こんにちは!稼プロ24期の松田です。
先般、コンサルタントが企業を診断する際に必要とされる「3つの目プラス1」という視点について、3分間プレゼンさせていただきました。本稿ではその内容をさらに掘り下げ、会計にもふれながら、今後コンサルタントとして私が取り組みたいことを述べさせていただきます。
- 鳥の目(マクロ視点)と時系列分析・予実管理
「鳥の目」は、企業全体を高いところから俯瞰して見るマクロ視点です。この視点を活用して、企業のありたい姿を社長から可視化していきます。
まず社長のこれまでの苦労に耳を傾けながら打ち解けてきたら、企業のビジョンやありたい姿を語っていただき、定性的に整理します。そしてそれに方向性を与え、具体的なアクションにつなげるために、定量的な目標を設定していきます。そのためには、時系列データを活用するといいでしょう。例えば、過去の売上データやコストの変動パターンを分析することで、将来の目標設定が容易になります。こうして、社長から引き出したビジョンやありたい姿を、長期的な戦略目標であるKGI(重要目標指標)で数値化していただきながら、社長の覚悟を確認します。
このKGIを全社的に達成するために、各部門や各人が何をどのように達成すべきか中間的な指標としてプロセス管理するKPI(重要業績評価指標)を設定していきます。最終的にそのKPI達成に必要なリソースを適切に配分し、コストを見積もって予算を策定します。
そのKPI達成のため策定した目標(予算)と実際の成果(実績)を定期的にモニタリングする予実管理も重要です。これによって、KGI/KPIに対する達成度合いを進捗管理し、PDCAを回せるようになります。必要に応じてKGI/KPI/予算の見直しや調整が可能になります。
このように「鳥の目」で設定した長期的ゴールを視野に入れつつ、足元の経営実態の可視化に欠かせないのが「虫の目」です。そのため、私はコンサルタントとして、企業の自計化支援を行い、会計事務所に任せきりの会計から、生き残りをかけた戦うための会計への転換を促していきたいと考えています。こうすることで、社長は足元の損益の変動に惑わされず、「鳥の目」で長期ビジョンからのバックキャスティングで経営判断を下すことができるようになるでしょう。
- 虫の目(ミクロ視点)と外部/内部環境分析・損益分岐点分析
「虫の目」は、企業の現状をあらゆる角度から徹底的に分析するミクロ視点です。この視点で把握した現状(事実)と、「鳥の目」でとらえた、将来のありたい姿(状態)とのギャップから、問題点を抽出します。
まず、外部の経営環境を詳細に把握するため、政治(P)・経済(E)・社会(S)・技術(T)の観点から外的要因を評価するPEST分析が有効です(最近はPESTELとして環境と法律を付加)。加えて、外部の競争環境を把握するため、5フォース分析(最近は補完財を加えて6フォース)が有効です。これによって、業界内での競争力や新規参入のリスク、代替品の脅威、買い手や売り手の交渉力などを評価することができます。そして、企業がどのような外的な脅威にさらされているか立ち位置を具体的に理解できます。
企業の内部環境も詳細に分析し、強みと弱みを把握する必要があります(VRIO/VC分析が有効/本稿では省略)。多くの社長は、日々問題に直面しているので、会社の弱みは、容易に引き出せるでしょう。一方、強みについては常日頃、言語化できておらず気がついていないケースが多いです。私はコンサルタントとして、傾聴力を磨き、社長から企業の独自の強みを引き出し、再認識いただけるよう支援できればと考えています。その強みが、戦略策定において非常に重要な要素となるからです。最終的に外部環境・内部環境を統合して、SWOT分析で企業の強み(S)・弱み(W)、機会(O)・脅威(T)を整理します。
また、損益分岐点分析も「虫の目」の視点で重要です。これは、企業のコスト構造を正確に把握し、どのタイミングで利益が出始めるかを明確にする分析手法です。新製品の投入や市場拡大を検討する際には、この損益分岐点を理解することで、利益確保に必要な売上高、コスト構造のあり方や削減目標を把握できるようになります。
こうして「虫の目」で分析した外部環境と内部環境が影響し合い、当期の損益が導き出され、財務構造が確定します。この現状を「鳥の目」の長期的視点でとらえた、ありたい姿に近づけていくため、戦略策定に欠かせないのが「魚の目」です。
- 魚の目(トレンド視点)と変化の察知・資金繰り管理
