出島にあるオランダ商館の前で
オランダ商館の二階で
大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一
大通詞:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎
通詞の名門に生まれ、幼い頃からオランダ通詞会所に出入りしてきた男:野田立之助(のだりゅうのすけ)浜田信也
オランダ語通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 らが、オランダ船からもたらされた世界情勢について話をしていたところ、外ではある騒ぎが起きていた。
トリの友人でオランダ人を父に持つ青年:未章(みしょう)トラウデン都仁 が 通詞だった父親の失踪の謎を追って江戸からやって来た青年:伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉 と一緒に荷役の仕事をしていたのだが、オランダ商館の勝手方:ヤンセン - 村雨辰剛 に貿易品の砂糖を盗んだと、言いがかりをつけられて殴られていたのだ。
何度言ったらわかるんだ、これは商品なんだ。
お前達荷役はわざと砂糖をこぼし、持ち帰って金に換える。
卑しいやつめ!
そう言って、何度も未章を殴った。慌てて未章を助け起こす壮多。
こいつだけじゃない
お前たち!ただじゃおかないからな!
ヤンセンさん、これはまずい。
日本人に手を出してはいけない。(騒ぎをききつけ、二階の窓を開けて覗き込む通詞たち)
日本人の罪は、長崎奉行が罰する。
問題になります!
間に入ったのは、主にヤンセンの用を務める内通詞で、清十郎ら若い通詞に加えて、トリ、未章らとも親しい:忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 だった。
出島の入り口で、砂糖ば盗むような真似ばしたら、承知せんけんな。と荷役たちに注意していた人物だ。
主に出島にいるオランダ人たちの世話をすることによって、手間賃を得ている請負の通詞らしい。
私は見たんだ 日本人が砂糖を持って逃げるのを
壮多はそれを聞いて、砂糖を盗んだのが昼に小舟の上で懐に何かを隠した人物のことではないかと思い当たる。
辺りを見回すと、この騒ぎの見物人のなかにその男がいた。
自分のことが気づかれたと悟った男は、人込みをかき分け逃げ出そうとする。
どけっ!
荷物の中にある銅の棒を掴んだ壮多。
逃げた男に向かって、その棒を投げつけた。←サイドスローです。
荷車を駆けあがり、人の背中を乗り上げて逃げる身のこなしを見せた男、その足に壮多の投げた棒が当たり(ぇ
男は転んだが、また駆け出そうとする。
だがその前に立ちはだかったのは・・・。
通詞の見習生:大田清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大 だった。
足払いで倒した男の腕を後ろにねじり上げ、見事な捕物を見せる。
捕えた男は縛り上げられ、懐を探すと・・・盗んだ砂糖がそこから出てきたのであった。
壮多が砂糖を忠弥に渡すと、忠弥がそれをヤンセンに見せた。
すると、騒ぎを聞きつけたカピタンと呼ばれるオランダ商館長。出島のオランダ人たちを代表するトップ:レフィスゾーン(リチャード・ヴァン・ローイ) が現れる。
どうした。
カピタンの問いにヤンセンは、
もういい 誤解はとけた
と答えその場を立ち去ろうとした。
まてぇぇぇぃ~っ。
親父譲りのデカい声で、ヤンセンを呼び止めた清十郎。彼は、二階で騒ぎを見ていた大通詞:大田崇善の息子である。
だぃぃぃ、あんふうけもん(ばかもん)がっ!
慌てる崇善が、二階から下へ降りて行く。
人ば殴って、まちごうとった誤解やった、そいだけやマズかなかですか。
いいねぇ、なかなか顔が近い。それを見て心配する壮多。
オランダ語でも文句を言いたい清十郎だが、舌が上手く回らずにむせてしまい、野次馬たちに笑われる。
忠弥の後ろで栄之助と崇善がそれを見つめている。
笑っている中には、陰で清十郎を小馬鹿にしている稽古通詞、お坊ちゃん気質で通詞の長である父親にくっついている:杉原敬生(すぎはらけいしょう)重岡漠 もいた。
オランダ こまる
ながさきも こまる
清十郎は片言のオランダ語で、精いっぱい反論する。
だが、ヤンセンは理解できず
もう一度
と日本語で言ったため、再び笑いが起きる。
崇善は堪らず清十郎のところへ出て行こうとするが、栄之助が引き留める。
「誤解を解いてください。」
オランダ語でヤンセンに話しかけたのは、壮多だった。
彼はそう言っています。(清十郎とヤンセン、壮多を見る。)
おい、(立場を)わきまえんかっ!
そう言って請負いの親方(商い人)が壮多を叱る。
彼は無実の罪を責められ、暴力をふるわれた。(そう言って、未章を見る。)
謝ってください。
彼は私の大切な友達なんです。(話せなくてもその意味が解る未章は、胸を熱くする。)
彼の中には、あなたと同じオランダの血が流れている。
親方:いいかげんにせんかーっ!
