Miserable Lie
“The Smiths”(1984)収録
ファーストの3曲目。私がスミスで一番好きな曲である。
なぜ好きか。
中学生の時に入った日本の公式スミスファンクラブの会長さんが「1番好きな曲」にあげていたので、「へぇー」と思って、そっか、これを好きな曲として挙げるのは玄人だわ、と真似、以来本当に1番好きになってしまった。
私の後世まで続く、「速い、変拍子、歌詞が詩で叫ぶ」好きの原点である。
この歌に出てくる、モリッシーもほんの一時期フラットを間借りしていたマンチェスターのワーリー・レンジに憧れて、20歳の時行ってしまった。
道を聞いた地元のおにいさんに「憧れていくようなとこじゃないンだが…」と言われたけど。その時の写真↓
ジャーナリストのニック・ケントはこの歌を、モリッシーの親友でありルーダスのシンガーであるリンダー・スターリングとの別れを歌った説を挙げている。確かにリンダーはワーリー・レンジに住んでいた。自伝でモリッシーは、
「ワーリーレンジの名フィールドロードの35番にふろうのように住んでいて、よっぽどしつこい人間でなければそこにはたどり着けなかった」
と書いている。でも、彼女は当時、バズコックスのハワード・ディヴォートと同棲していたし、べつに「恋愛対象」ではなかったはず…。彼女に憧れていたのは確かで、自伝にも、
「マンチェスターの音楽シーンは、暗い男性性によって脈々と受け継がれてきた~しかしリンダーは女性には許されない夢のハンターとして、ひとりで道を切り拓いた」
と書いていた。愛とリスペクトが感じられ、またリンダーとはずっとチーム友達であり、その関係に「みじめな嘘」感はない。ので、ケント説は違う気がする。歌詞に出てくる“Into the depths of the criminal world, I followed her”の“her”は、僕の「花のような人生を壊した相手」ではなく、この歌が女性を対象にしているとは限らないのではないか?
で、この歌のテーマは、先に“Reel Around The Fountain”の歌詞についてで書いた、「他者と肉体関係を持ち、子どもの純粋さを喪失すること」に他ならないと思う。山口百恵的愛の覚醒&渇望を抱き「おとな」の階段のぼったものの、
愛なんてみじめな嘘
君は僕の花のような人生を壊した
一度や二度ではない
君は僕の純粋な心を堕落させた
一度や二度ではない
と、早々に諦め&混乱。仕舞には、誰も僕を見ないと被害妄想になり、半狂乱でアドバイスを求めている。モリッシーは、アドバイスなんてされても聞く耳もないはずなのでよほどの混乱である。
まったく求められてないけど、私から何かアドバイスできるなら…花のような人生も純粋な心も、自分が思っていただけ。人に壊されたんじゃない、自分が壊れたと思ってるだけ…。壊されちゃいけないものは、自分でコントロールしなきゃいけない、肉体の悪魔に隙を突かれてはダメ!!そしてお互いの「愛と肉欲、時々情け」をいっしょくたに考えちゃダメ!!
…なんて53歳なので思うんであって、もちろん初めて聴いた時は思うわけもなく、私も「おおーそうだ、そうだ。アドバイスが必要だわ~」と思ってた。テーマはなんかエロいこと?え?もしかしてBL??とか何もわかってない腐女子だったんだけど。昔はものを思わざりけり…って、え、もの?「僕は君のものを見て、君は僕のものを笑う」ってBL!?
ザ・スミスの初期の歌の歌詞にはこのように、「おとな」の階段のぼっての純粋性の喪失、精神と肉体への感覚の混乱をテーマにしたものが多い。比喩や揶揄も多くわかりにくいものもあるが掘り進んでいくと、ベースに敷いているテーマには共通項が多いと思う。なんとなく書いているのではなく、ザ・スミスそのものが、巨大な一編の叙事詩のようだ。そのモリッシーの一貫性に、改めて驚かされる。
みじめな嘘
じゃあ、さよなら
君みたいな連中と一緒にいてくれよ
僕は僕の仲間といるから
僕らに逆らう何かがある
時間じゃないんだ、それは時間じゃない
だからさよなら、さよなら、さよなら、さよなら、さよなら
言うまでもないけど
君の気取らないところがどんなに好きか
ああ、でも舌を離してくれないか
少し高くすれば、うまくやれる
暗い夜がやってくる
君のユーモアも闇夜くらい暗い
僕は君のものを見て、君は僕のものを笑う
愛なんてみじめな嘘
君は僕の花のような人生を壊した
一度や二度ではない
君は僕の純粋な心を堕落させた
一度や二度ではない
吹きっさらしの神秘的な空気ならわかる
君の下着が見たいって意味だけど
その神秘的な空気ならわかる
君の下着を奪いたいって意味だけど
苦労と痛みの代償は何?
ワーリー・レンジに部屋を借りただけ
悩みと苦しみの代償って何?
ワーリー・レンジ
彼女の後を追った
犯罪の世界の深みへ
アドバイスが必要だ
アドバイスが必要だ
アドバイスが必要だ
アドバイスが要るんだ
僕を見た誰も、2度とこっちを見ない
誰も、2度と僕を見ない
全世界からすごい離れて後ろにいる
ああ、ああ、ああ
全世界のすごい後ろに
全世界からすごい離れて
ああ、ああ、ああ
君が行く時、僕も連れてって
アドバイスが要るんだ
僕にはアドバイスが必要だ
Miserable Lie
So, goodbye
Please stay with your own kind
And I'll stay with mine
There's something against us
It's not time, it's not time
So, goodbye, goodbye, goodbye, goodbye
I know I need hardly say
How much I love your casual way
Oh, but please put your tongue away
A little higher and we're well away
The dark nights are drawing in
And your humour is as black as them
I look at yours, you laugh at mine
And love is just a miserable lie
You have destroyed my flower-like life
Not once, twice
You have corrupt my innocent mind
Not once, twice
I know the wind-swept mystical air
It means I'd like to see your underwear
I recognise that mystical air
It means I'd like to seize your underwear
What do we get for our trouble and pain?
Just a rented room in Whalley Range
What do we get for our trouble and pain?
Whalley Range
Into the depths of the criminal world
I followed her
I need advice, I need advice
I need advice, I need advice
'Cause nobody ever looks at me twice
Nobody ever looks at me twice
I'm just a country-mile behind
The world
I'm just a country-mile behind
The whole world
Oh-oh-oh, oh
Oh-oh-oh, oh
Oh-oh-oh-oh, oh-oh-oh-oh
Oh-oh-oh, oh
I'm just a country-mile behind
The world
I'm just a country-mile behind
The whole world
Oh-oh-oh, oh
Oh-oh-oh, oh
Oh-oh-oh-oh, oh-oh-oh-oh
Oh-oh-oh, oh
Take me when you go, oh
Oh, oh, woo
Take me when you go, oh
Oh, oh, woo
I need advice, I need advice