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多様化する私立大学の入試制度

2024-11-29 12:00:00 | 24期のブログリレー

 こんにちは、事務局(23期生)の曽我です。今回は私立大学の入試制度について書きたいと思います。娘が高校3年生で受験生であり、私立大学文系を志望しているので、私立大学に関するニュースに我が家は敏感になっています。

 私立大学を経営という視点で見ると、少子化が進む中で受験生を奪い合う厳しい競争が起きています。文部科学省の資料によると、2023年の18歳人口は約110万人(1966年のピーク時の半分)、さらに2040年には約82万人まで減少すると推測されます。一方で大学進学率は上昇し、2023年には58%で大学進学者数は約63万人(1966年から倍増)となっています。少子化の中でも大学進学率の上昇により受験人口を確保できてきました。しかし、進学率も頭打ちになり、今後は大学進学者の減少が進んでいく見通しです。

 私立大学ではすでに定員割れをしている大学が増えてきています。日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、2024年度の入学者が定員割れした四年制の私立大学が354校で59.2%に上り、1989年度の調査開始以来で過去最高を更新したとのことです。

 このような状況下で、私立大学の入試には、学生を確保するために、1)年内入試による受験生の早期囲い込み、2)入試制度の差別化・多様化による受験生の確保、という傾向が強く見られます。

1)年内入試による受験生の早期囲い込み
 私立大学が採用する戦略の一つが、「年内入試」による早期囲い込みです。私立大学入試は、年明けに実施される一般選抜、年内に実施される学校推薦型選抜(高校からの推薦をもとに学力だけでなく、高校での成績や活動、人物像を総合的に評価する)と総合型選抜(受験生の個性や経験を面接、小論文、プレゼン等で総合評価する大学入試方式。以前はAO入試と呼ばれていた)に分かれます。年内のうちに合否を確定する2つの選抜方式は、大学側にとって定員充足率の向上を図る有効な手段となっています。文部科学省の調査によると、2023年度入試では、私立大学の入学者の6割を年内入試が占めています。特に下位ランクの大学では、年明けに行う一般選抜の比率が低下しています。これにより、受験生が他大学に流出するリスクを回避し、早期に入学者を確保しようという動きが顕著です。

2) 入試制度の差別化・多様化による受験生の確保
 現在の私立大学入試は、前述の一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜といった多様な形式に加え、一般選抜の中でも複数の方式が存在します。以下に主な方式を挙げます。
・一般方式:大学独自問題を作成し、試験を実施して評価
・共通テスト利用方式:大学入学共通テスト(大学入試センター試験に代わって、2021年から実施)の成績を活用してその結果のみで評価
・共通テスト併用方式:大学独自問題と共通テストの成績を組み合わせて評価
・英語資格利用方式:TOEFLや英検などの英語資格の成績を英語試験の代わりに活用し、大学独自問題の成績と合わせて評価

 例えばある大学の法学部を例にとると、方式を選ばなければ年明けに最大3回受験機会を確保できます。また共通テストに自信がある人は共通テスト利用または併用方式を、英語資格で好成績を取っている人は英語資格利用方式を選ぶことができます。加えて、大学ごとに各教科の配点比率や評価基準が異なります。私の娘の場合は、英語が得意で国語が苦手なため、英語の配点比率が高い、もしくは国語の配点比率が低い大学の学部が受かりやすくなります。このように多様な入試方式が存在するのは、他大学と差別化を図りながら、いろいろな方式を用意して多様な学生を少しでも多く取り込んでいきたいという大学側の思惑によるものです。

 受験生にとって試験は一度きりの真剣勝負です。本番で体調を崩してしまうと実力を発揮できず、大切な機会を逃すリスクもあります。その点、年内に選抜のチャンスがあることや、年明けの一般選抜で工夫次第で多くの受験機会を得られるのは心強いことです。しかし、複雑化する入試方式により、受験生や保護者は、どの大学・学部・受験方式を選ぶのが良いのか、制度をしっかり理解し、ミスなく手続きを進める必要があり、負担が大きいという現実もあります。

受験生や保護者ならびに関係者の方はこれから大変な時期を迎えますが、どうか我が家を含めて皆さまが体調を崩すことなく、実力を十分に発揮できますよう心よりお祈り申し上げます。一つひとつの選択が良い結果につながることを願っています。

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