今晩は、才村です。
今日は以前、あるコンサルタントから教えてもらった、帯広の菓子メーカー「六花亭製菓」の、社員のやる気を引き出すユニークな取り組みを取り上げます。皆さんも赤い包み紙のバターサンドを北海道土産にもらって召し上がったかもしれません。六花亭は、経営の第一目標を「成長」に置かず、お客さまに満足していただけること、社員に楽しく働いてもらうことに置いています。ユニクロやしまむらのようではなく、室町時代創業の500年くらい続いている羊かんの「虎屋」のような、時の試練に耐えうる会社とお菓子作りを目標としています。
毎日、地味なお菓子作りとその販売にいそしんでいる社員をいかに元気付けるか、誇りを持たせるかに、小田社長は力を入れています。社長が父親役の大家族主義は、チームワークが求められる製造業であって、あの冬寒く広々とした大地で暮らしている素朴な人々にふさわしい気がします(数年前、10月下旬に訪れた十勝平野には牛がゆったりと歩いていましたが、帯広駅前は広々としていて、市内に歩行者が少なく、もう冷たい風が吹いていました)。
1.表彰式という晴れ舞台の提供
地元の盆踊り大会に会社チームのリーダーとして参加した若手女性社員を表彰して、臨時ボーナスも出している。
直接の仕事であろうが、なかろうが、積極的に活動した人だけでなく、コツコツ地道に働いた人、段取りがいい人も表彰している。
⇒私が勤務していた工場では、新年朝礼で、新製品開発チーム、業務改善チーム、特許取得社員以外に、作業現場の模範社員を表彰していましたが、地道に働いた人や段取りがいい人までも表彰するとは、さすがに人をよく見ている社長だなと感心します。社員1300人余りで、年間100人以上表彰しているようですから、パート社員も含めて全社員が「私にもチャンスがある」と思って仕事に励んでくれれば、会社にとってこの上もないことです。
2.年休行使の推奨
「従業員一人ひとりの心身の健康がおいしいお菓子作りにつながる」というトップの方針のもと、有給休暇取得22年連続100%を達成している。年休取得計画で取得を促進し、年休を使った旅行に補助金を出している。作業効率向上のための改善提案を奨励し、そのための設備投資も行っている。
⇒「従業員の心身の健康→おいしいお菓子(しかも、おやつとして買える値段)→お客様の支持→会社の繁栄」というトップの考えを着実に実行していることが評価できます。どの会社も同じような方針を持っているものですが、景気が悪くなると社員削減、研修費のような経費削減に陥りがちです。ちなみに、年休ではありませんが、私は勤続25周年記念に2週間の休暇を得て、イギリス語学研修に行き、現地の文化をこの目で見てきたことが得難い経験です。こんな制度がある会社への私の満足度がアップしました。
3.社内新聞の発行
社員400人分の「一人一日一情報」を集め、毎日、100人の声を載せた社内新聞を1年365日発行している。小田社長が、社員の考え、性格が表れた新聞記事を見て、叱咤激励し、配置転換の参考にしている。社長に対する批判も、コメントを付けて必ず載せている。
⇒社員との絆を深めたいと考える社長はどこにでもいるでしょうが、1000人以上の社員がいれば、社長がマメで熱意がないと継続できないでしょうね。自分に対する批判も載せる点に社長の器の大きさを感じます。また、社員同士の理解が深まれば、チームワークもよく取れるようになります。
ただ、六花亭には人事部がなく、62歳の社長一人で人事管理を行っているので、事業承継が最大のリスクですが、社員を知り尽くしている社長はきっと適任者を見付け出していることでしょう。
4.適材適所の人事
以前、お菓子の技術に優れた職人を工場長にしたが、管理能力が不足していてうまく行かなかった経験があったので、ベテラン職人に北海道知事より高い年収を与えて誇りを持たせながら、お菓子作りに専念させている。社会性が乏しい人がいても、粘り強い長所を評価して、持ち味を生かせる仕事に就かせている。
⇒以前、工場作業現場の班長クラスを全国のサービス部門に配置転換しましたが、地方への単身赴任、不慣れな顧客折衝、サービス技術習得の負担等々が障害になり、うまく行かない例を経験しました。やはり、配置転換に当たり、強制力を働かせる前に、能力の有無、性格の向き不向き、本人の事情の十分な事前把握が必須でした。
以上、トップと社員との距離が短い中堅オーナー企業のやる気向上の成功例です。組織維持三原則のうち、目的・目標の共有と情報の共有は◎、成果の公正な分配は○(社長+上司による人事考課の方が的確なはず)と私が判定した六花亭でした。