もやいマンション日記

マンション役員の体験を綴った「マンション日記」に、プライベート所感を綴った「nonnon日記」が混ざっています。

N0.209「延命処置を目の当たりにして・その3」

2012-05-23 | 日記・エッセイ・コラム

           nonnon日記

 I さんが気管切開をしてから、1ヶ月と1週間経った。

(‘危篤’で親戚が集まってから2ヶ月である。)

その後の状態は・・・というと・・・

東京から息子さんが、婚約者のお嬢さんを連れてきて、

それを奥さんが枕元で告げると・・・ニッと笑ったのだそうだ。

この頃、奥さんが、「じゃあ、帰るからね」と言うと、

(声は出ないけれど){いいよ}とご主人の口が動くのだそうだ。

それを奥さんはとても嬉しそうに語る。

I さん(シゲチャン・75歳)は、甲状腺がんと老人性脳梗塞の

病歴を持っていて、胃漏はしていなくて、点滴による栄養だけ

で生きている。I さんの生命力にも驚かされているが、

奥さんの心と体の強さと愛情の深さにも・・・脱帽である。

先日廊下で出会った際は、「今、(院内の)蘭の展示会で

お花見てきたのよ」と・・・少し余裕。

今日は玄関で出会って、「週2日やってるボランティアの

会議があるので、今日はもう帰ります。」

OHOHOH!なんて強い人!!アリエナイ・・・・と

私はその背中につぶやいてしまう・・・・。

この病院の中では、胃漏(胃に穴を開けてそこから

栄養を入れる)して、ベッドの上で元気にしゃべっている人、

気管切開をしたけどまた穴をふさいで、

キャリー付き酸素ボンベを引いて、鼻にビニール管をつけて

スタスタ歩いている人に、そこここで出会う。

「ほらね、こうすると声が出ない」と喉の‘フタ’を開けて

見せてくれた人も。(どうも気管切開をした後、リハビリで

奇跡的な回復振りをするのは、脳卒中系の手術をした

人に多いように見受けられる)

「延命処置・治療」・・・先日のTV番組では、‘否定的’な

側面で取り上げられていたが、

人それぞれ、病気もそれぞれ、延命処置による結果も

それぞれ、に思える。

ところで、聞くところによると、

気管切開は、家族が断れば、しないのだそうだ。

家族のいない人は、必然的に行われるらしいので、して欲しく

なければ、その意志をあらかじめ表明しておく必要があるらしい。

ずーっと人口呼吸器につながれたまま、回復する兆しがなく、

ただ息をしているだけで日が過ぎて行くことになったら・・・

それは苦痛のような気がする。

I さんのように、少し反応があって、喜ぶ家族がいれば?

I さんは毎日ベッドの上で、どう思っているのだろうか?

「あの時はこうだったよ」と、‘喉のフタ’を閉じた‘シゲちゃん’

が穏やかに語り、傍で奥さんが微笑みながら聞いている・・・

そんな日が・・・ 何ヵ月後かに訪れるのだろうか?

他人事でない気がして、I さんの奥さんに会うと、

いつも私の心臓は早打ちするのだ。

 

 

 

 

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N0.208「延命処置を目の当たりにして・その2」

2012-05-16 | 日記・エッセイ・コラム

            nonnon日記

  同室のI さんが危篤状態になって、

東京から息子さんが飛んできたり、

親戚の人が来たり・・・日中ずーっとロビーに

待機されていたので、嫌でも目に付いた。

奥さんは、ほとんどいつも I さんの手を握って・・・・。

でもそれが2日経ち、3日経ち、1週間経ち・・・・

息子さんは、いつまでも会社を休めないから、・・・

‘お別れ’はもうしたから・・・とついに帰って行かれた。

大いに驚いたのは、この「危ない」といわれていた時にも

理学療法士さんが来て、リハビリを行っていたこと。

I さんの足を上にポーンと持ち上げて・・・。

そうすると、「腎臓の働きが良くなって、尿の量が増えた」

そうで、奥さんが喜んでいらした。(意識の反応はない)

それから、点滴の栄養だけで生きている I さんの傍に

奥さん一人が、日中、毎日毎日通ってくる日々が続く・・・・

(聞けば、自宅から、バス・JRを乗り継いで、

片道1時間と40分かかるという)

3週間目、(夫は別室に引越したが、心配で、顔を出した

私に)・・・・「マスクの人口呼吸器が限界なので、’気管切開

手術’をしたのよ。尿の出が、10倍になったの」と嬉しそうに

おっしゃる。反応はないそうだが、「耳は聞こえるはず」と

奥さんは、CDプレイヤーで、ご主人の好きな曲を

聞かせていた。

毎日、毎日、判で押したようにお昼過ぎに来て、

‘シゲちゃん’の手をさすり、傍で居眠りし、身の回り品を

整え、音楽を聞かせ、・・・夕方6時のバスで帰る・・・・。

ふっくらしていた奥さんのお顔は、段々げっそりして

目が落ち窪んでいらした・・・。

私は内心、「この人、倒れるんじゃないかしら、」と

心配になった。

 

 

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N0.207「延命処置を目の当たりにして・その1」

2012-05-08 | 日記・エッセイ・コラム

            nonnon日記

 先月のこと、夫の入院している病室の方が

危篤状態に陥った。

夫によると、夜中、突然向こうのベッドが騒がしくなり、

医師、看護士が大勢部屋に来た、そうなのである。

マスクに繋がる人工呼吸器、心電図、血圧計、点滴

尿袋等がものものしくベッド周囲に配置される。

そしてピーピーガーガーの機器の傍で、

奥さんが、ご主人の手を握り、涙ぐむ光景が・・・。

「シゲチャン、しげちゃーん」と叫びながら手をさする・・・。

(後から伺ったが、この70代ご夫婦、17歳からずーと

ご一緒の、超仲良しご夫婦なのだ。)

(誰でもこの光景に出くわしたら、焦って、動揺しますよ。

エー、エー、そんな!ってね)

うちの夫も介護認定4で、かなり深刻な状態で入院したの

だけれど・・・より‘大きい不幸’に出会うと‘通常の不幸’は

その‘カゲ’がくすんでしまうのである。

そんなわけで、その病室にいた2週間の間は、

病院に夫の付き添いに出掛けながら、私の心は

この生死の境をさまよっている‘あちらの空間’に

‘釘づけ’状態であった。

 

 

 

 

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