会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

自主規制モニター会議(2023年6月21日)の議事要旨等の公表について(日本公認会計士協会)

自主規制モニター会議(2023年6月21日)の議事要旨等の公表について

2023年6月21日に開催された日本公認会計士協会の自主規制モニター会議について、議事要旨及び会議資料が公表されました。

「自主規制モニター会議は、品質管理レビュー制度及び個別事案審査制度(監査・規律審査制度及び綱紀審査制度)をはじめ、協会が実施する自主規制の制度が適切に機能し、社会からの理解が得られるものとなるよう、その運営状況をモニタリングし、大局的な視点で意見を述べ、又は助言を行うことを職務としています。」(協会ウェブサイトより)

委員の意見より。

「公認会計士・監査審査会による行政処分勧告や金融庁の行政処分が行われた事案が立て続けに出ており、対象となった監査事務所に対する品質管理レビューの結果を見ると、両者に差分があるように見受けられるケースもある。要因は様々あると思うが、こうしたケースが続くと、品質管理レビューの実効性に疑念を抱く。品質管理レビューの受け手である監査事務所のモチベーションにも影響するのではないか。」

協会レビューが、金融庁に引きずられるのもまずいでしょう。金融庁検査が正しくて、協会レビューは甘いという認識でよいのか...

「協会と監査事務所の信頼関係を崩さずに、共に良い方向を目指すことが品質管理レビューの最も基本的なスタンスであると考える。それでは収まらないようなケースにおいては、監査事務所にとって厳しい判断を下すことも必要になる
だろう。積極的に意図せずとも、状況や環境によっては道を踏み外してしまう弱さを持っており、誰かが牽制する必要がある、その役割を協会の指導・監督機能により果たしていく、といった考え方が基本になるのではないか。」

「必ずしも業務管理体制や品質管理体制が万全でない監査事務所において、改正法の経過措置の適用を受けたみなし登録上場会社等監査人であることを奇貨として、多くの新規契約を受嘱するようなことが行われた場合、品質管理レビューは事後に入るため、監査事務所の経営者自らが歯止めをかけていく形を実現する必要がある。資本市場や協会が求める水準を理解し、危機感を持って自律的な改善行動が促されるような取組を期待する。」

新しい登録制度に登録する適格性があるかを、協会が品質管理レビューで見るという立て付けのようです。協会が、厳しくチェックすれば、登録不適格の烙印を押される事務所が出てきて、監査難民多数発生という事態もありうるかもしれません。

「上場会社と監査事務所の数は均衡しているのか。日本では上場会社が増え続けているが、同じ割合で監査事務所が増えているとは聞かない。監査事務所の規模や特性に見合わないところにまで拡大して監査を依頼せざるを得ない状況
あるように思う。協会の自主規制だけでは限界があり、市場全体としてどう在るべきかを議論しなければならない局面に差し掛かっているのではないか。」

こちらは、倫理委員会有識者懇談会の議事要旨等です。

倫理委員会有識者懇談会(2023年5月22日)の議事要旨等の公表について

委員の意見より。

報酬に関する開示について。

「依頼人が算定した報酬に関する情報と倫理規則に基づく報酬関連情報との差分については、元々そのような不一致が生じないように、報酬の集計範囲や算定方法等について、期首の段階で、会計事務所等と依頼人の経営者や監査役等との間
で、十分な協議を行うことが重要である。」

「依頼人側と監査人側の報酬額が一致することは通常あり得ないと考えられるため、一致した報酬額の開示によって、監査人と依頼人間で恣意的な調整が行われ、馴れ合いの阻害要因が生じているとの批判を覚悟する必要がある。 「一致する」ではなく、内容的には「双方の情報に齟齬がないようにする」や「齟齬を来さないようにする」と記載する方がよい。」

「双方の情報に齟齬がないことが重要と考えるが、若干のずれが生じる場合も考えられるため、「実質的に齟齬がない」の記載ではいかがか。」

開示のすりあわせみたいなことをやるのでしょうか。あまり生産的な作業とも思えませんが...。理屈からすれば、監査事務所(ネットワーク含む)との契約・報酬は、会社の監査役等が承認し、監査人側も、子会社も含めて、コントロールしているはずだから、大きなズレはないはずなのでしょうが...。

生成AIについての議論もあったそうです。

「Chat-GPT を始めとした生成 AI を公認会計士が利用する場合、現状ではその生成過程を説明できない。生成過程はブラックボックスとなっており、入力さえ行えば、専門家の批評に耐え得るそれらしいものが生成されてしまう。生成 AI に対
する日本のスタンスは、厳格な議論が進む欧米と比較するとあまりにも異なっており、JICPA でも十分な議論を行う必要があると思われる。」

「生成 AI の発展速度はすさまじく、検討に関して時間的な猶予はほぼないと考えている。来年の今頃には時既に遅しとなる可能性も考えられ、JICPA として、学会の関係者や有識者などを集め、組織的なディスカッションを進めていくべきで
ある。」

「生成 AI は、報酬のディスカウントや算定方法にも今後大きな影響を与えると思われる。また、テクノロジーによる職業倫理の問題を検討する必要がある一方で、使い方によっては大変役に立つものであるため、業界にアラートを出してテクノロジーとどのように付き合っていくかを検討する必要がある。」

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「日本公認会計士協会(その他)」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事