隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

このブラックユーモアをおもしろがるには、まだ修業が足りないな~『ハングマン』

2018年05月27日 20時30分51秒 | ライブリポート(演劇など)

2018.5.23
ハングマン-HANGMEN-
  at 世田谷パブリックシアター


原作 マーティン・マクドナー
翻訳 小川絵梨子
演出 長塚圭史
出演 田中哲司/秋山菜津子/大東駿介/宮崎吐夢/大森博史/長塚圭史/市川しんぺー
   谷川昭一朗/村上 航/富田望生/三上市朗/羽場裕一


 http://www.parco-play.com/web/program/hangmen/


 2006年の「ウィー・トーマス」(ココ。よかったら)、2004年の「ピローマン」(残念、不参加)、2007年の「ビューティー・クイーン・オブ・ リナーン」(ココです。よかったら)で、マクドナー作品を長塚氏の演出で堪能して、芝居ってやっぱりおもしろいと思った私に、再び同じ作者+同じ演出のニュース。
 今回は翻訳が小川絵梨子さんとくれば、マクドナー作品は鉄壁の予想。彼女の翻訳+演出による『ロンサム・ウェスト』(ココ)と今回のものを演出で比較するのはちょっと私には荷が重いので、それはナシで。

 それにしても、会場に行くまでは、参加を決めたロックフェス前夜の不思議な気持ちの高鳴りと同じような熱を感じたけれど、内容はかなり重くて、「芝居っておもしろい!」という、期待した「単純なストレートに楽しい時間」は訪れなかった。ただし、それはもちろん「つまらない」とか「退屈」とか、そういった感想ではなく・・・。

 舞台はイングランド北部の街。1965年、死刑制度が廃止された、まさにその日。
 妻がやりくりをするパブで、常連客を相手にリーダー風をふかせているハリーは、実は死刑執行人のハングマン。
 ナンバーワンのハングマンのとして君臨(なにをもって「ナンバーワン」なのか)し続けたピアポイントへのコンプレックスは隠しようがなく、その言動はいかにも品がなく、無神経で横暴で、実は小物だ。
 そこに現れたのはロンドンからの若い男ムーニー。彼の登場で、2年前に処刑されたヘネシーの冤罪の可能性が不気味に浮上する。
 ハリーやパブの常連客とは一味違って、一見明るく爽やかに見えたムーニーも次第に不気味な雰囲気を漂わせ始めて、息もつけない緊張感が舞台上にあふれる。

 飛び交う本音とごまかしと、相手の内面にずかずかと入り込む礼儀なしの会話。それぞれに個性を見せつつも、群れて隠れてその場しのぎの生き方を続けてきたであろう彼らは、ある意味、似たもの同士の類だろう。
 それに対して、多少は常識的な言動を見せる妻と、思春期特有の恥じらいや迷いや不安定さをのぞかせる娘。彼女たちの存在には少しだけ感情移入ができるような。

 職業としてのハングマンは最終的には自身の人生の中でも最悪の「ハングマン」になりさがる。集団心理の恐ろしさ、愚かさ、ぶざまな様子が芝居の最後になって一気に集中的に高まる。ここで、ブラックユーモアを笑う気持ちの余裕はもてなかった。客席からは主に男性の笑いが聞こえたけれど。
 『ウィー・トーマス』では、目の前の残酷なシーンにも「勘弁してよ」とつぶやきながらちょっと楽しんでいる自分もいたことを思い出すのだが、今回はすごく複雑だった。
 それはたぶん、演出云々ではなく、テーマの重さだろう。死刑、冤罪、死を語り死を受け止めるにはあまりにも軽い人間たちの言動・・・。「真っ黒な笑い」と衝撃のシーンを楽しむには、私はまだまだ・・・だな、と。

 ラストで、ハングマンの仕事の後始末に入る前、ハリーとかつての助手が交わす言葉、
 死刑制度廃止で、「寂しくなるな」と「公正ってなんだろう」
 だったかな? そう聞こえたんだけれど。
 これはどうとらえたらいいのか、しばらくの間、私の課題です。

 役者たちは素晴らしかった。
 荒々しさを強調しつつも実は器に小さい男を演じた田中哲司の猥雑さ(この言葉は人物の形容には使わない?)、ドラマが進むにつれて不気味な雰囲気を強める若い男を演じた大東駿介のメリハリのある演技、暴走気味の夫に疲れた表情を見せる妻役の秋山菜津子の安定ぶりと、したたかさも兼ね備えつつも揺れ動く乙女心が愛おしい娘役の富田望生。そして、羽場裕一をはじめとする、どうしようもなく怠惰で自分勝手で無責任で、でもたぶん一応真っ当には生きてきたんだろうと思わせるパブの常連客たちのおもしろさ。
 
 今夜は首でも絞められる苦しい夢を見るかも・・・と思っていたんだけれど、思いがけず、同窓会に出席してホテルのラウンジの立食パーティーでスイーツを両手にいっぱい抱えて、大好物の生クリームを何度もほおばる・・・、そんな至福の夢を見てしまったのだ。
 精神的にどうかしていた?としか思えない・・・。

 https://natalie.mu/stage/news/282405

 

 席は前から2列目の端っこ。
 相方曰く「羽場さんはこっちにケツばかり向けていた」(笑)。
 
 下高井戸のいつもの店で飲んで食事を、と思っていたけれど、いつの間にかお店はなくなっていた。
 いつ以来だろう。残念・・・。


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