時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

転々

2008-11-08 | 映画
俺・竹村文哉は
もっか大学8年生
幼少時
両親に捨てられ

育ての父親は
警察に捕獲されている孤独な男

あるのは借金84万円のみ
返済の期限まであと3日!



返済期限の前日
俺は取立て屋から
借金をチャラにする方法を提案された

「百万ある これをお前にやる」
「えっ?」
「その代わり俺に付き合え」
「付き合うって何に?」
「東京散歩…」
「東京の街を散歩する 俺が行きたい所へ行き お前はそれに付き合う それだけだ」
「馬鹿にしてるでしょ」
「いいや 一応目的地は霞ヶ関 期限はない」
「でも…」
「東京を歩くだけで百万!」



イヤ~な感じを受けつつも
ほかに選択肢のない俺は
取立て屋の提案に乗ることにした

吉祥寺・井の頭公園の橋の上から
男ふたりの散歩が始まった

「そうそう俺の名は福原愛一郎ってんだ」

そして調布飛行場で
福原は
俺に散歩の理由を話しだした

「俺は人を殺してきた」
「またまた~」
「誰を殺してきたんです?」
「女房だ」

俺たちは互いの
ゆかりの地を訪れた

「お前は本当に思いで嫌いだな」
「嫌いっすよ 大学に入学した時 自分の写真全部燃やしましたから」
「卒業アルバムもか?」
「卒業アルバムもです!」



福原が知り合いに会いに行ったまま戻ってこない
俺は町を探し回った
こんなに必死に探し回るのは
親父がいなくなって以来だ

「シャバで最後に食べる飯は何だと思う?」
「寿司?」
「それは出所した時だろ!」
「じゃ~ラーメン?」
「それは未練が残りすぎる」
「…カレー?」
「当たり!」



散歩が4日目を迎えたころ
俺たちは
福原の知り合いである
麻紀子の家を訪れる

「動物園ってほんとに沢山動物いるんですね」
「文哉~来たことないの?」
「俺 親いなかったから動物園も遊園地も行ったことないんすよ」
「ジェットコースターも乗ったことないっす」

俺は
麻紀子の姪・ふふみを加えた4人で
擬似家族のような数日を過ごす

何にでも
マヨネーズをかけるふふみにほだされて
俺も
スキヤキにマヨネーズをかけて食べてみたりする

牛乳に塩をちょこっと入れて飲むとコーヒー牛乳になるよね
とふふみに飲まされた飲み物は不味かった

福原を親父と呼び
麻紀子を母さんと呼ぶ
ふふみに文哉~と呼び捨てにされる毎日

俺の心に
今まで感じたことのない感覚が沸きあがってくる
俺は
笑いながら親父に自首を止めるよ言おうかと思っていた



家に帰ると
母さんとふふみがカレーを作ってた

「カレーなんだ…」
「そろそろカレーかと思ってね」
「…」

日曜の午後
俺たちは家族揃って遊園地に行った

「男ふたりでジェットコースターって変じゃない?」
「まぁ~ね~」
「そんなの子供の頃にやっとけ~」
「そーだよね」

そして夜
俺達は皆でカレー食べた

「あれ?どしたの?」
「辛くて…」
「確かに少し辛いな」
「そうだけど…泣くことないでしょ~に」
「たまご入れたら?」
「ん…いいよ」

何故だか涙がとめどなく出てきて
それでも
泣きながら俺はカレーを食べた



翌日
この散歩が福原との最後の散歩になると解かっていた

「お前さ しばらく麻紀子のところに居たらどうだ?」
「いや いいですよ 俺 自分が居たいと思った人が必ず消えちゃう性質(たち)ですから…」
「お前な~そ~ゆ~のは‘たち’って言わないの!」

福原は百万円を俺にくれた

「あのさ~何かいいことあったか?」
「何の話?」
「お前 岸部一徳に会ったらいいことあるって言ったじゃないか」
「あったかな…」

一枚が風に飛ばされ
俺はその後を追った

「ね~やっぱり逃げるっての…」

振り返ると
そこに福原の姿はなく

横断歩道の向こう側
霞ヶ関・桜田門の一番大きな警察に向かって歩く
福原の後姿だけが見えた

「なんだよ…」



突然始まる東京散歩
方向性も解からず
時折出てくるギャグの連発も意味不明

つむじの臭いは崖の臭いなのか!?
岸部一徳を町で見かけるといいことがあるのか?

竹村文哉と福原愛一郎
麻紀子と麻紀子の姪・ふふみ
この擬似家族がユル~イ

でも
ふざけた話ではなく
真面目な話なのです

ボソボソと独り事のように話す福原愛一郎に
自然と寄り添うようにいる竹村文哉の不可思議なコンビ
何なんでしょう
愛しくて悲しくて
愉快で切ないのであります

乾いた心が
じんわりと潤っていく
そんな不思議な映画です

過去の写真を燃やした竹村文哉の心情

過去を嫌う竹村文哉の心情

共感する部分が結構あった小生なのでありました

オダギリジョーさんに
竹村文哉のような飄飄とした役を演じさせると
本当に
絶品の演技をしますよね~相変わらず

三浦友和さんも絶妙の演技を披露しております



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