堀江でございます。
2011年に読んだ中で最も印象に残った、診断士に役立つ本を紹介します。
私は、昨年東大和市にある中小企業大学校に通い養成課程で実技を学び、診断士を取得しました。自宅から往復3時間の遠距離通学、8か月間、電車の中で本を十分に読むことができました。ご紹介するのは、その中でいろいろと考えさせられた1冊(と原書2冊)です。
スティーブン・ロビンス『新版 組織行動のマネジメント』ダイヤモンド社
どういう本?
組織行動学の大変有名な教科書です。読んだ方も多いと思います。組織行動学とは、組織内で人々が示す行動や態度に関する学問であり、心理学、社会学、社会心理学、人類学など幅広い分野が組み合わされています。本書は多くのビジネススクールが採用していて、その事実から本書内容を信頼できると考えます。教科書作成の専門家が書いています。
診断士として興味深い内容
学習、動機づけ、集団意思決定など、診断士に関係がある理論が多数説明されています。さらに、各理論の現在の評価、つまりどれが「有効」でありどれが「空論」か解説されています。
たとえば、動機づけのセクションでは、以下の説明があります。
実効性が疑われる動機づけ理論は
(1)マズローの欲求五段階論(「低位の欲求を満たしてあげれば、労働の欲求を高められる」という証拠はほとんどない)
(2)X理論とY理論(「やりがいのある仕事や良好なグループ関係により労働者の意欲が高められる」ということは確認できない)
(3)ハーズバーグの二要因理論(方法論自体に疑義がある)
このほか、たとえば職務充実についても「コストは削減されるが、生産性が高まるという証拠はない」としています。
実効性が認められた動機づけ理論は
(1)マクレランドの欲求理論(達成欲求と職務の業績の関係を合理的に予測可能)
(2)目標設定理論、目標による管理(MBO)(多くの実証例)
(3)期待理論
などとしています。
500ページ超の本です。動機づけはあくまで内容の一部であり、より幅広い観点をカバーしています。
私はこう感心した
これら理論は、診断士の試験でもよく取り上げられるものです。その多くが実証研究で無効とされているとは!どれが実効性がある理論で、どれがそうでないか、勉強不足でした。ちゃんと理論研修を継続的に受けて、自分をアップデートしていかなくてはいけません。
読み進めた3冊
ただし、アマゾンで多くの人が指摘しているよう、この日本版には大きな欠点があります。翻訳がひどく、読みづらくて退屈なのです。見出しやレイアウトの工夫がありません。以前初版を購入したのですが、その時は途中で挫折しました。
アマゾンのコメントで「原書はもっとエキサイティングでおもしろい」とありましたので、今回は途中から元本"Essentials of Organizational Behavior"を並行して読むことにしました。そうしたら、原書は読みやすいレイアウトで、面白くてびっくり。あまりにも気に入ったので、Essentials(要約)版でない本来のOrganizational Behavior Global版も買いました(下図)。さすがはベストセラー教科書だけあって、よくできてる。エンターテイメントです。もし原書で読むならば、Essentialsなくオリジナルの最新版をお勧めします。
教科書が進歩してる!
感心したこと〔その2〕は、教科書の進歩です。うんと昔読んだ教科書は、原書であってもほとんどが単色、せいぜい2色刷りの単調なものでした。この教科書は写真やケースが豊富で、カラフルで飽きません。見出しやレイアウトが工夫され、精読もつまみ読みもできます。書き込みができる空白がとってあり学びやすい。余分な表紙カバーも帯もなく、紙が軽くうすく、より開きやすく持ち運びやすくなっています。
ビル・ゲイツとグーグルのサポートを受けている「カーン・アカデミー」といい、この「教科書」専門家が作ったわかりやすい教科書といい、いつのまにか学習方法自体が進歩しいる!それに比べ、翻訳版は旧態依然のままです。どうか日本だけ取り残されませんように。そういう意味でも、2011年でもっとも印象に残った本3冊でした。