会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東電社員は見た…「賠償金詐欺」恐ろしき「恫喝の現場」(現代ビジネスより)

東電社員は見た…「賠償金詐欺」恐ろしき「恫喝の現場」

東京電力原発事故の賠償金をめぐる詐欺を取り上げた記事。

東京電力の社員として「賠償係」を勤めていた人物(記事中では仮名で登場)の話を元にしています。

「東電の賠償係とは、2011年3月に起きた東京電力福島第一原発事故で移住を強いられた個人や風評被害を受けた法人に東電が補償をするための部署だ。岩崎は主に法人を担当していた。」

「東電によれば、2019年7月12日までで、賠償の請求は延べ290万件を超え、約9兆622億円という膨大なカネが被害者に支払われている。注目すべきは、そこに、詐欺師によって搾取されたカネも含まれていることだ。震災後には、法人や個人事業主が混乱につけ込み、原発事故と関係ないのに「自分は被災をした」と風評被害を受けたと偽って補償金をだまし取る「賠償詐欺」が横行していた。」

監査法人系の会社が活躍していたそうです。

「原子力損害賠償についてのスキルを持ち合わせていない東電上層部に代わり、業務を指南する役目を仰せつかっていたのが、デロイトトーマツコンサルティング(以下、デロイト)の面々だ。賠償業務は、この民間のコンサルタント会社にほとんど丸投げする形で進められた。」

「賠償審査はそうして、半ばなし崩し的に緩くなっていった。歯車が狂い始めたこの状況を岩崎は、こう指摘する。

「風評被害があったか否かを判断するため、決算書など資料の足りない部分をどこまで他の資料で補うかが問題になっていましたが、請求書が滞留するなか、デロイトの判断もあってその審査条件がどんどん緩くなった。作業を流すべく、被災状況についてのエビデンスを『拡大解釈』で処理していくようになったのです。

原賠機構に『賠償しなければカネを貸さない』と言われている東電にとって、デロイトは大切な指南役です。原賠機構が東電の命綱であるとともに、賠償業務が素人同然の東電にとってはデロイトが生命線。それは私たち末端の賠償係でも手に取るように分かりました。東電もデロイトも、口には出さないまでも審査は『ザルでいい』との意向だったのです。

要は、いかにして支払いの滞留を解消するか。なのでデロイトも、審査を簡易化できるフローを作ったりだとか、会計士を増やしたりだとか、様々な策を講じていました。『17時までに5通、審査を通してくれ』とノルマを課すことなどもありました。なので、エビデンスは足りないけど、請求者に『電話で足りない書類の確認したからOK』という具合に、なあなあで審査を進めるしかありませんでした」

とにかくノルマをクリアするため、審査を通すことありきでものごとが進んでいったのだ。」

「正当な賠償があった一方で、黒い賠償もあった」ということで、おそらく大部分は正当な賠償金支払いだったのでしょうから、賠償金支払いを急いでいたという当時の状況下で、コンサル会社などを責めるわけにはいかないのでしょう。

それより、賠償金をめぐる東電の巨額粉飾スキームの方が大問題です。

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