中小企業診断士の金子です。
前回の投稿から間が空いてしまいましたが、今回はQBハウスのお話、第3弾です。
前回の投稿
http://blog.goo.ne.jp/kasegerupurocon/e/9a1c09c98547f3949c2cb2f273755e63
QBハウスは、10分1,000円でカットを行ってくれる理容室です(10分以上かかっても追加料金は
かかりません。)。
このモデルが成功するためには、以下の3つの要件が必要になります。
1.処理速度の均一化 2.サービス品質の均一化 3.一定以上の来店客数の確保
売上=客数×客単価ですので、他の理容室などと比べて客単価が低い1,000円カットでは、継
続的にお客様に来店してもらい、一定のスピードでサービス提供を行う必要があります。
また、予約も指名もできない仕組みなので、誰が対応しても一定の仕上がりになるように、サービ
ス品質を均一化する必要があります。
上記の3要件をクリアしているからこそ、QBハウスは、国内外に店舗数を拡大していると言えます。
では、それぞれの要件を満たすためにどのような対策を行っているかを以下で確認していきます。
1.処理速度の均一化
これは、前回のブログに記載した部分です。カットを10分以内に終わらせるとともに、掃除も2分以内
に終わるように、徹底的にムダを取り除き効率化しています。
システムユニットには、10分間の液晶タイマーがついており、従業員もお客様も常にそれを確認できる
状態になっています。後述しますが、お店側も時間内にサービスを提供したいし、お客さまもスピーディー
に処理してもらいたいと考えているため、スムースな流れができているように思います。
2.サービス品質の均一化
社内スタイリストスクールを設けており、最長で6か月の研修を行います。
スクールでは、無駄を省いた論理的な考え方に基づいたカット理論とカットテクニックを身に着けることが
できるようです。通常の美容院などでは、美容師個人のセンスなどが求められるのに対して、QBハウス
では、安定的にサービスを提供できることが求められているため、カット理論も誰もが実践できるものに
なっていると考えられます。
また、店舗でのサービスはカラーやパーマ等を行わず、カットのみなので、現場でのカット技術向上のス
ピードも早くなります。
3.一定以上の来店客の確保
一般の理容室が3,000~4,000円程度の客単価であれば、それと同じ売り上げを獲得するためには、
3~4倍の来店客を獲得しなければなりません。
価格が安いということは、お客様にとっての価値ですし、多店舗化等でブランド力を上げていることもお客
様を呼び込む要素となります。駅前や駅中などの気軽に立ち寄れる店舗立地も顧客を呼び込めるポイント
です。
それ以外の部分にもお客様に与える価値はあります。欧州経営大学院教授のW・チャン・キムとレネ・モボ
ルニュが発表したビジネス書「ブルーオーシャン戦略」でも、QBハウスの事例が取り上げられています。
本書では、競争が激しい既存市場を「レッドオーシャン」、未開拓の新市場を「ブルーオーシャン」と名付け
ており、「ブルーオーシャン」を開拓する戦略を打ち出すべきだとしています。
QBハウスの事例では、予約担当やマッサージやカラーリングなどの各種サービス、ヘアトリートメントなどを
なくすことなどで、価格を下げたうえで、施術の時間及び待ち時間を短縮していることが挙げられています。
さらに、エアーウォッシャーシステムにより、カット後の髪を吸い取ることで、シャンプーとドライヤーという時間
がかかる作業を取り除いたことを新たな価値だとしています。
回転率を上げるために、店舗側にとっても価値となる時間の短縮という部分が、お客様にとっても価値である
ということに目を付けたことが、このモデルの成功要因の一つと言えます。
QBハウスのモデルを見てわかることは、サービス内容や価格設定、店舗立地、顧客への情報発信など、全体
に一貫性があるということです。ただカット代金を1,000円にするということとは違います。
事前に、しっかりとビジネスモデルが検討されて、事業計画が策定されていることが感じられます。
QBハウスの事例からは、新たなビジネスを構築する時に、ゼロベースから考え、様々な角度から最適な戦略を
検討・構築していくことの大切さがわかります。
2006年にも、ベトナムでマーケティングの講義で紹介したことがありました。
グッドタイミング、女性はなかなか入れないので、情報発信に感謝しています。
14期生の日野卓郎です。
ブログを楽しく読ませて頂きました。
単純に安くて便利という
サービスだと認識されがちですが、
成功要因を掘り下げていくと、
非常に興味深い発見があるものですね。
僕も今度利用してみようかな。