あれもこれも

灰原中心二次創作サイトの創作人によるあれこれ日記。何かありましたら「拍手」からどうぞ。お礼は名探偵コナンの小ネタ三種類。

あの人に

2016-04-19 07:19:00 | コナン小話
映画『純黒~』を観てきました。
感想ももちろん書きますが、その前にどうあってもこれだけは書きたかった哀ちゃん視点のあの日の夜の小話です。

というわけで以下は激しくネタバレです。未見の方はご注意を。




深夜、阿笠邸の地下室。蛇口から漏れた雫が立てる耳触りの悪い音を、哀は身じろぎもせずにぼんやりと聞いていた。
キュラソー、組織でそう呼ばれていた女の顔を思い出す。「ラムの片腕」という言葉と共に何度か聞いたことのある名。「どんな人か」と問うた自分に「キュラソーの脳に記録できないものはない。その能力故にあの女は組織にいる」組織にとって有益な才能だけを求められていたシェリーを揶揄する酷薄な笑みとともにそう言っていたジンの声が脳裏に蘇り、哀は我知らず自分の体を抱きしめた。

組織の任務中にアクシデントから記憶喪失になった女とひょんな事から知り合った。それからたった2日。もう彼女がこの世にいない。その間に彼女に何が起きたのか、彼女が何を思ったのかを哀はずっと考えていた。
「消せるものなら記憶を消したい」
かつてコナンにぶつけた言葉、その時は冗談に紛らわせたが、哀の本音でもあったそれを実現して哀の前に現れたのがキュラソーだった。そして元太、歩美、光彦の三人に出会って、彼らの優しさと笑顔に導かれるように無機質なコードネーム「キュラソー」が柔らかな笑顔の「お姉さん」に変わっていった。まるで「シェリー」が「灰原哀」に変わったように。
(あの人は、私だわ)
もしかしたら、ああなっていたかもしれないもう一人の私。
最期の瞬間に交わした視線。彼女はきっと「キュラソー」ではなく「お姉さん」として死んでいく事を満足して微笑んで逝ったと哀にはわかる。
(でも、それでも………)
「私は貴女に生きていて欲しかったわ、キュラソー」
哀の膝にポトリと雫が音を立てずにこぼれた。
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