碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

大震災から一週間

2011年03月18日 | テレビ・ラジオ・メディア

3月11日(金)の東北関東大震災から、ちょうど一週間。

地震が発生した午後2時46分には、私も黙とうした。

今日も現地では原発への放水が行われている。

自衛隊員も命がけの作業であり、ぜひ効果があらわれて欲しいと思う。

作業の様子は、30キロ離れたところから撮影しているというNHKの映像で見た。

30キロといえば、以前、八王子にある東京工科大までクルマ通勤をしていた時の片道分だ。結構遠い。

それでもホースから吹き出される水や、それに反応した水蒸気もちゃんと見えた。

すごいぞ、NHKの撮影技術。


今回の事故は、放射能という“見えない恐怖”が相手であり、これまでとはレベルが違うこともあって不安も大きい。

愛読している池田信夫さんのブログに、今日、以下のような解説があった。


原発の危険は核爆発ではなく、放射能汚染である。この点では、原子炉よりも使用ずみ核燃料の問題のほうが深刻だ。

プールに保存されている核廃棄物は約200トンで、原子炉内の核物質より多く、その主要な成分であるプルトニウムの毒性は核燃料のウランよりはるかに高いからだ。

さらにサイト内には6400本の使用ずみ核燃料が貯蔵されており、この冷却がうまく行かなくなると危険である。

使用ずみ核燃料で事故が起きた場合にどうなるかも想定されており、これは再処理工場の事故に近い。

核廃棄物が過熱して火災が起こると、それによって放射性物質が拡散され、サイトの周辺が放射能で汚染される。

今のところ使用ずみ核燃料プールの温度は100℃以下と推定されているので、それほど心配はないが、ここで核廃棄物が集まって再臨界を起こすと暴走して、大量の死の灰が炎に乗って立ち昇るおそれがある。

しかし以上のような最悪の事態が発生しても、人体に影響が出るのは原発から半径100km以内だろう。200km以上離れた東京にも放射性物質は飛んでくるが、人体に影響を及ぼすほどの量が飛来することは考えられない。

政府の避難計画はレベル7も想定して立てられており、現状はレベル5である。「外人は逃げた」とか「政府は隠している」という疑心暗鬼があるようだが、被害想定ではレベル7事故が起こっても東京には避難勧告は出ない。

警戒は必要だが、過度に心配することはない。

(池田信夫blog 2011.03.18)



また、同じく池田さんのブログで紹介されているのが、「おなかがいたくなった原発くん」という傑作アニメだ。



「福島第一原発の事故は、ウンチ(核廃棄物)がおなかにたまって、オナラ(水蒸気)が出ている状態だ」という秀逸な「譬え」で、この事故を、子どもにもわかるように解き明かしている。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51689181.html


もちろん複雑なことをシンプルに説明しているので、「そんなもんじゃないよ」と言う人や、「ユーモアまじりに語るな」とか思う人がいるかもしれませんが、一度このアニメをご覧になってみるのも悪くないと思います。


今週の「読んで書いた本」 2011.03.18

2011年03月18日 | 書評した本たち

福島の原発。

必死の放水作業。

これまで原発のシステムについて、あまりに知らないままだったことを反省しつつ、自衛隊や警察による取り組みをテレビで見る。

ネット上には、かなりの悲観論もあったりするが、今は見守るしかない。

同時に、可能な節電なんかもやっております。

計画停電で、ストンと電気というものが消えた家は、やけに静かだ。

あまりに当たり前な感想とはいえ、「電気のある生活」に慣れきっていることを、あらためて実感します。


えーと、今週、「読んで(書評を)書いた」のは、以下の本です。


藤田宜永 
『夢で逢いましょう』(小学館)

森 毅 
『一刀斉、最後の戯言』(平凡社)

白井晟一 
『白井晟一、建築を語る―対談と座談』(中央公論新社)



・・・・藤田さんの『夢逢い』を楽しく読んだ。

物語展開もそうだが、それ以上に昭和30年代への“紙上タイムトリップ”を堪能したのだ。


それから、今週号の新書コーナーは、
下川裕治・仲村清司
『新書 沖縄読本』(講談社現代新書)。

下川君は松本深志高校の同期で、『文藝春秋』の「同級生交歓」にも一緒に出てもらったノンフィクション作家だ。
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/e56943db7c2476b4aa738859c94a0cff

残念ながら、この新書の書評は私ではないが(笑)、“沖縄の現状”を遠慮会釈なく、徹底的に(もちろん本土のことも)えぐり出したところに感心した。

ご一読をおススメします。


* 上記3冊の書評は、発売中の『週刊新潮』最新号(3月24日号)に
  掲載されています。