「それはそれ、これはこれ」というのは、端的に言えば矛盾する命題を双方とも受容してしまうことである。この頃はそれが大いに目に付く。
岸田内閣が決定しつつある「原発の廃炉を60年まで延長し、さらに点検に要した期間は除外する」という方針と、もう一つは「米軍関連の基地新設や訓練場の提供」に関してである。
【その1】
一つ目の「それはそれ、これはこれ」は原発の始動後60年を上回る運転期間の延長である。
かつてはおおむね40年で廃炉にするという規定があった。
しかし2011年3月11日の東日本大震災で福島の東京電力第一原発が電源喪失による冷却不能によって大爆発を起こし、その後全国の原発はすべて停止を余儀なくされ、原発はもう止めてもいいのではないかという議論もあったのだが、結局、電力業界の要請によって復活した。
復活するにあたって各原発に対して活断層の再点検など安全性を最重要課題となった。各原発では専門家の諮問を得て次々に再稼働に舵を切りつつある。
この原発に要請される最重要課題の「安全性」こそが、「それはそれ」の内容で、福島第一原発の事故のようなことが再び起きてはならないというのが国民の念願であった。
しかし政府は昨今の「脱炭素」の国際世論に呼応するかのように、「原発こそ二酸化炭素を出さないクリーンエネルギーだ」と論点を変えてしまった。「これはこれ」というわけだ。
「安全性」(それはそれ)よりも「脱炭素」(これはこれ)の方を取ったのである。国民の議論は全く無視している。
ウクライナ戦争勃発後の原油とそれによるガソリンや電力価格が上昇したことへの対策もあり、性急に事を急いだ結果だろう。
日本は今度のトルコ大地震と同様の活断層による地震が極めて多い国であり、かつ地殻(プレート)由来の大地震も頻発している世界でも名だたる地域である。
さらに「敵基地への反撃能力(戦力)」を言い出しているが、敵基地から日本へのミサイル攻撃は直接日本の市民(都市)を狙うよりも50数基の原発に照準を合わせられたら、反撃能力もクソもないだろう。
もう一つ指摘すれば、核燃料使用後の廃棄物についての問題がある。全く目途がたっていないではないか。
【その2】
二つ目はここ数年で対中国敵視政策が強まり、九州南部と南西諸島に新たに自衛隊駐留地が設置され、また米軍との共同作戦が増えたことである。
この場合の「それはそれ」は九州南部以南に米軍の関与が増えたことであり、「これはこれ」はその結果関与を受けたか受けつつある地域に「基地再編交付金」という名の交付金(補償金)が支給されたことである。
両者は一見して連動しているようだが、受け入れた地域が必ずしも納得していないという点で地域に分断を生んでいる。
典型的なのは鹿児島県西之表市の例である。
西之表市の離島である馬毛島は地理的には西之表市に属するのだが、先年政府が馬毛島を開発していた業者から160億円とかいう巨費を投じて買い戻し、そこに陸上自衛隊の基地を造成するというのだ。
ところがそこを利用するのは在日米軍で、空母艦載機の離着陸訓練のために使用することになっている。
現在の西之表市長の八板氏は去年とその4年前の市長選では「馬毛島基地建設反対」を掲げて当選したのだが、いまだに賛成も反対もどちらの意思表示もしていないのだが、すでに基地建設の工事は始まっている。
その基地建設による交付金がすでに20億とかが支給されており、来年度予算に計上されている。
市長の意思とは無関係に工事が始まり、交付金が出され、工事関係者も多数が種子島にやって来ているという。
いったいどれだけの経済効果があるのか、西之表にしたら嬉しい悲鳴のはずだが、市長サイドは「拱手傍観」を決め込みながらもやはり経済の活性化を喜んでいるのではないか。
よく言えば「したたか」、悪く言えば「それはそれ、これはこれ」の二重基準。
対中国を念頭とした軍事力の「抜本的強化」も、よく言えば「防衛力強化による国民の安全確保」、悪く言えば「米軍の手先(盾と矛)」としての役割」になりかねない。
