能登半島地震の初期報道
今月1日、「令和6年能登半島地震」が発生した。マグニチュード7.6という日本海側で起きた過去最大級の地震だった。道路の寸断、停電や通信網の損壊などもあり、半月が過ぎた現在も被害の全貌はつかめていない。
圧倒的な情報不足の中で行われた初期報道で突出していたのが、5日に放送されたNHKスペシャル「最新報告 能登半島地震〜命の危機いまも〜」である。現地で何が起きたのか、なぜ起きたのかに迫っていたからだ。
番組は倒壊した家屋からの救出作業、災害派遣医療チームの活動、孤立集落の現状などを伝えた上で、何が地震を引き起こしたのかを考察する。
京都大学防災研究所の西村卓也教授は、「GNSS(衛星測位システム)」を使って能登半島の地盤の動きを調べてきた。
その結果、2010年からの2年間で「水平方向に最大3センチ、垂直方向に最大7センチ」の動きがあったという。
通常は年に1ミリ程度であり、これは異常な値だ。その原因として、地下の深い所から上がってきた高温・高圧の水である「流体」の存在を挙げる。
流体が「断層」に流れ込み、滑りやすくなった断層がズレることで地震が多発。それによってさらに断層が大規模に破壊され、結果的に大地震が発生したのだ。
西村教授は以前から自治体などに対して警鐘を鳴らしてきたが、「事前に想定していたシナリオの中でもワーストシナリオの事態が起きてしまった」と言う。
また地震工学を専門とする愛媛大学の森伸一郎教授は、穴水町などで損壊家屋の実態調査を行っている。今回の被害の特徴は、強い揺れが繰り返されたことで建物の強度が低下する「累積損傷」だと指摘する。
100の揺れが1回の場合より、80の揺れが2回のほうが被害が大きい。特に古い家屋の「耐震補強」の重要性を強調した。
この番組は現地の被害を取材しただけのリポートではない。今回の地震に関する有益な「知見」を、わかりやすい形で見る側に提供していたのだ。それは能登半島における今後の対応だけでなく、各地で続いている地震と向き合うヒントでもある。
何より、これだけの内容を災害発生からわずか4日の時点で放送したことに大きな意義があった。
(しんぶん赤旗「波動」2024.01.18)