いじめてアゲル

雪が降ったら「会いたい」とメールするんだと決めてた。
でも、降らなかったね。
カオリです。
＊＊＊


「前はもっとわがままだったよな。
俺はそこが好きだった」

え？つまんない女になったって？

でも、それはあたりまえ。
二十歳の頃のようにあなたを振り回したりできない。
あんなに無邪気でいられないもの。
確か誕生日は私より早かったよね。
今年私たちは三十路になるんだよ。
おまけに私はだいぶ前に結婚している。

あの頃は確かにいじわるだったかな。

私になんの自信があったんだかわからないけど
あなたからは優しさをもらうばかりだったね。

好きな人の話だって困り顔で聞いてくれたよね。

頻繁に「好きだ」って言ってくれたけど
「好きか」って聞かれたことはなかった。

与えるだけで何も望んでないように見えたよ。
真正面から来られると逃げたくなっちゃうんだけど
あなたは私の唇さえも求めてはこなかったよね。


私の一部しか知らないあなたは
他の人の知らない私を知っている唯一の人でもあるんだね。


会う前は聞こうと思ってたこと
会ったらどうでもよくなっちゃったな。


歳を重ねた私。
もう学生じゃない私。
今は、こうしてあなたにもにこやかに気を使ってる。
好かれてた頃とは違うから。
やさしーく、やさしーく。

でも、心の中では

「次に施すネイルは
　あの色に一段濃い色を重ねてみたらどうかしら」

なんて考えてる。


あの時の私と今の私
どっちがいじわると言えるだろう？