2012.6.21 (木)
南部高速道路 at シアタートラム
原作:フリオ・コルタサル
演出:長塚圭史
出演:安藤聖/植野葉子/梅沢昌代/江口のりこ/黒沢あすか/
真木よう子/赤堀雅秋/梶原善/加藤啓/小林勝也/菅原永二/
ジョンミョン/横田栄司
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/06/post_280.html
ちょっと時間的にきつかったので、せっかくだけどチケットを誰かに譲ろうかな、などと迷いつつも、いろいろ劇評などを読んでいくうちに、やっぱり行こう、と。
こんなふうに迷うことはあまりないのだけれど。
ブログなどでは、「とにかく真木よう子がきれい」という感想がけっこう共通項で、いいのかなあ、なんてつっこみながらの三軒茶屋行きでした。
「シアタートラム」はけっこういい思い出があるんで、やっぱり想いきって行ってよかったかな。
決定の台本はなく、役者と作り上げた実験的な舞台だというふれこみ。
原作を以前に読んでいるので、この渋滞が季節を越えて続いていくという現実離れしたシチュエーションだということもわかっていたけれど、一緒に見ていた相方はそれを知らずにまっさらな感じで臨んだので、案外そこが「ええっ」ってな感じで引き込まれたみたい。
そういう実験的な手法によるところが大きいのか、もともと原作をそのように解釈した長塚さんの解釈なのかはわからないけれど、どこまでも平板で平穏で起伏のない舞台です。
真夏のうだるような熱気の中での渋滞にも、凍えるような逃げたくなるであろう真冬の渋滞にも、人々はあくまで紳士で、穏やかで、かぎりなく気長です。
人はこんなにも大人でいられるのか、と笑っちゃうくらいの、そしてごくごく日常的な退屈ともみえるような毎日に生きる私だってもっとわがままで攻撃的なのに・・・と恥ずかしくなるくらいに、彼らは道をはずさず、感情を高ぶらせず、あくまで普通で、どこまでも静かなのです。
創作劇では当然考えられるようなカップルのスワッピングも、食料の奪い合いも、つまらないゴタゴタも勃発せずに、きちんと秩序を守り、穏やかな会話をかわし、助け合い、言葉をかけあい、いたわりあい・・・そして、季節を、年月を越えた渋滞はある日突然、なんの前触れもなく解消し、人々はばらばらに走り去り、何もなかったかのように、バラバラに、きっと渋滞の前にあったそれぞれの日常に帰っていったのです。
渋滞のあいだに自分の子どもをおなかに宿した女性をさがして、一人列を乱して、そしてなかなか元に戻れそうにないバスの運転手だけが、必死にその女性の車を探し回ります。渋滞の解消への流れに乗れないのは彼一人。
ほかの人たちには、たとえ季節を越えた渋滞の日々でも、人生のほんの一コマで、記憶にも感情にも残さずに置いていける時間のただの積み重ねってことで、過去になっていくのでしょう。
・・・・・・、と、これはあくまで私の感想であり解釈なのですが。
突拍子もなく個性的だったり、エキセントリックだったり、謎めいたり・・・という登場人物はいないのだけれど、よくよく見ていると、仕切り屋さん、リーダーにはならないけれどかげで集団をまとめていける主婦、人当たりのいい、あまり深く物事に執着しない軽めの優しい中年男・・・などなど、「いるいる、こういう人」という図式にはなっています。
手にしている傘が車を象徴しているのがおもしろい。
また、長い時間をともにしながら、それぞれが乗っている車の名前で呼び合う(「グローリアさん」とか「ミニさん」とか「ミニカさん」とか「ワーゲンさん」もいたかな?)・・・、それも「臨時の日常」であることを象徴しているのかなあ。
何も起こらないなかで、冬から春への時間の変化の中で、「ミニカのお母さん」がいつの間にか亡くなっていたことが、唯一軽くショックでした。
道路わきの木の下にでも埋葬してあげたのかな、なんて、筋とはまったく関係ないことにこだわっている自分が妙にヘンでしたね。
遅いランチのときにテレビがついていて国会本会議場でも採決風景。
消費税法案のところは見なかったけれど、その前の関連法案の採決でも、妙に高揚している空気に違和感。
予算委員会の質疑も何度か見る機会があったけど、なんかまやかしだったな。
何がまともで、何がちゃんちゃらおかしいのか?
自分のどの目を信じたらいいのか、そういうことすらわからなくなりました。
そういえば、「叔母との旅」が再演とか。
2012年8月2日~15日 青山円形劇場
http://www.siscompany.com/03produce/29obatonotabi/gai.htm
ココにも書きましたが、素晴らしい役者たちの舞台。
この時期はちょうど予定がつまっていて今回はいけないのだけれど、ほんとうに残念。
段田安則、浅野和之、高橋克実、鈴木浩介
役者で魅せる芝居です!
それぞれの趣味ってあるから、あまり人に勧めたりはしないのですが(なんでも)、これは「いい!」って言えます。