「稼プロ!」事務局の小林 隆です。
本日は、中小企業の「比較優位」について考えてみたいと思います。
先日JICAの「中小企業海外展開支援事業」という事業に応募したいという中小企業様の相談を受け、お手伝いをすることとなりました。
この事業は、中小企業の優れた製品や技術を途上国の開発に活用することで、途上国の開発課題の解決と、同時に応募企業の事業が具体的に活性化され、国内の経済の活性化にも寄与することを目的としています。
したがって、応募に当たっては、
①進出予定国の社会的課題と解決へのニーズ、
②応募企業の製品・コア技術や実績、他社と比べた「比較優位性」、
③当該事業実施後の現地国における成果、
④当該事業実施後の日本企業側の成果、等
を、明らかにしなくてはなりません。
過去の事例をみても、進出対象国に、解決すべき社会的課題があって、中小企業が所有する独自技術をもった製品を開発登場国に導入することにより、社会問題が解決し、結果、当該企業の製品がよく売れる、というストーリになっています。
今回、この取り組みを行うにあたって、この中小企業の「比較優位性」を明らかにする難しさに直面しています。
一見して明らかな独自の技術を活かした製品をもっている製造業も少なからず存在しますが、多くの企業では、「比較優位」が曖昧になっていることが多いのではないでしょうか。
考えてみれば、「比較優位性」を確保することは、海外展開に限ったことではなく、本来、企業として日常的に実施されていなければならないことです。ただ、残念ながら、それをきちんと実施できている中小企業は、少数派ではないかと感じています。
「比較優位性」というと、私はまず、競争戦略を想起します。一昔前のアカデミックな世界では、競争戦略が主流でした。
競争戦略では、外部の競争相手に打ち勝つためのポジショニングによる差別化を行います。しかし、ポジショニングによる差別化は、情報伝達の高速化、技術の進展等により模倣による同質化を招きやすくなりました。これは、企業がお金と時間を投じて開発を行っても、以前より「優位性」を維持することができる時間が短くなったことを意味します。
そこで、最近の戦略論では、その「比較優位」を生む源泉である内部の経営資源に「優位性」を求めるようになりました。「比較優位」を生み出すための、組織能力や技術、ノウハウといった、外からは一見 みえにくい部分に、競争力の源泉を見出しているのです。
見えにくため、また組織文化等やオペレーションがかかわるため、すぐに模倣しようとしても、できません。
理念経営、ビジョナリーマネジメント、従業員満足の充足といった考え方も、その一連の流れの中にあると考えれあれます。
こうした話は、最近、中小企業診断士の受験をされた方は、記憶に新しいかたもいらっしゃるかもしれません。
とはいえ、そんな「能書き」を言っても、現実の中小企業ではほとんど役に立ちません。
大切なのは、自社ができること、「強み」と感じていることを活用して、お客様や社会の役にたつ製品やサービスを生み出し、提供する努力をし続けることだと思います。
とはいえ、日々目の前の仕事に追われている中小企業経営者に「それに気付いてください。」というのも、難しい話です。
そんな時、そうしたことに気づいてもらい、背中を押していくのが私たちコンサルタントの役割ですね。
かのP.F.ドラッカー教授は、1960年ころ「強みの上に自らを築け」との語録を残しました。
理屈はイロイロありますが、経営の本質というのは、昔から思いのほか変わらないのかもしれません。