角田じいじの奮闘記

「心身共に元気で過ごす」を目標に趣味の一つである写真と日記を綴ってみたいと思います。

角田〝桜〟おらほの見どころ-8

2013-03-14 19:28:02 | 桜の見どころ

 諏訪神社 ー7  太田健次郎様著

第九話  木彫りの鼠に猫が噛みつく

 善蔵宮大工として、修行を積み職人となり、その後棟梁となり、諸国の神社造営に当たっている頃の話である。

 土地の殿様が、神社を建立するに当たり、名工に依頼したいと思い、諸国の大工棟梁に呼びかけました。多くの名棟梁が集まり、依頼するにも、あまりにも人数が多いので選考に困ってしまいました。ふと殿様は一計を案じ、大工棟梁に向かい「これより20日後に木彫りの鼠を作って参れ、其の出来具合によって、神社建立を依頼する」(現在の実技試験)と言い渡し鼠の素材を殿様より渡された。そこで、大工棟梁達は、各々自宅に帰り、懸命に鼠作りを行ったのでした。

 5日過ぎ、15日過ぎ、納期日は5日と迫った。この頃には善蔵以外の大工棟梁達の鼠作りは、大体出来上がり、このねずみ作りが殿様のお眼鏡にかなえばと各自最後の仕上げに精を出している時、善蔵は角袖揃いの着物を着、角帯をしめ、一室に閉じ籠り外には出ず、寝てばかりいたと言う。

16日目よりやっと作り始め、昼夜ぶっ通し仕事にかかり、提出の前日に作り終え、当日は各大工棟梁達の作った木彫りのねずみと一緒に御殿に差し出したのでした。差し出したねずみを殿様は一堂に並べ、一作品、一作品、品定めをしたが、いずれも精魂を籠めて作った品だけに、優劣をつけがたかった。殿様は一計を案じ、家来に命じ「猫をつれて参れ」と云い、猫をねずみの並べてある一堂に放してみると、他の作品には目もくれず、放されると同時に真直ぐに善蔵の作りしねずみに喰いついて走り去ってしまったと言うことです。

 殿様のこの猫を使っての裁定も見事であったが、善蔵の猫をも欺く作品には、多数の家来達は勿論、居並ぶ棟梁達も、只々驚きいったということです。それで善蔵は新神社造営を許され、数多くのご褒美を下されたという。

 名工棟梁善蔵は、持って生れた天稟のなせる技量才気の人であったことが伺える。作りしねずみを、鰹節を充分使った出し汁に作品をいれて、三日三晩ぶっ通しに煮染ませてからそれを差し出したので、猫も出し汁の味の利いた強烈な臭いのするねずみに喰いついたのだと言われています。次の様な話もあります。殿様から渡された、その素材を仕出し屋に頼み、仕出し汁の中に何日も入れてもらい、煮染ませてもらってから作ったと語る人もいます。

第十話  傘型の家の設計

 善蔵は晩年、自宅建築の計画を立てていたが、多忙に取り紛れ、実行が出来ず急逝してしまったので、弟子達が代わって建てようとしたが、善蔵が設計した居宅は、傘型の一本柱の丸い家の設計なので、弟子達は弩の如何ようにしても、建てようがなく、仕方なく、田の字型の一般的な家にしてしまったと言う。其の弟子達の合作の居宅も今はなく昔を偲ぶものは何もなくなってしまった。

                   次回は後書きにて完

写真は諏訪神社のお神楽のスナップ