『ガブリエルの猟犬 クラッシャージョウ・シリーズ13』 高千穂遥 (ハヤカワ文庫 JA)
日本で初めてスペース・オペラを書いたのも、ヒロイック・ファンタジーを書いたのも、高千穂遥だと言われている。《クラッシャー・ジョウ》シリーズはその最初期に書かれた古典とも言える作品だ。それが今でも書き継がれているという奇跡。
さらに、今さら4KリマスターでBlu-ray Box発売とか、何事かと思ったよ。
しかし……。
甘い! 甘すぎる!
前巻の『美神の狂宴』でも思ったのだけれど、クラッシャー&鈴々蘭々が強すぎて、ぜんぜん窮地にならない。
今回は1年におよぶ新兵器開発と訓練の実地試験になるわけだが、それにしても相手の“猟犬”が気の毒だ。もっと非情な殺戮マシーンと化した人工知能かと思いきや、限られた経験に基づく不完全な攻撃力しか持っていない玩具にすぎなかった。それなのにこんな化け物の抗争に巻き込まれて、とっても可哀想。
本来の敵であるルーシファの部隊にいたっては、その“猟犬”に全滅させられるという情けなさ。これでは盛り上がるものも盛り上がらない。
鈴々蘭々の敵となる亀獣も情けない。これでは典型的なやられ役ではないか。そもそも、亀獣はなんと読めばいいのか。カメジュウじゃ間抜けだし、キジュウじゃなんだかわからない。アーケロンならまだわかるが、亀獣のルビとしては出てこなかった気がする。
こちとら、30年以上も前の感性豊かな幼少時期に『人面魔獣の挑戦』を読まされてトラウマになりかかったのだから、こんなもので満足できるはずもない。いったいどうしてくれるのだ。
今回だって、ポッド降下時に攻撃を受けてリッキーだけはぐれて孤軍奮闘するとか、最後にアルフィンがヘルメットを射抜かれて生死不明になる(でも新装備だから大丈夫!)とか、いくらでも盛り上げようがあったろうに、なんでこうも順調に事件が解決してしまうのか。
なんだか今後の展開に期待を持たせる結末ではあるが、前回もそんな感じだったし、期待していいものやらどうやら。
せっかく(その経緯は不幸な話ではあるが)ジュニア文庫のソノラマ文庫からハヤカワ文庫に移籍したのだから、もっと大人向けにエログロ路線になってみるというのはどうか。そもそも版形をトールサイズではなく、《グイン・サーガ》同様に通常文庫サイズにしているのも、若い読者よりも昔からの読者をターゲットとしているってことなんでしょ。
あの竜の一族も登場しているのであるから、《ドラゴンカンフー》的なエロに走るのも悪くないと思うんだけど。ほら、そろそろジョウもアルフィンも成人すんだろうし(笑)
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