仕事でAR(拡張現実)系の話が出るたびに、ニール・スティーブンスンやらその手のSFのことを思い出し、そういえばこんな話が合ってね……なんてことを口走ったりするのだけれど、これもそのひとつになりそう。
拡張現実(作中では強化現実)で視界のいろいろな場所、いろいろなレイヤーにタグを張り付けられるようになった近未来。いわば、2chの世界が現実化したような騒がしい世界。
そして、そこで繰り広げられる外国勢力 vs ネトウヨ・嫌韓・嫌中な人たちのバーチャルな攻防。それはついに現実世界で爆発する。その中で、現実ではニートで引きこもりなネットの国防大臣や、小学生や大学生や校長先生の行動が“愛国心”とは何かという問いを読者に投げかける。
本当の現実で発生している反日デモや嫌韓嫌中デモを題材に、現実を嗤い、そんなデモに踊らされる人々を諭し、正しく国を愛することをテーマに描いた小説。とはいえ、説教くさいわけではなく、主人公の考え方にみんなが共感してくれればいいと思えるくらいのもの。
大切な人を守ることがまず第一。そして、その人の周りを守ること、その人々の周りを守ること。そうやって、守る対象が、家族へ、地域社会へ、地方自治体へ、国家へとつながっていく。ひとを愛することの延長戦上に愛国心があり、国のために人がいるわけではない。この考え方に基づけば、人種や国籍を越えて、ひとの繋がりによる愛国心というものが、自然と見えてくる。
唐突だけれど、実はJリーグのサポーターはこの考え方が非常にしっくりくるんじゃないかと思う。Jリーグの、おらが街のチームがあって、日本代表がある。決して、日本代表のためにチームがるのではない。この考え方って、どちらかというと少数派かもしれないんだけれどね。
著者の芝村裕吏はガンパレード・マーチの、あの人。
相変わらずシバムラをやっているのか、尊大不遜な奴で、その態度はあとがきでも見られる。そして、SFマガジンのインタービューの方がさらに顕著。こうすれば売れるんでしょ、こうすれば面白いと思うんでしょ、という態度を微塵も隠そうとしないところがすごい。普通はそういうものは見えないよう隠しておくものだろうに。ちょっと醜悪だよ。
そうは言いつつも、最終的には、最後の演説に涙せずにはいられないあたりが、わかっていながら落とし穴にはまるみたいでくやしい…!でも…感じちゃう!
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