岸田内閣が決定しつつある「原発の廃炉を60年まで延長し、さらに点検に要した期間は除外する」という方針と、もう一つは「米軍関連の基地新設や訓練場の提供」に関してである。
【その1】
一つ目の「それはそれ、これはこれ」は原発の始動後60年を上回る運転期間の延長である。
かつてはおおむね40年で廃炉にするという規定があった。
しかし2011年3月11日の東日本大震災で福島の東京電力第一原発が電源喪失による冷却不能によって大爆発を起こし、その後全国の原発はすべて停止を余儀なくされ、原発はもう止めてもいいのではないかという議論もあったのだが、結局、電力業界の要請によって復活した。
復活するにあたって各原発に対して活断層の再点検など安全性を最重要課題となった。各原発では専門家の諮問を得て次々に再稼働に舵を切りつつある。
この原発に要請される最重要課題の「安全性」こそが、「それはそれ」の内容で、福島第一原発の事故のようなことが再び起きてはならないというのが国民の念願であった。
しかし政府は昨今の「脱炭素」の国際世論に呼応するかのように、「原発こそ二酸化炭素を出さないクリーンエネルギーだ」と論点を変えてしまった。「これはこれ」というわけだ。
「安全性」(それはそれ)よりも「脱炭素」(これはこれ)の方を取ったのである。国民の議論は全く無視している。
ウクライナ戦争勃発後の原油とそれによるガソリンや電力価格が上昇したことへの対策もあり、性急に事を急いだ結果だろう。
日本は今度のトルコ大地震と同様の活断層による地震が極めて多い国であり、かつ地殻(プレート)由来の大地震も頻発している世界でも名だたる地域である。
さらに「敵基地への反撃能力(戦力)」を言い出しているが、敵基地から日本へのミサイル攻撃は直接日本の市民(都市)を狙うよりも50数基の原発に照準を合わせられたら、反撃能力もクソもないだろう。
もう一つ指摘すれば、核燃料使用後の廃棄物についての問題がある。全く目途がたっていないではないか。
【その2】
二つ目はここ数年で対中国敵視政策が強まり、九州南部と南西諸島に新たに自衛隊駐留地が設置され、また米軍との共同作戦が増えたことである。
この場合の「それはそれ」は九州南部以南に米軍の関与が増えたことであり、「これはこれ」はその結果関与を受けたか受けつつある地域に「基地再編交付金」という名の交付金(補償金)が支給されたことである。
両者は一見して連動しているようだが、受け入れた地域が必ずしも納得していないという点で地域に分断を生んでいる。
典型的なのは鹿児島県西之表市の例である。
西之表市の離島である馬毛島は地理的には西之表市に属するのだが、先年政府が馬毛島を開発していた業者から160億円とかいう巨費を投じて買い戻し、そこに陸上自衛隊の基地を造成するというのだ。
ところがそこを利用するのは在日米軍で、空母艦載機の離着陸訓練のために使用することになっている。
現在の西之表市長の八板氏は去年とその4年前の市長選では「馬毛島基地建設反対」を掲げて当選したのだが、いまだに賛成も反対もどちらの意思表示もしていないのだが、すでに基地建設の工事は始まっている。
その基地建設による交付金がすでに20億とかが支給されており、来年度予算に計上されている。
市長の意思とは無関係に工事が始まり、交付金が出され、工事関係者も多数が種子島にやって来ているという。
いったいどれだけの経済効果があるのか、西之表にしたら嬉しい悲鳴のはずだが、市長サイドは「拱手傍観」を決め込みながらもやはり経済の活性化を喜んでいるのではないか。
よく言えば「したたか」、悪く言えば「それはそれ、これはこれ」の二重基準。
対中国を念頭とした軍事力の「抜本的強化」も、よく言えば「防衛力強化による国民の安全確保」、悪く言えば「米軍の手先(盾と矛)」としての役割」になりかねない。