するとカピタンが話した言葉を、栄之助が親方にわげぇする。
彼はこちらで厳重に注意する。
代わりに砂糖を抜き取ろうとした男は、そちらで厳しく処罰いただきたいが、いかがなものか。
親方:よか。
清十郎は、これまで通詞の職業を軽んじていたところがあったが、今回の件で外国語を学ぶことの重要性を理解したらしい。
栄之助は彼の正義感が無駄にならぬよう、肩を叩く。そして、壮多の方を少し見て去って行く。
どうやら、カイの為り代わりの件に関する壮多への誤解は解けたようだ。
崇善が清十郎に話しかけようと近寄ったが、それに目もくれず清十郎は壮多の前に出て高圧的に話しかける。
そしてまた、顔が近いんですけども。
わい、名は?どこのもんね。
江戸から来た、伊嶋壮多。
壮多・・・。忠弥がその名前を聞いて、反応を示した。
オランダ商館の二階から、野田立之助と騒ぎを見ていた杉原尚蔵は
あいはだいか、荷役がなしてあがん蘭語ば話す。
そう言って、壮多に興味を持つ。
わいのおかげで恥ばかいた。いつか必ず・・・。
そう言って、清十郎が壮多の襟首を掴むが、その続きは言わず去って行く。
清十郎っ、大勢の前で恥ば晒しおってぇぇぇぇ~っ。
後ろから見ていた崇善が、清十郎の後を追っていく。
気配を察した清十郎は、走り出して行った。
砂糖を持って立ち去ろうとした忠弥を、壮多が呼び止める。
俺の名前に心当たりがあるんですか?
忠弥が何か話そうとしたが、騒ぎを嫌った親方に後ろから襟首を掴まれ
壮多は出島からつまみ出されてしまう。
翌日、柳屋で
中の掃除をしていたところ、置屋・柳屋を束ねる女将:しず(紅壱子)の言いつけで、表に水を撒くよう言いつかる壮多。
他にも
・壮多、カステラば後で買うといて。
・うちは、ザボン漬け。
・うちは、ボーロば2つ。
・うちは、ボーロ3つ。
・カステラは3つね。
・うちはさ、よりより1つね。
・カステラ一斤3つね。
いやいや、皆から凄い量のおつかいを頼まれている。
とりあえず、女将に頼まれた表の水まきを始める壮多。
今日は出島に来んやったなぁ。
珍しく、大きな声で栄之助が話しかけてくる。
(親方に)二度と立ち入るなと言われました。
江戸には戻らんとか。
まだ、ここでやることがあるので。(壮多、水を撒き続ける。)
お前さん、英語ば学んでみんか。
壮多が、栄之助に振り向く。
お前には、優れた耳とよぉ~動く口のある。
新しか言葉で、新しか景色ば覗いてみんか。
以前の壮多なら、すぐにでもと喜んでいた言葉だ。
だが、長崎を少しだけ知った壮多には、
待っとるけん。
そう言って、帰ろうとする栄之助に言いたいことがあった。
森山さん、私の父をご存じですか。
その言い回し、目つきは塩頭のそれに似ていた。
その時、栄之助の脳裏にはある情景が浮かんだ。
幼い頃の自分に、差し向かいで外国語を教えてくれた人物の姿だ。
己の言葉を捨てよ。
その人物は、そう言っていた。
はい。
兄弟子と思われる少年と一緒に返事をする幼い頃の自分。
知らん。前にも言うた。
固まった表情のまま、去って行く栄之助。
そして、その様子を柳屋の二階から芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友 が見ていた。
森山家
代々通詞の家だという、森山の屋敷の前に立つ壮多。
座敷では、森山から英語を学ぼうとする通詞見習いと思われる大勢の若者が車座になり、巻き舌の練習をしていた。
その部屋の障子を開ける壮多。
壮多を見て、先輩風を吹かせようと杉原敬生が肩をいからせて
メイ・アイ・ヘルプ・ユー と 近づいてくるが・・・
壮多の後から、竹刀を入れたと思われる袋で床を突き、清十郎がやってくる。
やぐらしかぁ~。(うっとおしい)
と敬生の顔を睨みつけると、敬生は目を逸らして逃げていく。
次に壮多へ向かって、耳元で勇んでみせる。
覚えとけぇ。
わいばくらすとは、おいばい。
長崎弁がまだ達者ではない壮多は、意味がよくわからないので
はい。
と、清十郎に微笑む。
怖がらせるつもりだったのに、逆に顔にハテナが浮かぶ清十郎。
そこへ栄之助がやってくる。
壮多の肩を掴んで、自分のそばに座るように清十郎が彼を連れて行く。
講義ば、始める。
お互いを見据える栄之助と壮多だった。
第2話終了。
長崎弁の難易度が上がっている気がしますけども、ちゃんと聞き取れてなかったらごめんなチャイナ。
最初はそうと思っていなかったけど、壮多の表情が塩頭のそれに似てきてるなぁと感じてしまいました。
そして、本田博太郎さんの怪演は、バランスが凄くていいですね。あれをやりすぎると博多にわかみたいになっちゃうんだろうなぁ。