nonnon日記
I さんが気管切開をしてから、1ヶ月と1週間経った。
(‘危篤’で親戚が集まってから2ヶ月である。)
その後の状態は・・・というと・・・
東京から息子さんが、婚約者のお嬢さんを連れてきて、
それを奥さんが枕元で告げると・・・ニッと笑ったのだそうだ。
この頃、奥さんが、「じゃあ、帰るからね」と言うと、
(声は出ないけれど){いいよ}とご主人の口が動くのだそうだ。
それを奥さんはとても嬉しそうに語る。
I さん(シゲチャン・75歳)は、甲状腺がんと老人性脳梗塞の
病歴を持っていて、胃漏はしていなくて、点滴による栄養だけ
で生きている。I さんの生命力にも驚かされているが、
奥さんの心と体の強さと愛情の深さにも・・・脱帽である。
先日廊下で出会った際は、「今、(院内の)蘭の展示会で
お花見てきたのよ」と・・・少し余裕。
今日は玄関で出会って、「週2日やってるボランティアの
会議があるので、今日はもう帰ります。」
OHOHOH!なんて強い人!!アリエナイ・・・・と
私はその背中につぶやいてしまう・・・・。
この病院の中では、胃漏(胃に穴を開けてそこから
栄養を入れる)して、ベッドの上で元気にしゃべっている人、
気管切開をしたけどまた穴をふさいで、
キャリー付き酸素ボンベを引いて、鼻にビニール管をつけて
スタスタ歩いている人に、そこここで出会う。
「ほらね、こうすると声が出ない」と喉の‘フタ’を開けて
見せてくれた人も。(どうも気管切開をした後、リハビリで
奇跡的な回復振りをするのは、脳卒中系の手術をした
人に多いように見受けられる)
「延命処置・治療」・・・先日のTV番組では、‘否定的’な
側面で取り上げられていたが、
人それぞれ、病気もそれぞれ、延命処置による結果も
それぞれ、に思える。
ところで、聞くところによると、
気管切開は、家族が断れば、しないのだそうだ。
家族のいない人は、必然的に行われるらしいので、して欲しく
なければ、その意志をあらかじめ表明しておく必要があるらしい。
ずーっと人口呼吸器につながれたまま、回復する兆しがなく、
ただ息をしているだけで日が過ぎて行くことになったら・・・
それは苦痛のような気がする。
I さんのように、少し反応があって、喜ぶ家族がいれば?
I さんは毎日ベッドの上で、どう思っているのだろうか?
「あの時はこうだったよ」と、‘喉のフタ’を閉じた‘シゲちゃん’
が穏やかに語り、傍で奥さんが微笑みながら聞いている・・・
そんな日が・・・ 何ヵ月後かに訪れるのだろうか?
他人事でない気がして、I さんの奥さんに会うと、
いつも私の心臓は早打ちするのだ。