神奈川絵美の「えみごのみ」

久米島紬「いい理由あり展」へ



先週末、拙ブログでも以前話題にした
山本きもの工房での久米島紬「いい理由(わけ)あり展」へ出かけた。
(会期は終了しています)



ゆうな、車輪梅、シイの木…草木染や泥染のほっこりした色が、会場を彩る。


私はこの展示を見るまで、久米島紬に多いこうした「ほっこり色」は
私にはあまり似合わないかも、と思っていた。

でも。


改めて、糸を見せていただいて、
いわゆるアースカラーだけではない、花やフルーツをも思わせる
明るい色もあるんだなーと新発見。
写真左、上からゲットウ(月桃)、サトウキビ、琉球藍。
写真右、上からヤマモモ、福木、そしてソテツ。

特に、右下のソテツは「近年、つくられた新しい色」と
久米島からいらっしゃった組合の方、Yさん。
彼女はバニラ色とおっしゃっていたが、清涼感のある薄いレモン色にも見える。


これがソテツの葉。
(草木染は当然、何で媒染するかによっても色が変わるので、
これからもニューフェイスが登場するかも。)


「私がこの道に入ったのは10数年前。でもキャリア75年という人もいるから
私なんてまだ“幼稚園児”っていわれます」
明るい口調でそう話すYさんは、しかし私よりも10は上の女性だ。
今春、成人されたお嬢様のために、振袖をつくったそう。
(久米島紬は糸の染も織も一人で行う)
写真を見せていただいたが、
薄めのチェリーピンクを基調に薄黄や緑系、茶系も織り交ぜた
太い縦縞で、それはそれは華やか。
足元から天に向かってオーラが立ち上っているようだった。


そんなYさんは、「私、ピンク色が好きなんです」
-私も 
たまたま、ピンクの単を着ていた私、
思わず自分の着物を指さし「この通り」と声が弾む。
今回、商品としてではないが、Yさんの作品の一つとして
織った布のサンプルを見せていただけた。


「ゲットウ(月桃)で染めた糸をメインにして」
実物は、もう少し赤みがかった、まさに桃の実の肌のような色。
そこに、泥やシイなど他の染料を使った糸で、
おもに自然をモチーフにした絣が織り出されている。

写真の下の方にある糸の束が、絣をくくった段階のもの。


この写真でいえば、茶色い部分だけが染まっていて、
ほかは染料が入らないよう、糸や青いビニールで強くくくられている。
「これは普段、私たちは滅多に見られませんよ」と
山本秀司さん。


今回は、御絵図※や沖縄県発行の絣図案集も見せていただけた。
(写真は久米島紬を紹介するリーフレットより)
今は、図案集を参考にしながら、つくり手一人ひとりが、
どんな絣をどんな色、配置にしようかなあと考えてデザインするそうだ。
上の薄ピンクの布を織ったYさん、
「商品にするには決めた絣を順番通り織っていかないといけないけど、
これ(サンプル)は遊んじゃって、途中で絣の種類を変えちゃったんです

そうお話する様子は、布が好きで
布をつくることが好きで、後世まで伝えていきたいという気持ちにあふれていた。


Yさんは、
商品としての布を織る一方、
「亡くなった祖母が10代で織った布の復元に取り組んで」いるそう。
見せてもらった写真の布は、
茶系の地に、白っぽい糸で十字絣が織り出されていた。
「最初はね、10代で織るなんてすごーいと思っていたのだけど
よーく見ると十字がずれてTの字になっていたりして」なんて
私たちギャラリーを笑わせてくれたけど、
そうやって昔に思いを馳せながら、伝統を受け継いでいこうという気概に
私はじーんときた。

そして、私の中にあった
久米島紬のイメージ(=少し地味目)も少し変わった。
機が熟したら、結城で自分の好みの色柄をオーダーしようかな、と
思っていたけれど、久米島紬もいいなあ。。。
つくり手との距離が近くなると、その分、夢もふくらむものだ。



※御絵図:17世紀~明治後半まであった御用布(統治元へ税として納めていた織物)に
     指定されていた図柄のデザイン帳。

コメント一覧

神奈川絵美
山本師匠
こちらこそ、有意義な会に参加でき、ありがたく思っています。
上の方のコメントにもありますが、伝統を守りつつも新たな取組をされていることがよくわかり、より久米島紬が身近に感じられました。
組合の方も、心から愛情を注いでいる様子が伝わってきました。今後も楽しみにしていますね
やんまもっと
http://yamamoto-kimono.com/index.html
こんにちは
会にお越しくださり、どうもありがとうございました。
絵美さんが見えると、ほんとホッとします。このような素晴らしい会になったのは島の人たちの愛情そのもののおかげでした。また次回もゆっくり見て楽しめるように考えたいと思います^^
神奈川絵美
Tomokoさんへ
こんにちは
>きっと普遍性も
そうですよね。私は、自分には似合わないと思いつつ、やっぱり久米島の泥染めとかゆうな染めって眺める分には大好きなんです。
Tomokoさんの一枚はおっしゃる通り「ザ・久米島」という感じで、ホントステキですよねぇ。
私も夢をはぐくむだけで終わってしまわないように、がんばらないと
神奈川絵美
amethystさんへ
こんにちは
こちらこそご無沙汰してしまって…
久米島の手触りは結城ほどではないにしろ「ほっこり」なのですが、近年は夏用の久米島紬にも力を入れているそうで、それは糸(確か経糸)に撚りがかかっており、割とさらっとしています。

