『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』 冲方丁 (ハヤカワ文庫 JA)
なんと、アニメ『蒼穹のファフナー』を原作者(スタッフクレジットでは“文芸統括”)である冲方丁がノベライズした作品。なんで今頃と思ったが、電撃文庫から移籍の再刊。ついでに、Bluerayの販促も兼ねてということらしい。
正直って、アニメを見ずに読むのはお勧めしない。見てから読むのでも、読んでから見るのでも、アニメ必須。とにかく、小説だけでは完結していないどころか、描かれるのは、ほんの発端だけだ。
アニメとは甲洋の性格が違うし、三番機が“8人目の棺桶”になったりと、大幅にストーリーが異なる。しかし、詳細に語られる発端部分はアニメと変わらず、アニメでは良くわからなかった部分が補完されている。
特に、冒頭で死んでしまう雑魚キャラ扱いの蔵前のエピソードが悲しい。そんなことがあったなんて、まったく忘れてたよ。
アニメではよくわからなかった「あなたは―」の意味も、なんとなく把握。いわば、固体意識を持たない集合意識のみの存在の侵略であり、集合意識と離れた意識を敵と見做して同化する。それがフェスティムというわけだ。
そんなこんなで、読めば読むほどアニメを見直したくなる。さらに、小説としても、彼らの戦いを最後まで見届けたい。アニメのノベライズといえば、ただの焼き直しか、まったくの別物になってしまうことが多いのだけれど、これは小説とアニメが補完し合い、さらに昇華していく稀有な作品だと思う。
こういう小説が書けたのは、冲方丁がアニメ製作においても大きな権限を持っていたからなのではないかと思うのだけれど、どうだろう。
とりあえず、映画版『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』も見なきゃなぁ。