こんにちは。22期の浅野です。
先日新聞を見ていたらどこかで聞いた名前だなと思いながら写真をよくみてみると、どうもかつてのお客様に似ている。
8月23日の日経新聞で、TSMC熊本工場 運営会社社長 堀田祐一さんのインタビュー記事を発見しました。昔の同僚に確認したところ、ご本人からJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)社長就任の話を伺ったとのこと。最後にお会いしたのは10年以上前のことなので、新聞の写真は同一人物か確証が持てませんでした。当時は私が営業担当していた半導体製品の供給先の部長さんでした。若いながら判断は大局的に行い、交渉では腹を割って話ができる頼りになる方でした。
ちなみに、JASMは台湾TSMCとソニーなどが出資する熊本工場の運営会社とのこと。熊本工場は日本政府が補助金を出すことが話題になっている例の工場です。これまで半導体関連のニュースに注意を払っていましたが、JASMという名前はこの記事で初めて知りました。
ここから、日本に本格的なファウンドリー工場ができることに対する期待などを書きます。
日本の半導体最盛期の工場は純粋な半導体製造専業(ファウンドリー)ではなく電機・コンピュータのメーカーが自社のチップ製造をする工場でした。そのため他のメーカーが製造を委託するには機密情報の漏洩の懸念がありました。それに対してTSMCは当初から自分で製品を持たない半導体製造専業を宣言して、どのメーカーも安心して製造委託できるビジネスモデルを確立しました。JASMは純粋なファウンドリーであり、国内に先端テクノロジーの製造拠点ができるのは画期的だと思います。
新聞によると、熊本工場は先端といっても微細化技術が3nm(ナノメータ)などの最先端ではなく、22〜28nmから12〜14nm程度の先端テクノロジーです。半導体は装置産業なので、装置でどこまで微細化できるかが決まってしまいます。かつて自分が在籍していた会社では銅配線の工程に使う装置への投資が行えず、180nmより先端へは行けませんでした。10nmより先端テクノロジーはEUVという数百億円の露光装置が必要で、もろもろの装置や設備を含めると投資額は数千億となり参入障壁が格段に高くなります。同時に、たくさん製造しないと経験曲線が上がりませんから歩留まりを上げるための生産量の確保が極めて重要で、それも参入障壁になります。
日本で先端テクノロジーの工場を持てなくなったのは、機密情報漏洩の懸念があり受託製造ビジネスがうまく行かず、大量生産するものを確保できなかったからです。昨今はTSMCのビジネスモデルが普及したのと先端の製造工場が限られるという事情があり、自社製品を持っているサムソンでもファウンドリービジネスを獲得できる時代となっています。
九州には半導体製造事業所が多く、その中には本格的なプロセッサ(PCやスマホの頭脳)の量産経験がある工場があります。その他にも製造装置メーカーや材料メーカーが集積しており、技術課題が生じても産業クラスターの知見を活用して早期に解決ができるのではないかと思います。
JASMの社長が堀田さんと知りさらなる関心と期待が湧きました。数年後には日本の半導体サプライチェーンの救世主になってくれることを願っています。