こういう桃色は珍しいですよね。久米島というと茶とか黒という印象が強かったのですが、これから変わっていくかも知れませんね
神奈川絵美
すいれんさんへ
こんにちは
この日は久米島紬の組合の方がいらっしゃって、ここには書ききれないほどいろんなお話を聞かせてくださいました

記事中のYさんは、「ゆいまーる」(みなで集まって砧打ち)が楽しそう♪とこの道に入ったそうですが、実際には朝4時半に起きて…ということもざらで「こんなはずではなかった」とか(笑 まあ、このお話は冗談交じりだと思いますが)

すいれんさんの「次なる久米島」との出合いも、楽しみですね
Tomoko
こんにちは。
久米島紬(いろんな産地ものも)も時代とともにいるんな工夫はなされていくのがきっと自然ですよね。
どんなに変化に富もうとも、気候風土が生み出すものであれば、きっと普遍性も兼ね備えているに違いないと思っちゃいます。
私は泥染めの典型的久米島紬が一番好きですが(うちの子が一番可愛い!っていう/笑)、モダンもまたよろし。
いつか絵美さんとご縁がある一枚はどのような・・・?夢を育む時間がまたうれしい世界ですねえ。
amethyst
素敵♪
お久しぶりです。

久米島紬のよさ、がまだちょっとわからず
ただ興味、憧れだけが頭にあります。
ときどきショップでさまざまなのにも出会いますが
今回のような桃色。。。初めてみますね~
簡単な印象は薄くてほっこり?。。。
絵美さんが出会う久米島、どんなのがあるでしょうね。
一緒にワクワクしました。
すいれん
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
最終日にはなんとか伺えるかと思いましたが、時間がなくなってしまいました。残念!でも絵美さんのレポートのお陰で会場の様子、よ~く分かりました。素晴らしいですね。久米島のイメージが変わりました。ありがとうございました。次回はぜひ伺いたいと思います(それまでにお金を貯めて・・・)
神奈川絵美
風子さんへ
こんにちは
>新しい試みをしていて
その通りですよね。記事に載せたピンク系は商品としてはなかったのですが、「これが久米島?」と思わず目を近づけてしまうような、珍しい織り方の布や、福木とも違うソフトな黄色の布など、珍しいものがありました。
見て、ワクワクして、物欲を抑えるのがたいへんでした~
風子
http://fuko346.exblog.jp/
こんにちは (^v^)

この頃はどの産地でも いかにも、ではなく新しい試みをしていて、いいなあと思うものにたくさん出会うので、物欲との戦いです。笑

この展示のものも、とても素敵なものが揃っていますね、見るだけでもわくわくしそうです。
神奈川絵美
衣舞の袖さま
こんにちは
生憎のお天気ですが、ちょうど良い骨休みになる連休なか日ですね

この月桃の布、ステキですよね
私、久米島はもう少し歳を重ねてからでも…と思っていましたが、ぶ、物欲が…
衣舞の袖
桃色!?
http://plaza.rakuten.co.jp/tagasode/
絵美 さま

こんにちは!
連休の真ん中、久しぶりにのんびりムードを楽しんでいます。

月桃で染めた桃色だなんて・・・ステキ!
きっと絵美さんにお似合いです^^
こういう合いを見せて頂くと、久米島のイメージが変わりますね。
神奈川絵美
かもママさんへ
初めまして
コメントくださいまして、ありがとうございます
工房の前までいらっしゃったのですね。次の展示等の機会にはぜひ中へ
山本夫妻は気さくで優しい方々ですし、布のいろんなこと、教えていただけますよ。

気楽に適当に続けているブログですが、またよかったら遊びにきてくださいね。ご訪問ありがとうございました
神奈川絵美
Miwakoさんへ
こんにちは
久米島紬はよく都内のデパートでも展示される機会がありますが、こうして作り手さんのお話を伺えたり、資料をたくさん(ここに載せた以外にも、サンプル布をたくさん見せていただけましたし、工程がわかる大きな写真もあってわかりやすかったです)見たりするのはなかなかないので、とても勉強になりました。
少しくすんだ明るい色、いいですよね。物欲、刺激されまくりです
かもママ
山本きもの工房
初めまして、
横浜市在住の今年になって突然着物にはまってしまった、かもママと申します。よろしくお願いします

私も久米島紬見てみたくて山本工房さんの前まで行ったのですが、気後れしてしまって入れなかったのでレポ大変うれしく読ませていただきました。次回には勇気を出して入ってみようかと思います。
これからも着物にまつわるお話楽しみにしています、
頑張って下さいね
Miwako
素敵~
いいなぁ、私も行きたかった!
絵美さんが、東に西に、お出かけして情報収集&発信してくださるおかげで、私の物欲が刺激されます。

何かいい出会いはあったのでしょうか。
ちょっとくすんだ綺麗色もいいですね。
神奈川絵美
オンブルパルフェさんへ
早速コメントをありがとうございます
ピンク、ソフトな色合いでいいですよね。でもデパートなどではなかなか見かけないようにも思います。
いつか横浜方面にもおいでくださいませ~
オンブルパルフェ
久米島
http://ameblo.jp/herend-tarte/
わーいいなあ。
行きたかったんです。訳あり久米島展。
ピンクの色合いが、私のツボです。
行きたかった。
いつか、横浜ツアーしたく存じます。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「美術展・工芸展レポート」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事