こんにちは。田村隆一郎です。
今や我が国のナンバーワン小売業と言っても良いセブン-イレブンの鈴木敏文会長はよく、「小売業は変化対応業」だと言っています。
その言葉のとおり、セブン-イレブンはさまざまな商品やサービスを開発し、変革を続けています。
そして、その言葉の真意は、消費者に迎合することではなく、自ら仮説と検証を繰り返し、消費者に利便性や付加価値を与えるものは何なのかを考え続けるということではないかと思います。
消費者に、コンビニエンスストアに欲しい商品や機能は何かを聞いたとしても、それが本当に欲しいものなのか。
本当に欲しいものは、実は消費者自身も気づいていないのではないか。
その本質的なニーズを探り、そのニーズに対応できるように変化をしていく。
それが「変化対応業」という意味なのではないかと思っています。
さて、先日、倉庫業を行っている企業のコンサルティングを行いました。
倉庫での保管業務や、自宅での内職さんを活用してダイレクトメールの封入といった加工業務を行っている企業です。
公的機関の専門家派遣事業で、当初は『倉庫内の管理や、在庫管理の仕方について相談がある』という話しでした。
私が現場に行ってみると、確かに物が倉庫内に所狭しと置かれ、通路の確保もままならない状況です。
5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が出来ているとは、決して言えないような現場でした。
また、加工業務ではたまにミスが発生しているという話しもありました。
そこで、社長と従業員の方に集まってもらい、私から5Sや業務の標準化の重要性といった話しをしました。
ところが、従業員の方たちはあまりピンと来ていないようでした。
確かに倉庫は狭いのですが、拡張することはできません。(限られたスペースで、入ってきたものを置かざるを得ません)
加工業務は、一回限りの業務が多く、都度やり方が変わります。
また、作業を依頼する内職さんも、毎回メンバーが変わります。しかも自宅作業となるため、その会社の社員が見ていることもできません。
(作業マニュアルは割としっかりしたものが作られていました)
そのため、5Sや標準化といっても、「現実的には難しい」と捉えられてしまったようでした。
専門家派遣事業は5回の派遣が上限だったのですが、3回目から「皆さんが問題や課題だと思っていることを挙げてください」と伝え、社長や従業員からいろいろと意見を出してもらいました。
外出が多い社長との業務のやり取りが大変だといったことや、書類作成に手間が掛かるといったことなど、いくつか問題が挙がりました。
その時、この会社の本質的な課題は「倉庫内の改善を進めること」よりも、「問題や課題を話し合う場を設けること」ではないかと思ったのです。
その会社では、メンバーが話し合って、何かを改善したり、お互いに意見を言い合ったりすることがありませんでした。
各自、与えられた仕事を進めるだけで、会社全体で何かを良くしていこうという風土がなかったのです。
その点がこの会社の本質的な問題で、今後はみんなで話しをして、改善を進めていけるような体制にすることが必要だと感じたのです。
当初の話しから、5Sで表示物を付けたり、作業マニュアルを改善することもできたと思うのですが、それを行っても企業側の満足度は低い。
それよりもみんなで話し合いをする場を設けることで、これから自分たちでいろいろと改善していける風土を作る。
それによって社長の方針も従業員に浸透し、また従業員からの提案でさまざまな問題を解決していける体制ができる。
当初のコンサルティングのテーマとは少し変わってしまったものの、それによって社長も従業員もやる気になってくれていると感じています。
コンサルタントも当初のテーマに捉われて自分の考えややり方を押し通すのではなく、状況に応じて対応を変化させていくことが必要ではないかと思っています。
最新の画像[もっと見る]
- JAXAシンポジウム2024 2週間前
- アップルファーム社の取り組みに学ぶ―障がい者雇用を軸とした真似できない世界観 4週間前
- 輪島支援 1ヶ月前
- 輪島支援 1ヶ月前
- 趣味と次のこと 1ヶ月前
- 趣味と次のこと 1ヶ月前
- ヤンゴン雑記 2ヶ月前
- ヤンゴン雑記 2ヶ月前
- ヤンゴン雑記 2ヶ月前
- 衛星利用ビジネス検定β版 2ヶ月前
14期生の日野卓郎です。
ブログを楽しく読ませて頂きました。
プロコンにおける支援の本質を
見たような気がします。
目先に見える課題や問題点ではなく、
そもそも支援先は何を望んでいるのか、
何が必要なのかを見抜くということが
大切なのですね。
自分の強みを確立しつつ、
そこから外れても適切な助言ができる、
そんなバランス感覚が大切なんだなと
思いました。