NOVAシリーズの9巻目。2012年の日本SF大会@夕張で宣言された通り、10巻で終了が正式に決定されたようだ。
責任編集者の大森さんが言うように、労力の割に利益が少ないということもあるのだろう。また、SFが冬の時代を終え、NOVAの使命が終了したということもあるのだろう。まぁ、確かに日本SF作家クラブ50周年のアンソロジー出版が決まり、これを追いかけるだけでも、今年は十分濃い一年になりそうだ。
ところで、今回のNOVAは「ノヴァきゅう」と読むそうだ。実際に、奥付の振り仮名にもそう書いてあるし、『NOVA1』を見直しても、ちゃんと「ノヴァいち」と書いてあった。ずーっと、「ノヴァ・ワン」だと思っていたので、これにはびっくりだ。実はこれが今回一番の《センス・オブ・ワンダー》だったかもしれない(笑)
◎「ぺけ投げ」 眉村卓
お久しぶりの眉村卓。星新一よりも知名度は低いのかもしれないが、『妻に捧げた1778話』が映画化されたように、短編の書き手としては今でも衰えていない。ペケを投げること自体は道徳的に正しいことなのだが、それが返って騒ぎを巻き起こしてしまう。これは社会が根本的に持つ矛盾をあぶりだしているようで、無性に居心地が悪くなるのであった。
○「晩夏」 浅暮三文
電車の中で爆笑してやばかった。○のかわりに□ぐらいまではまだしも、特保マークとは意表を突かれた。ぬぷぬぷのくだりも吹き出してやばすぎ。しかし、このタイトルは、なぜ「ぱんか」じゃないのだ?
○「禅ヒッキー」 斎藤直子
まるで落語のようなオチ。
○「本能寺の大変」 田中啓文
シンチョーか。ちょっと苦しいか。
◎「ラムネ氏のこと」 森深紅
ラムネを発明したラムネー氏の話かと思いきや、“燃焼”の原理を争うラボアジェとプリーストリーの対決という歴史仮想物語へと発展していく。同じ現象を説明する二つの理論のぶつかり合い。これが科学だとでもいうべき、嘘とわかっていても興味深い逸話だった。
○「サロゲート・マザー」 小林泰三
代理出産の話かと思ったら、さすが。いやまぁ、良く訓練された小林泰三読者なので、途中でそういうことかとわかり、オチまで予想できましたけどね。
○「検索ワード:異次元/深夜会議」 片瀬二郎
オカルトホラー系。短編映画化したらよさそうな感じ。
○「スペース蜃気楼」 宮内悠介
紙幣を発行することを説明する教科書。インフレターゲットとかも解説よろしく。
◎「メロンを掘る熊は宇宙で生きろ」 木本雅彦
メロン熊SFの最高峰(他にあるのか知りませんが)。なんだか無理やりな設定だなと思いつつも、本当にメロン熊にSF的考察をかけるとこうなるのか。ステージ上がる階段でこけるとか、SF大会を思い出してほっこりした。
○「ダマスカス第三工区」 谷甲州
土木SFシリーズだが、なんだか怪しげな展開。お役所的時間稼ぎのために複数の人格コピーを使うあたりは面白かった。
○「アトラクタの奏でる音楽」 扇智史
百合を狙い過ぎてると思うんだが。しかし、このネタに非常に近いことを仕事で考えてたことがあるんだけど……。
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