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企業価値とは何ぞや

2020-10-15 11:59:00 | 20期生のブログリレー

稼プロ! 20期生の山崎です 。今日は、普段何気なく使っている「企業価値」という言葉 について考えてみたいと思います。

 

「企業価値を上げる」。会社の規模を問わず非常によく目にするフレーズです。一見、疑問を挟む余地はありません。法律は守らなければならない、と同じような、当たり前の1節に思えます。しかし、改めて考えてみると、この「企業価値」とは一体何を示すのか、はっきり分かっていない自分に気づきます。

極論を言えば、企業の行動は全て自らの価値を向上させるためにあるわけです。そう考えると、「企業価値を上げる」という言葉の指すものがますますマクロになり、雲のように捉えどころのないものに感じられます。

実は 企業価値というものは 大きく2つに大別できます

 

1つは、ファイナンス的思考における企業価値。この場合、意味するところはただ一つ。「将来キャッシュフローの増加」を指します。投資家やアナリストレポートなどで交わされる「企業価値」は、そのまま「将来キャッシュフローの増加」を指していると読み替えることが可能です。

この前提に立つと、企業価値向上の方法というのは3種類しかありません 。①投資案件から回収できるキャッシュインを増やす、②割引率(主にWACC)を下げる、③投資金額を 極小化する。純粋にファイナンス的な考え方だけで言えば、これらにより資本の増大を図ることこそが企業価値の向上そのものだということになります。

ただ。ここまでお読みになって「つまんねーなー」というお気持ちになられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。その通り、上記の概念は確かに企業価値の一側面ではあれど、少々無機質すぎるきらいがあります 。

 

そこで2つ目の定義の登場です。2つ目は、ミッション、バリューを達成し、社会を豊かにするという価値です。1つ目の定義より有機的で、エモーショナルな概念です。こちらは意味が一意に定まるような類のものではなく、企業の数だけ形が存在します。

中小事業者の方々が「企業価値」という言葉を使われた場合は、多くの場合、資本市場の定義より、こちらの有機的な定義を指すと思われます。ということは、我々中小企業診断士が診断のスコープに入れることが多いのも、後者ということになります。

実際、ミッションやバリューといった企業に内在する価値観は、助言の際も重要です。なぜ大事かと言うと、理念や価値観は戦略を規定するからです。順序から言って、理念にないことは、実行できないのです。

もちろん罰則があるわけではないので、理念にマッチしないこともやろうと思えばできるのですが、結果的に戦略の一貫性を欠き、対外的な説明にも苦慮します。うまくいかないことも多いです。ユニクロの有機野菜事業などがその典型でしょうか。事業体が大きくなるほど、ちぐはぐ感が高まってしまいます。

 

我々コンサルタントは企業価値の向上に資することが使命です。そこで1歩引いて、企業価値というのが無機・有機のどちら側を指しているのかな? と分類すると、取るべき方向性がより明確になるように思います。資本市場へのアピールが目的なのであれば相応のテクニカルな対応が必要になるでしょうし、ミッションの達成に資する動きであれば、多少の損はいとわず進めるべきタイミングが存在すると考えられます。何より、外部への説明の文脈が、両者ではがらりと変わります。

漫然と言葉を使わず、常にその意味を考える大事さを学んだ次第でした。

コメント (1)
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