「魚の目」は、外部環境の変化を敏感にキャッチし、それに素早く対応するためのトレンド視点です。市場のトレンドや技術革新など、PESTでとらえたマクロ環境が変化すると、競合他社の動向、顧客ニーズ、消費行動パターンなどミクロ環境に影響を与え、外部環境は常に変化し続けます。中小企業はその変化をいち早く捉え、それに基づいた柔軟な戦略を策定し、ビジネスモデルを最適化していくことで競争優位を確保し維持できます。
戦略を策定する際には、クロスSWOT分析、アンゾフの成長マトリクス、ポーターの競争戦略類型などのフレームワークなどが有効です。
戦略の実行可能性を高めるため、会計上、「魚の目」で重点管理したいのは利益よりキャッシュです。例えば、売上が急速に伸びている時ほど、利益が出ていても、売掛金の回収が遅延するとたちまち資金繰りが悪化します。これでは仕入や営業活動ができなくなり「黒字倒産」のリスクと常に隣り合わせになるからです。また、キャッシュが不足すれば、投資活動もできなくなり、せっかくの事業機会を逃してしまいます。企業が持続的に成長するためには利益管理より資金繰り(キャッシュ)の管理こそが重要なのです。会計上の損益は、会計基準や在庫の存在などにより企業の経営実態を完全に表しているとは限らないのです。
私はコンサルタントとしては、資金繰り実績表だけでなく、変化を先取りして策定した事業計画を基に、資金繰り予定表も作成できるよう、中小企業を支援していければと考えています。現在から将来へ向けて資金繰りの見える化を図ることで、変化に強い財務基盤をつくることができるからです。それは金融機関との関係性を強化するためにも有効であり、外部環境(リスクと機会)の変化に即応できる柔軟な経営が可能となります。
- コウモリの目(逆さまの視点)とイノベーションの推進・知的資産経営
以上の3つの目に加えて、VUCAの時代の今、重要になりつつあるのが、コウモリの目です。逆さまの視点で物事を見ることを指します。足元では、コストプッシュ型倒産だけでなく、人手不足倒産、最低賃金倒産など新型の倒産も目立ち始めました。そして、かつてない勢いで、中小企業の倒産件数が増えているようです。もはや、これまでの延長線上では事業が成り立たないリスクに常にさらされていることを認識すべきでしょう。だからこそ、コウモリのように視点を変え、これまでの業界の常識にとらわれない柔軟な発想で、イノベーションを創出していくことが求められています。そうすることで、きっと新たなブルーオーシャンを見出せるはずです。
私は「コウモリの目」で社長に傾聴しながら、良き相談相手となって、多くの気づきを与えながら伴奏支援していけるコンサルタントになりたいと考えています。
以上の「3つの目プラス1」の視点は相互に補完的なものです。バランスよく活用することで、経営の見える化が飛躍的に進み、より的確な経営診断が可能となるものと考えています。
ここまで長文で大変失礼いたしました。以上は現時点での個人的な考察にすぎません。私はこれからも皆様とより一層学び合い、中小企業のお役にたてるプロコンになっていくことを決意します。
>コウモリの目の観点は今まで思いつきませんでした。... への返信
ありがとうございます。早くプロコンになれるようがんばります。
>さかさまに考える、コウモリの目というのが興味を引かれました。相手の視点に立つなど... への返信
ありがとうございます。中小企業の社長のお役にたてるようがんばります。
>ここまで言語化されていてすごいです。勉強になります。... への返信
ありがとうございます。はやくプロコンになれるよう、がんばります。
>想いのこもった文章ですね。4つの目を持つコンサルタントになりたい、という熱量が伝... への返信
ありがとうございます。なるほどですね。コウモリは傾聴力ですね。だから暗闇でもぶつからずにとべるのですね。
>「3つの目プラス1」、非常にわかり易く解説いただき、有難うございます。是非、参考... への返信
ありがとうございます。中小企業のため何ができるか、常に考えていきます。
自分視点ではなく、相手視点で物事を見たり・考えたりすることで、自分にとっての常識を疑い、視点・考え方を柔軟にしていきたいと思います。
コウモリは聴覚が優れていると言われます。暗闇でも、レーダーのように自ら発する超音波の反射を捉えて相手の位置を確認すると。コウモリの目は「傾聴力」にも通じるものがあるかもしれないと思いました。