いしない方がよさそうです。
記事では、(1)のIFRS早期適用を選択した場合の制度上の制約について指摘しています。
「現在は制度上、IFRSで決算開示できる企業はかなり限定されている。IFRSで会計処理する能力を有する上場企業であることはもちろんだが、外国や海外市場のルールに従ってすでにIFRSでの開示を行なっている、もしくは、外国に資本金20億円以上の子会社を有している企業である必要がある*5。したがって、海外投資家の持ち株比率が高い大手企業であっても、国内だけが事業基盤の企業である場合はIFRSで開示できない。
この条件を撤廃し、企業の意思でIFRSを早期適用できるようにする必要がある。そうしないと、すでにIFRS適用の準備を急ピッチで進めている国内基盤の企業では無駄なコストが発生してしまう。」
もっともな提案だと思います。
このコラム記事の前半では、日本にとっての選択肢は、最終的には、アドプションとコンバージェンスしかないとし、それぞれについて議論しています。
しかし、6月30日の金融担当大臣の挨拶を読むと、アドプションはもちろんのこと、ASBJで進めている退職給付会計、開発費、のれんなどのコンバージェンスのための作業も遅らせたいと考えているようです。アドプションでもコンバージェンスでもない独自路線を選択する可能性もありそうです。
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