会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「疑惑のカネ」を告発した職員を懲戒解雇 東京女子医大内部監査室は「まるで秘密警察」(文春オンラインより)

「疑惑のカネ」を告発した職員を懲戒解雇 東京女子医大内部監査室は「まるで秘密警察」東京女子医大の闇 #3

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東京女子医科大学病院で、医師・看護師らの大量退職が続き、会計不祥事も起きているという記事。

週刊文春ですでに報じられている内容を、取材を追加して再構成したものとのことです。

3つある会計不祥事は、記事の#2と#3に書かれています。

1つめは、現理事長が会長を務める至誠会という組織(ネットで調べると一般社団法人のようです)からの出向受入契約の問題です。

「2014年、岩本氏は東京女子医科大学の副理事長になった際、直轄の「経営統括部」を新設した。これによって、カネ・ヒト・モノ・情報の全てを岩本氏が掌握する体制を作ったのである。

翌年からその経営統括部に、自身が会長を務める至誠会(同窓会)が運営する至誠会第二病院から職員を出向させた年間最大6人で、19年までの5年間の人件費総額は、実に約2.5億円にのぼる。」

「問題なのは、彼らの給与額である。「至誠会出向者給与戻し入れ 出金票」によると、最も高給な職員には月額150万円が支払われていた(金額は税込、以下同)。一般事務職でありながら、教授クラスの2倍近い破格の待遇である。

この職員は、岩本氏の右腕として長年仕えている人物だという。他の職員も120万円、90万円と高給を得ている。経営再建中だった女子医大としては、随分と大盤振る舞いだ。」

東京女子医大が支払ったこのような高額な給与額と、実際に出向職員に支給された金額との間に、1人あたり、最大で月100万円の差があったそうです。さらに、出向職員は、実際は2人から3人しかいなかった(架空請求疑惑)とのことです。

「そもそも、出向職員の給与を出す女子医大と受け取る側の至誠会、この両方のトップを岩本氏が務めている。これは私立学校法で禁じている、「理事の利益相反取引」にあたる可能性が高い。」

2つめは、株式会社ケネス&セルジオという会社との業務委託契約の問題です。女子医大の監事(弁護士)からの指摘を受けて、至誠会からの出向受入を切り替えた契約でした。

「女子医大とケネス社の「業務委託基本契約書」によると、契約期間は2020年4月1日から22年12月31日とある。経営統括部の業務支援、理事長秘書業務全般として、報酬は月額385万円。21年3月からは岩本氏の専属運転手の費用が加わり、月額451万円になった。今年4月分までに、ケネス社に支払われた報酬総額は、実に1億円を超える。」

ケネス社とはどのような会社か...

「ケネス社の設立は、2012年。登記簿の「目的」欄に記されているのは、不動産売買、コンピュータシステムの企画、芸能タレントの育成・マネジメントなどが占める。病院運営とは縁遠い業種にみえるが、女子医大との接点はどこにあるのだろうか。

取材の結果、同社代表取締役B氏の妻は、元タカラジェンヌの彩那音(あやなおと)と判明した。長年に渡って岩本理事長が贔屓にしている、元月組トップ・彩輝直(あやきなお)の実妹である...。」

「岩本理事長の公私混同ぶりは、これだけではない。ケネス社と契約した専属運転手は、彼女の甥だと判明した。「出金票」によると甥の報酬は、月額66万円。女子医大では准教授クラスの給与にあたる。

不可解なのは、ケネス社に契約を変更した後も、働く職員は以前に至誠会から出向していた人間と同じという点。その1人は、至誠会第二病院に事務長として勤務している。」

3つめは、嘱託職員として雇用した一級建築士への支払いの問題です。監査法人も登場します。

「2016年4月から、女子医大は一級建築士・C氏を非常勤嘱託職員として雇用した。同年3月、都内の大手設計事務所を定年退職した人物である。

C氏の給与は、週2日程度の出勤で月額32万円だったが、その後は月額60万円前後で推移している。ただし、給与とは別にC氏個人に、18年7月から22年2月まで「建築アドバイザー報酬」が支払われていた。総額は2.5億円で、一級建築士とはいえ、個人の報酬額としては破格だ。

稟議書によると、莫大な報酬の名目は、移転した新病院や建替えた病棟に関する、基本構想や値引き交渉、施工管理など。岩本理事長(当時:副理事長)が承認した押印もある。ところが、「これが内部で問題になった」と元職員が明かす。

女子医大の監査法人が、18年7月から19年11月までの『給与と報酬の二重払い』は、社会通念上ありえない、と指摘しました。これを受けてC氏の給与支払いは、止まりました。この翌年、女子医大は、数十年も続いていた監査法人との契約をばっさり切ったのです」」

この一級建築士は、建築事務所を株式会社組織で経営しているのに、わざわざ多額の報酬を個人として受け取っているのも釈然としないと、記事ではいっています。

不正疑惑を告発した職員2人は、懲戒解雇されたそうです。また、大学の内部監査室というのも、ひどいもののようです。

「実は、今年に入り、女子医大は内部監査室に元公安刑事などの警察OB、弁護士らを次々と加えて、体制を強化していた。これまでにも職員がメディアに情報提供をしていると考えたからだった。

また、元東京地検特捜部・検事の熊田彰英弁護士をアドバイザー役として迎えている。熊田氏は弁護士に転身してから、現金授受疑惑の渦中にあった甘利明元大臣の弁護人や、森友学園問題で国会の証人喚問を受けた佐川宣寿元国税庁長官の補佐人となっている。「疑惑をかけられた人物」にとっては、頼りがいのある、守護神というべきヤメ検弁護士だ。

捜査機関と化した内部監査室は、該当部門のパソコンや携帯電話、メモなどを押収。狙いを定めた2人の事務職員に対して、連日のように聴取を実施した。時には6時間にわたって拘束するなど、体力的にも精神的にも、大きなプレッシャーをかけ、職員たちを疲弊させていく。

聴取を終えて、女性職員が制服から私服に着替える際には、本人の同意を得ずに内部監査室の弁護士(女性)が、じっと監視していたという。さらに、帰宅時には女子医大最寄りの地下鉄の駅まで、元刑事が同行するという徹底ぶりだった。」

記事では、大学側の言い分も書かれています。

正論を指摘した監査法人をクビにしたというだけでも、非常にあやしいといえそうです。これも、日大の事件と同じように、税務当局が調べない限り、全貌はわからないのかもしれません。私立大学のガバナンスは、こんなものなのでしょうか。記事の中に出てきた支払い金額を単純に足すと、約6億円となります。勤務実態や役務提供が全くなかったわけではなさそうなので、その金額がまるまる不正金額という可能性は低いでしょうが、中身を精査する必要はありそうです。

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