鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

犬飼の滝と和気神社

2018-11-10 10:15:46 | おおすみの風景

秋色を求めて一泊旅行をしたが、初めて訪れた霧島市牧園町にある「犬飼の滝」は素晴らしかった。

霧島へは何度も出かけているが、犬飼の滝まで行くのは初めてで、いつも天降川沿いの渓谷美と次々に現れる新川・安楽・塩浸・丸尾などの温泉街に気を奪われて、和気神社と犬飼の滝のある道路標識に従うことはなかった。

今度の旅では、自宅からいの一番に行くところと決め、ナビを「犬飼の滝」に設定して出発したので、迷うことなく到達した。

安楽温泉街の途中に架かる橋を渡ったらすぐに、ややUターン気味に右折をしてこれまでの国道よりグンと細い里道をループ式に高度を上げて行く。

はるか下を流れるのは犬飼の滝を落ちてきた中津川で、安楽温泉街の下流で天降川に合流している。

約2.5キロで右手に犬飼の滝入り口の駐車場と、ちょっとした公園がある。公園の一角が展望所になっていて、木造の「滝見展望台」があるので、滝壺近くにある立ち見台までいけない人はそこから滝そのものは眺めることができる。

ただし、見えるといっても滝の最下部と滝壺は造林が邪魔をして見ることはできないので、全体を眺めたい人はやはり山道を下ってかなければならない。

何としても滝の全体と滝壺の美しいブルーを見たいので、駐車場の一角から道しるべに従って下りていく。

丸太に擬したコンクリートのすべり止めのある階段をずんずん下る(と言ってもなかなかだ。最近、膝の調子が悪い)。

距離にしたら300㍍ほどしかないが、中津川の水量はわが家から5キロほど東の吾平町の中心部を流れる姶良川より少ないくらいなのに、霧島火山の活動によってできた溶結凝灰岩をえぐった谷の深さには驚かされる。駐車場からの比高は50メ―トルを超えるだろう。

滝壺の近くには滝見用の丸太づくりのお立ち台があり、そこからは滝のすべてが眺められる。

案内板によると滝の高さは36m、幅22m(幅は落水の幅ではなく、滝の落ち口の岩の屏風の幅らしい)。

一目で惚れる滝だ。「日光の華厳の滝型」の最も滝らしい滝。向こうは高さが100mもあるので見劣りはするが、コンパクトな美しい滝である。滝を生み出す岸壁と滝壺との調和は一枚上かもしれない。

ここはあの坂本竜馬が愛人のおりょうさんと一緒に訪れた滝であるという。竜馬が幕吏による襲撃事件で手傷を負い、西郷や小松帯刀の援護で薩摩に療養を兼ねてやって来た時、湯治のかたわら高千穂登山など大自然の中で英気を養った。

また、駐車場の道路向かいの小高い丘にある神社は、昭和17年に創建された和気神社で、道鏡を皇位に就けようとした称徳天皇の勅勘をこうむって大隅に流された清麻呂を祭っている。

清麻呂の流謫の地がここだという地元の伝承で社地に定められたそうで、清麻呂はゆるされて都に帰るまでの1年余りの滞在期間中、この地方で数々の善行を積んだ。

都に帰ってからは出世の道を歩み、最後には「造平安京大夫」を拝命して、千年の都として今日につながる京都繁栄の基を作った。京都にある「護王神社」にも祀られている人である。