2018.10.25
『まんぷく』ヒロインのモデル「安藤仁子」は、
どんな女性だったのか!?
どんな女性だったのか!?
ご存知のように、NHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)には王道ともいうべき三大要素があります。女性の一代記、職業ドラマ、そして成長物語であることです。さらに近年は、実在の人物をモデルにする成功パターンが加わりました。
10月にスタートした朝ドラ『まんぷく』。安藤サクラさんが演じているヒロイン、福子のモデルは「日清食品」創業者・安藤百福(ももふく)の妻、仁子(まさこ)です。
そして、ドラマで長谷川博己さんが好演している立花萬平が、百福をモデルにした人物というわけですね。
ただし、仁子自身は翻訳家(『花子とアン』)でも、実業家(『あさが来た』)でもありません。普通の主婦だったはずですが、ドラマのモデルになるからには、知られざる何かがあるのではないでしょうか。
そんな好奇心から、安藤百福発明記念館:編『チキンラーメンの女房~実録 安藤仁子』(中央公論新社)という本を手にとりました。編者を見てわかるように、いわば仁子の「正史」です。
仁子は1917年(大正6年)、大阪の商家に三女として生まれました。やがて父の経営していた会社が倒産し、貧乏生活が始まりますが、家の中には常に三姉妹の笑い声が響いていたそうです。
家計を助けるために、14歳で電話交換手の見習い職員となります。働きながら女学校に通い、卒業したのは18歳のときでした。京都の都ホテルに就職したことが、後の百福との出会いにつながっていきます。
結婚した百福は、根っからの企業家でした。しかも事業は順調なときばかりではありません。戦後は、えん罪の脱税容疑で裁判にかけられ、財産も差し押さえられました。
また信用組合の理事長になってほしいと頼まれ、結局は倒産の責任を負います。これで再び財産を失うのですが、百福を信頼する仁子の姿勢は決して揺ぎません。
さらに、「インスタントラーメン」の開発も一人の天才によるものではなく、仁子をはじめ家族総出の取り組みでした。何があっても「クジラのように物事をすべて呑み込んでしまいなさい」という母(「私は武士の娘です」の口癖は実話)の教えを守りながら、常に夫を支え続けたのです。
本書を読むうち、仁子を「スーパー主婦」とでも呼びたくなってきました。
モデルがいるとはいえ、あくまでもドラマはフィクションです。萬平が百福そのままではないように(たとえば百福は台湾の人でしたが、ドラマでは大幅に変えられています)、もちろん福子も仁子そのものではありません。
『まんぷく』では、練達の脚本家・福田靖さんが、事実をふくらませた新たなエピソードを随所に盛り込んでいます。本書で描かれた仁子と、ドラマの福子を比べながら視聴するのも一興かもしれません。
古舘やイモト起用の是非は…
「下町ロケット」に小さな不安
「下町ロケット」に小さな不安
日曜劇場「下町ロケット」(TBS系)は3年ぶりの続編だ。ロケットに搭載するバルブから一転して、今度はトラクターのトランスミッションの開発だという。ヒットメーカー「チーム半沢」による“骨太なドラマ”が一番のウリだ。
また続編のメリットだが、佃航平(阿部寛)をはじめ、技術開発部長の山崎(安田顕)、エンジニアの立花(竹内涼真)、そして経理部長の殿村(立川談春)といった面々には、「久しぶり!」と声を掛けたくなるような親近感がある。それは帝国重工の財前(吉川晃司)や社長の藤間(杉良太郎)も同様だ。
一方、やや心配な点もある。まず、「宇宙から大地へ」というキャッチコピーはすてきだが、農機具であるトラクターはロケットと比べると明らかに地味だ。しかも、いきなり「特許侵害」をめぐる攻防戦に突入した。かつての技術開発合戦とその逆転劇が与えてくれた快感が得られるかどうか。さらに新たな登場人物のキャスティングだ。ダイダロスの代表取締役に古舘伊知郎。ギアゴーストのエンジニアにイモトアヤコ。ケーマシナリーの知財部長に内場勝則などが起用されている。
しかし、いずれもこのドラマの重要人物だ。話題性はもちろん、健闘しているのもわかるが、本当に彼らでよかったのか。物語も配役も、小さな不安を吹き飛ばすような今後の展開を期待している。
(日刊ゲンダイ 2018年10月24日)