国賓待遇でアメリカに招かれた岸田首相は大統領歓迎の晩餐会で流暢な英語を操り、次のようなジョークを飛ばしたそうだ。
ーー一緒に招かれた妻の裕子が「晩餐会の主役が誰だか分からない(ほど著名人が多数招かれた)わね」と言ったので、自分は確かにそうだと思ったけれども、バイデン大統領の隣の席に座れたので主賓だと分かりました。
この発言は晩餐会に招かれた人たちの笑いを誘った。以前に国賓で招かれた安倍首相よりは受け入れられたようだ。
最近よくアメリカのスタンフォード大学フーバー研究所の研究者だった西鋭夫教授がユーチューブで発言している映像を視聴するのだが、西教授は岸田首相を評価して「あの人は外国に行くと生き生きとしてお金をばらまいていますが、日本国内では暗い顔をして下を向いている」と言うことが多い。
今度のアメリカ訪問でも全くその通りのようだ。安倍元総理も英語をしゃべるがさして得意ではなく、菅前首相に至っては全く話せないから、たしかに英語圏では岸田首相の面目躍如だろう。
アメリカが今度岸田首相を丁重にもてなしたのは、ウクライナ支援で疲労し、イスラエル支援でもうまく行かず、さらに最大の中国問題である台湾有事が差し迫っているという認識のもとで、日本に少なくとも対中国牽制の立役者(盾役)になって欲しいとの思惑があるからだ。
対中国軍事戦略をアメリカは最も重要視しているのは承知のことだが、日本の軍事的役割を安保を前提としてワンランクアップさせようと圧力を掛けてきており、その結果岸田首相が唐突に5年間で43兆円を予算化すると宣言したことを評価しての今度の招待だった。
これに加え、アメリカはいざ戦闘準備となった場合の指揮権を一本化したいようで、在日米軍司令部内の統合的な指揮系統を再編した。自衛隊も同様の動きを示し、米軍との連携強化を図っている。
「平時に居て、乱を忘れず」という精神論から逸脱して、すでに南西諸島では自衛隊部隊が進駐し、地下壕の準備を始めたり、避難住民の受け入れ先を鹿児島県本土に設定したりとキナ臭い。
岸田政権下でのそのような対中国牽制のための準備活動はアメリカへの忖度が半分にしても、中国にとっては実に目障りだろう。
岸田首相はそんな中国への若干の配慮があったのか、バイデン大統領との会談の後で開かれた「共同記者会見」の記者の質問に答える発言の中で思いがけぬ言葉を口にしてしまった。
――同盟国たる中国・・・、あ、失礼、同盟国である米国との強固な信頼関係のもと・・・
あらあら、おいおい、という感じである。
間違うにも程というものがあろうに、それを言っちゃあお仕舞いよ。せっかくのアメリカへの忖度が台無しではないか。
「もしトラ」だったら、「ああそう、日本は本心はアメリカとの同盟は望んでいないのだ。もう別れよう。自分の国は自分で守れ」と、こう言いだすかもしれない所だ。それを言っちゃってくれトランプ!