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10年前の言葉

2021-03-02 12:00:00 | 20期生のブログリレー

こんにちは。20期生の安納です。
2021年3月です。東日本大震災から10年が経とうとしています。今、こうして稼プロ!ブログリレーに参加しているのもなにかのご縁と存じます。この度は、当時、幾度か震災後の被災地で作業に携わる機会を得た中で、交流した人々からいただき心に残った言葉を紹介したいと思います。記憶の風化とともに一字一句というわけには参りませんものの、ニュアンスを重視いたします。

「何もなくなっていれば何処へでも行けたのに」

海岸線にほど近い幼稚園でお手伝いしたとき、案内してくれた先生(園長の息子さん)がおっしゃっていた言葉です。戦後、先生のご先祖様が開園したそうで、海を臨む高台の立地には創立者の思いを感じます。津波が建物の100mと遠くない場所まで押し寄せたものの、建物は無事で、あの晩は避難所となったそうです。当時、高台の下は住宅地跡となっており、津波のさらった後には有志の手で小さな段ボール箱が据えられ、写真や文房具、仏具などが収まっていました。

先生はもともと海外で活躍されていた方でした。一変した風景と取りに来るとも分からない品々に、元来のフロンティア精神が相俟って、残された資産が足かせといわんばかりに、土地を離れたい気持ちが芽生えたのだと思います。ひどい災害を物語る言葉で、同世代だったこともあり、痛くその気持ちに共感しました。

しかしその後、彼は土地を離れることなく、早々に園を再開したと聞きます。風景が変わっても、先祖伝来の土地と残された理念の継承を決断したことに、強い意志を感じます。SNSなどで子どもたちと元気に過ごしている姿を目にすると、尊敬の念をあらたにいたします。

「子供は働く大人の背中を見ると安心します。大丈夫です。」

山懐に抱かれた児童福祉施設でお手伝いしたとき、施設長の方がおっしゃった言葉です。児童が見ている中、大人たちがものものしく活動していたので心配になり、施設長に「子供たち、不安にならないですかね?」と伺ったところ、こう答えてくださいました。素人仕事でも、役に立っていると言われれば矜持も芽生えます。自分の行動に次世代からの期待がかかっている!となんとなく誇らしい気持ちになりました。

10年たって、児童も大きくなり、社会に巣立った方もいると思います。時々、子供たちの視線を思い出すと、若者に負けていられないな、というより、若者のために何ができるだろう、と考えることがあります。20世紀壮年として、先々のために自分ができることを考えていくことも、忘れないようにしたいです。

「ここは皆が帰ってくる場所です。逃げるわけには行きません。」

福島市内のお寺を中心に活動する団体でお手伝いしたとき、代表の住職が取材に答えておっしゃっていた言葉です。人々が様々な地域から集まっていました。毎週土日、家のことを片付けた後で都内から始発の新幹線でやってくる主婦の方がいらしたり、偶然高校時代の同級生に会ったり。待っていても仕方ない、と先陣を切り精力的に働く姿に、強いリーダーシップとコミュニティを守ろうとする意志を感じました。

SL理論で分析すると、ハードの調達や行政との折衝といった点でS4(委任型)までは至らないまでも、S3(援助型)で動いていたのが特徴であり、今考えると初対面の人々の集まりなのに不思議です。スーパーボランティアの尾畠さんが話題になったことがありましたが、参加者の姿を思い出すと、メディアに取り上げられなくとも、似たような方は沢山いらして、事に及べばどこからとなく集まってくるのではないかと思います。


「今日しか参加できなくてすみません」「重くて運べなくてすみません」などなど、組織に馴染んだ身では、与えられた役割を全うできないと後ろめたく感じるものです。しかしあの頃の活動は、「できるときに・できることを・できるだけ」と声を掛け合い、行動する意思を最も尊重していました。自らできることを探して役割を担う、「呼応する組織」とでも称することができるのではないでしょうか。

事に臨み「できるときに・できることを・できるだけ」の精神で関わっていけるよう、また、歴史や土地の約束とともに生活する人々を支える診断士になれるよう、精進してまいりたいと思います。

最後に、東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

お読みいただきありがとうございました。

コメント (2)
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